A-Forum

アーキテクト/ビルダー(「建築の設計と生産」)研究会

コーディネーター:布野修司+安藤正雄+斉藤公男  コンペ・プロポ関連資料

第13回 研究会業務と職能はいかに変わりつつあるか-英米の動きに着目して-

2018年12月8日 プレゼンテーション:
1.米国(AIA)について(仮):小笠原正豊(東京電機大学)
2. 英国(RIBA)について(仮):小見山陽介(京都大学)
コメンテーター:平野吉信(広島大学名誉教授)

新国立競技場の設計・発注問題から出発して以来、A/B研究会は発注者・設計者・施工者を含む広い社会的基盤の中で、揺らぎつつある設計と設計者の位置づけを考えてきた。プロジェクトを巡る情勢がリスク・オンに傾斜する中、一方的に思考と判断を停止する発注者、増大するリスクに及び腰の受注者、自己実現の機会と食い扶持の減少におののく設計者という構図が、端的に言って、現在の状況である。これに対して、A/B研究会は、発注者支援の必要性を唱え、公共コンペを巡る諸問題等を考える場を提供してきた。
しかし、このような問題を抱えているのは一人日本だけではない。複雑化するプロジェクト環境とイニシアティブ、建築設計の領域を超えて高度化する技術、設計の根幹に位置付けられる情報の生成と伝達にかかわるICT技術の登場と浸透といったインパクトは、グローバルなスケールで建築設計の業務と職能に大きな変貌を迫らざるを得ない。欧米においては、様々なかたちのデザインビルド、基本設計と実施設計の分離、二段階方式による設計者選定、BIMが要請する〈設計チーム〉内部での協調的設計といったことは、設計を含む受発注者、建築生産社会の成員全体に受容されており、むしろ先進的な事例として位置づけられていることも多い。
A/B研究会は、今回、英米の建築業界が進めてきた変革に注目する。発注者サイドに立つもう一人の人格であるCMをいち早く導入し、BIMを実質的に主導してきたアメリカ。国策としての建築生産活動の合理化を主体的に引き取り、様々なプロジェクト調達方式の導入やBIMに対応してPlan of Work 2013等の変革を打ち出してきた英国のRIBA。 これらが受け止めたインパクトと将来展望、具体的な対応の中味をつぶさに知ることを通じて、私たちの考慮すべきこと、立つべき位置を考える参考にしたいと考える。この先分岐してゆくであろう様々な問題を考えるための再出発点として、この研究会を位置づけたい。