A-Forum e-mail magazine no.107 (03-17-2023)

塑性ヒンジは点ではない

和田 章

コンピュータ利用は1940年頃、戦前の米軍が弾道計算のために開発したことで始まり、インターネットも同じ米軍から始まっています。人類は戦うとなると研究開発に力が入るのだと思います。このようにして開発された技術は諸刃の剣と言われ、軍事だけでなく平和にも大きな力を発揮します。

地震国に高層建築を設計できるようになったのは、コンピュータとソフトウエアで骨組解析、応答解析ができるようになったからといえます。弊害はあるとしてもコロナ感染症の広がりの中で多用されるようになったWEB会議もこれからの社会を変えると思いますし、元に戻ることはできないと思います。一貫構造計算プログラムも同様に大きな弊害はありますが、元の手計算には戻れません。

コンピュータには高速計算と大容量メモリーの特徴があり、人間と異なり単調な計算を嫌がらずに黙々と行う強さもあります。小生は学部の3年生の冬にこの魅力に取りつかれ、たくさんの構造解析プログラムを作りました。この頃に作った鋼構造平面骨組の弾塑性解析ソフトは今でも動きます。

建築分野だけでなく土木・機械の研究者・技術者が勉強した洋書に、英国の地盤工学の教授O. C. ZIENKIEWICZのTHE FINITE ELEMENT METHODの教科書があります。序文に、「科学の進め方の定石として、対象物を細かく分け、個々の性質を把握してから、再度理論的に組み立てれば、対象物の挙動を把握することができる」と書かれていました。
現在の科学の進め方は、これほど簡単ではないと思いますが、1960年代後半の一人のエンジニアにとって、飛びつきなるほど明快な考え方でした。

その頃の建築構造の教科書は、静定トラスの解き方、不静定トラスの解き方、静定・不静定ラーメンの解き方など、対象とする構造物に応じて解き方が別々だったのですから、上記の喜びは、今の人にはわからないと思います。今になってこれを振り返ると、解きたい対象によって、モデル化と解き方が異なる方が、人間的で頭をしっかり使うので優れているのではないかと感じることがあります。鶴亀算を、「鶴と亀のいる池のほとりを思い浮かべて、全部鶴だとしたら課題の足が余る、その分亀がいるはずだ」と考える方が、鶴をX、亀をYとして連立方程式を無味乾燥に解くより、はるかに知性的なことと同じです。

今の設計者はもっと良くない病気にかかっていると思います。先日(3/15)、ASDO・JSCA 東京共催 技術研修会で、50年前のプログラムをご参加の皆さんと一緒に使ってみることができました。軸力の作用している柱にヒンジができる時、塑性化は危険断面だけに生じるのでなく軸方向に分布し、点ではないことなどよくわかり、もちろん弾塑性座屈の計算もできます。興味のある方はダウンロードして試してみてください。

ファイルの中身
①50年前のプログラム(NONPLANE.EXE)
②NONPLANEのデータ記入法(NONPLANE_DATA_METHOD.PDF)
③データ記入例 2種(EXAMPLE1.TXT、EXAMPLE2.TXT)
ここからダウンロード


Archi-Neering Design AWARD 2022 (第3回AND賞)

選考委員
福島加津也(委員長)(東京都市大学教授/建築家)、陶器浩一(滋賀県立大学教授/構造家)、磯 達雄(建築ジャーナリスト)、堀越英嗣(芝浦工業大学名誉教授/建築家)
選考評を公開しました
選考評(総評) 選考評(個別) 冊子PDF


第47回AFフォーラム「新型コロナ禍が変えた私達の生活 ―コロナ後を考える」

コーディネーター:金田勝徳
パネリスト:篠崎洋三(大成建設)、中村幸悦(織本構造設計)、宮里直也(日本大学理工学部建築学科)
日時:2023年05月19日(金)18:00~
お申込み→https://ws.formzu.net/dist/S72982294/
Youtube(お申し込みは不要です):https://youtu.be/VJB1APnJnU8

新型コロナウィルスは、人の移動を束縛し、人々が集うことを阻み、容赦なく人間関係を分断してきました。人間は、社会を脅かす災害に直面した時、それが地震などの自然災害ならば、災害を契機として絆を深め、寄り添いながら立ち向かうこともできます。ところが新型コロナ禍では、医療や社会的なインフラなどに関わる人々の献身的な行為に感謝をしながらも、自らはなすすべもなくひたすら感染拡大を恐れ、断絶を強いられるばかりでした。

一方、それまで政府によって唱えられていた「働き方改革」推進のための「働き方改革関連法」が、新型コロナウィルス感染の報に初めて接した2019年12月と同じ年の4月から、順次施行されました。厚労省は、この法制定の目的を「労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会の実現」としています*)。これらの法施行後間もなく、新型コロナウィルスのパンデミックが、在宅勤務、リモートワーク、テレワークなどの働き方を生み出しました。はからずも「働き方改革」が推進されたように見えます。

その新型コロナも、今年(2023年)5月の連休明けには感染の危険度が、5類に引き下げられるとのことです。大丈夫か?と疑いながらも、コロナ禍がやっと沈静化に向かうことが期待されます。これまで3年余りの間、私たちは感染者数の増減が繰り返される度にピークが高くなるグラフに驚き、医療機関や保健所機能崩壊の警鐘に脅え、馴染みのお店のシャッターに貼られた「閉店のお知らせ」に胸を痛めてきました。こうして何度もパニックの瀬戸際に追い込まれながら、社会情勢や生活環境も多くの変化を遂げてきました。

コロナ禍の中から生み出された多様な生活様式の中で何が残り、何が消えていくのだろうか。歴史家が指摘する通り、かつてないほど多くの難題を抱え、的外れの情報に溢れる今を正確に見通し、未来を予測することはほとんど不可能なのかもしれません。とはいえ、次世代を担う若者たちの思考の変化や、仕事環境の変化を読み取り、それらがどのような意味を持つのかを理解することが、今後を見通す上で大切な課題であることに変わりはないはずです。

今回のフォーラムではこうした課題に焦点を当てて、コロナ後に何を期待し、どのように備えるべきかを皆様と共に考えたいと思います。多くの皆様のご参加を心よりお待ちしています。

*:厚生労働省HP 「働き方改革」の実現に向けて


KD研 Part2 第11回「サラブレッドからハイブリッドへ―BSSの誕生物語」

トーク:斎藤公男(A-Forum代表/日本大学名誉教授)
日時:2023年03月18日(土)14:00~
お申込み→https://ws.formzu.net/dist/S895819741/
Youtube(お申し込みは不要です): https://youtu.be/1scwra-Hihk

第29回AB研究会 これからを担う若手建築家の活動と実践⑤ 「株式会社 COA 一級建築士事務所/ Chosokabe Okano Architecture」


日時:2023年4月1日(土) 14:00-17:00
会場:オンライン(Zoom)
参加申し込み:https://ws.formzu.net/dist/S49503985/
Youtube(お申し込みは不要です):https://youtu.be/bg5wYYmMzk4

コーディネーター:布野修司+安藤正雄+斉藤公男 プレゼンテーション:岡野道子+長曽我部亮「近作について」
コメンテーター:赤松佳珠子(CAT)
司会:香月真大(SIA一級建築士事務所)

第29回AB研ではNSDプロジェクト「若槻養護学校施設整備基本計画」プロポーザルにて最適候補者に選定されたCOA 一級建築士事務所の岡野道子氏と長曽我部亮氏をパネリストに、コメンテーターとしてNSDプロジェクトの検討を行った「県立学校学習空間デザイン検討委員会」委員長赤松 佳珠子氏(法政大学デザイン工学部教授 (株)シーラカンスアンドアソシエイツ代表)をお招きする。
詳細はこちら


日本学術会議公開シンポジウム/第 15 回防災学術連携シンポジウム

気候変動がもたらす災害対策・防災研究の新展開

日時:令和5年4月 11 日(火) 13 時~17 時
場所:Zoom ウェビナーによるオンライン開催
主催:日本学術会議 防災減災学術連携委員会、一般社団法人 防災学術連携体
参加申込:https://ws.formzu.net/fgen/S78857005/

シンポジウムでは、防災に関わる学協会の専門家が集い、気候変動がもたらす災害リスク、避難・救命救助・復旧活動などの防災対応、国土利用・まちづくりなど災害対策についての最新の研究・取組を共有し、今後の災害対策・防災研究のあり方を議論・展望する有意義な機会としたい。

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神田 順 まちの中の建築スケッチ 「中野サンプラザ—集いの空間」/住まいマガジンびお

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