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日本の人口減少による労働力不足はあらゆる産業分野で大きな問題になっています。こうした中で労働環境の見直しが迫られ、2016年に当時の安倍内閣は「未来への責任を果たす」ことを大義とした「働き方改革」の推進を重要政策としました。そして2024年4月より、「改革」が遅れているとみられる建設業界を対象とした、時間外労働時間の罰則付き上限規制が適用されています。
その背景には建設業が人口減だけでなく、他産業より労働時間が長く賃金も安いことなどから、より一層就業者の確保が困難になっていることにあります。厚労省の統計によると、建設業の年間出勤日は、「働き方改革」が政府の重要政策となった2016年以降、減少傾向にありながらも2023年時点でもまだ全産業と比べて11日多く、年間総実働時間も62時間長い状況にあります*1)。また国交省の調査では、技術者の週休2日制の達成率が、全産業の42.2%に対して、建設業は9.5~25.3%と極端に低くなっています*2)。さらに建設労働者の賃金は、全産業平均に比べて15.6%低く、これらを要因として、建設業就業者数が1997年の685万人から2022年では479万人に減少しています*3)。
こうした調査結果が、建築設計を業務とする技術者の状況をどの程度反映しているかは明確ではありません。しかし設計者の「働き方改革」は工事現場より一層難しいと状況と考えられます。本来どの様な職種でも、生産性の向上や経済成長だけを優先すると、その副作用として仕事の質に影響することが懸念されます。言うまでもなく建築設計も例外ではありません。厳しく制限された時間内で設計を終わらせようとすれば、その内容が希薄になるばかりか、ミスをきたす恐れもあります。ならば設計期間を十分とれば問題ないではないかと考えられます。
しかし、社会構造の多様化、複雑化とともに、設計に着手する以前に解決すべき近隣地域や関連法規との調整、設計対象としている建築物の在り方を決定づける基本構想の作成に多くの時間を要する傾向にあります。さらに「働き方改革」に伴う工事工期の延長、高騰する工事費の調整などが絡み、その結果、全体スケジュールの中で設計に残された時間がより一層少なくなります。そして、なかなか努力に報われることが難しく、提出期限に待ったなしのプロポーザルへの応募が、「働き方改革」を推進するうえで無視できない足かせとなっています。
今回のフォーラムでは、こうした日本の建築設計業界が抱える問題にどのように対処すべきかを、業態の異なる職場の第一線で活躍中の3人のパネリストをお招きして、皆様と一緒に議論したいと思います。
*1)厚労省「毎月労働統計調査」より国交省作成(2023年)
*2)国交省「適正な工期設定による働き方改革の推進に関する調査」(2023年5月31日)
*3)厚労省「賃金構造基本統計調査」(2022年)