第54回AFフォーラム「免震・制振の良さは分かってきた!それでもまだ靱性設計?」

日時:2024年11月27日(水)18:00~
コーディネータ:和田 章
パネリスト:神田順(東京大学名誉教授)、竹内徹(東京科学大教授・建築学会長)、城戸隆宏(日本郵政建築株式会社)
お申込み(リンク先にて会場参加orZoom参加を選択してください。):https://ws.formzu.net/fgen/S72982294/

Youtube:https://youtu.be/DIz1JaIknEo

地震が起こると基礎固定の骨組は弾性的な揺れから塑性変形をともなう揺れを受けます。関東大震災のあとに起きた柔剛論争は有名ですが、京都大学教授の棚橋諒先生は「建築物は強度があっても脆ければダメ、柔な骨組みを作って柳のように変形させれば良い訳でもない、適度な剛性とある程度の強度と靱性が必要である」とエネルギー吸収の重要性を訴えました。昭和の一桁ですが、現在の耐震設計法のルーツです。
このような進んだ研究があったにもかかわらず、日本の耐震設計法は「静的地震力と許容応力度計算」によっていました。ただし、武藤清先生は塑性変形能力を無視していたわけではなく、戦後に、C0=0.2以上の震度で、鋼材や鉄筋の降伏応力度を短期許容応力度に決めた時、鋼材には十分な塑性変形能力があるので、もっと大きな地震が来ても、骨組は塑性変形を起こすがすぐには壊れないはずだと書かれています。
1981年に使われ始めた新耐震設計法はこの考えの延長線上にありますが、二次設計のC0=1.0に乗じるDsを小さく設計することが、合法的に構造物を弱く安価に作れるので、発注者にとって経済性が高いと思われています。43年が過ぎていますから、これらの建築も大地震を受けています。Dsが0.25、0.3のように保有水平耐力の小さな靱性構造の建築は最悪です。ひび割れや塑性変形を起こし、取り壊されることも起きています。初期の工事費は節約できたかもしれませんが、存在していた建物は無くなり、解体には公費が使われています。これでは「耐震設計しました」とは言えません。
21世紀は1/4まで来ました。骨組の靱性に頼った設計はそろそろやめて、設計の初めの段階から、免震構造または制振構造に取り組んでいただきたいと思います。免震構造は、二次設計レベルの地震動を受けたとき、上部構造の最下層に生じる層剪断力係数は0.15以下であり、基礎固定の建物の一次設計のC0=0.2以上より小さくなります。簡単に想像できますが、大地震時の上部構造に弾性設計が使えるので明快です。制振構造には色々な種類がありますが、骨組にオイルダンパーや座屈拘束筋違を組み込み、地震時のエネルギ吸収をこれらに任せ、柱や梁に大きな塑性変形を与えないことができます。
ここでは、免震構造・制振構造の良さが分かっているのに、いまだに大半の建築が骨組の靱性に期待した設計で進められていることについて、どこに問題があるのか、真剣に議論します。