A-Forum e-mail magazine no.126 (10-10-2024)

猛暑の夏に想う

金田勝徳

私が小学生の頃、毎年秋口には夏休みの宿題にてこずっていた。休みに入ると直ぐに、山と畑に囲まれた父親の実家と、海に近い母親の実家にそれぞれ1週間程度お世話になり、従兄弟達と東京の我が家での生活とは全く違う生活を楽しんでいた。そうして休みのほぼ半分が過ぎてしまい、宿題は最後の10日間ぐらいで仕上げるのが8月下旬の恒例であった。

その宿題の中で苦手だったのが、絵日記だった。それまで白紙のまま放ってあった日記帳に、記憶をたどりながら間に合わせの絵を描き、その日の出来事を書き留めて体裁を整えていた。しかし、なかなか記憶をたどりきれなかったのが毎日の天気と気温で、それらは古新聞の束を頼りに書き移していた。

思い起こせば当時は真夏でもめったに30℃を超えることはなく、たまに32℃になった日があると、あの時はほんとに暑かったと改めて思い出していた。もちろん部屋にはエアコンはなく、うちわ代わりの小さな扇風機がコロコロと音を立てて回っていた。その頃に比べると近年の気温上昇は明らかで、とりわけ今年は「記録的な暑さ」が日々更新され、しばしば35℃を超える日が続いて40℃近くになることもあった。気象庁によれば、今年の夏の平均気温は昨年より1.7℃以上高かったという。

2021年8月に発表された国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書では、産業革命からの気温上昇を1.5℃に抑えたとしても、10年に一度の豪雨の起こりやすさは1.5倍に、もし2℃上昇するなら1.7倍になると予測している。しかし体感上の気温上昇は、この報告書にある上昇幅をはるかに超えているように感じられる。既に地球上の水分の循環システムが変わってしまったのではないか。

そうした中で今年7月末の新聞紙上に、太い活字で「官僚たちの夏」とあるのが目についた。一瞬、城山三郎の名著「官僚たちの夏」の話かと思ったが、霞が関で働く官僚達から「庁舎内が暑くて仕事にならない、もっと冷房を効かせられないか」との悲鳴があがっているという記事であった。庁舎の室温が、地球温暖化対策で28℃に設定されているものの、今年の猛暑でしばしば30℃を超えているとのことである。

その後の8月中頃に今度は、自治体職員も同様な状況下にあることが報道されていた。自治体庁舎の冷房も室温28℃以下になるよう設定されているが、冷房が止まる残業、休日などの時間外には、サウナ状態の部屋で仕事をせざるを得ないという。一方でこの夏は、政党トップの選挙や県知事の不信任決議案提出などを控えて、諸官庁職員にとってより一層忙しい日々が続いていたことは想像に難くない。


とかく日本社会には、庁舎、警察署、消防署など公務の拠点に清貧を求めて、立派な建物を批判する傾向があると聞く。無駄に「立派」であってはならないことは言うまでもない。しかし、国や地方の行政に深く関与し、国民生活の安全を担う拠点となるべき庁舎が、いざというときに職員が存分に働ける施設でなくてよいはずはない。

阪神・淡路大震災では、多くの公務施設が被災して災害対策拠点の役割を十全に果せなかった。このことを教訓として、官庁建物の設備機器を含めた総合的な耐震性能の向上を目指す「官庁施設の総合耐震計画基準」や「官庁施設の総合耐震診断・改修基準」が発効されたのは、阪神・淡路路大震災翌年の1996年であった。

今年1月1日の地震災害からやっと立ち直ろうとしている矢先の能登半島が、9月21日―22日の凄まじい豪雨によって悲惨な状況に追い込まれている。その時の警戒警報発出時機が適切だったのか、素早い情報収集のための通信機能が万全だったのかなどの議論もある。地球温暖化対策も、災害対策拠点となるべき施設の整備も、夏休みの宿題を後回しにするのと同じようなことがあってはならない。


Archi-Neering Design AWARD 2024(第5回AND賞)募集開始

選考委員

福島加津也(委員長)(東京都市大学教授/建築家)、陶器浩一(滋賀県立大学教授/構造家)、磯 達雄(建築ジャーナリスト)、堀越英嗣(芝浦工業大学名誉教授/建築家)

募集要項PDF
応募作品の対象
2019年1月1日より2024年9月末日までに完成した国内作品、あるいは国内在住の設計者等による海外作品とする。
応募資格
・個人(複数名も可)による応募とし、重賞も可とする。複数名で応募の場合は、それぞれの応募者が応募業績にどう関与したかを応募シートに明記する。
・一次選考を通過した場合、最終選考会(2025年2月8日(土))に参加し、プレゼンテーションを行う。
提出物
①応募シート(A4 1枚) 応募シート
 ※応募作品の完成年月を明記してください。
②プレゼンテーションシート(A3 1枚) ※形式自由
①のエクセルデータおよび②のPDFデータ(20MB以内)を提出先までE-mailにて送付してください。
※②のPDFデータが20MBを超える場合はオンラインストレージサービスで送付してください。
※データ受領後、数日以内に「受領確認メール」を事務局より送付致します。本メールを必ず確認してください。
受領確認メールが届かない場合は事務局までご連絡をお願いします。
提出先: a-forum@a-forum.info  担当:麓 絵理子(AND賞事務局)
応募期間
2024年10月10日(木)~2024年12月10日(火)23:00まで
詳細はこちら
前年度受賞作品選考評(個別)
防災推進国民大会2024セッション/日本学術会議学術シンポジウム/第19回防災学術連携シンポジウム

土地を知り、土砂災害・地盤災害に備える

日時:令和6年 10 月 19 日(土)16:30~18:00
場所:Zoom ウェビナーによるオンライン開催
開催:日本学術会議 防災減災学術連携委員会、一般社団法人 防災学術連携体
参加申し込み:https://form.os7.biz/f/04bc6734/

地球温暖化の進行につれ、気象災害と地震災害が複合的に生じるリスクが高まっています。土砂災害や宅地災害等の地盤災害はこのような複合的要因により発生し、我々の命や生活に大きな影響を及ぼします。この災害を防ぐためには、土地の成り立ちや災害のリスクを人々がよく理解し、適切な対応をとることが重要です。本セッションでは、関連する分野の専門家をパネリストに迎え、一般の方にも分かりやすく防災につながるお話しをいただく予定です。

詳細はこちら
ご案内PDFぼうさいこくたい2024特設ページ

第38回AB研究会 技能労働力窮乏のなかで外国人労働者問題を考える

日時:2024年11月30日(土)14:00〜17:00
お申込み:https://ws.formzu.net/fgen/S42040957/
YouTube:https://youtu.be/Ov5UwQ7XO_0


司会 安藤正雄(千葉大学名誉教授)
「建築産業問題に国籍や国境はない!」 蟹澤 宏剛(芝浦工業大学 教授)
「外国人の技能者確保、育成 」 山本 博之(一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)専務理事)
討論 コメンテーター: 神田順(東京大学名誉教授)

わかっていたはずである、こうなることは。日本の建築はもはや日本の技能者だけで建てることはできない。頼りにされてきたのは外国人労働者、しかし、彼らからみても、日本はすでに魅力的な出稼ぎ先ではない。
このまま何の手も打たなければ、この先、何が起こるかもわかっている。では、技能労働について、特に外国人労働者について、どのような手を打つべきなのか。また、建築の現場、ひいては設計はどう変わるべきなのか。
今回は二人の識者をお招きし、技能労働の現状とそれに至る過程、および予想される未来を確認する。同時に、外国人労働者に対する日本のまなざし、対応をトレースし、問題点を明らかにしていただく。そのうえで、これから日本に求められることは何かについて、お二人の考えをうかがう。
少子高齢化、高学歴社会における建設技能労働の持続可能性は先進国が共通にかかえる問題である。裏返せば、これまで途上国と位置付けられてきた国々が先進国とともに対処してきた問題でもある。お二人のプレゼンテーションと続く討論を通じて、広くグローバルな視界の中に、日本の課題が浮き彫りにされ、共有されることを期待したい。

「私にとっての構造デザイン」-「建築 × 構造のおもしろさを語る会」in沖縄

2024年9月12日(木)に(一社)建築構造技術者協会(JSCA) 沖縄地区会で開催されました。

https://youtu.be/4u2PC4RmN8M

第一部 講演会 「構想から建設へ-空間と構造の交差点」斎藤公男
第二部 座談会 「構造デザインの諸相をめぐって」斎藤公男・多田脩二・与那嶺仁志
会場︓那覇文化芸術劇場「なはーと小劇場」
主催︓(一社)建築構造技術者協会(JSCA) 沖縄地区会
共催︓(株)国建
後援︓(公社)沖縄県建築士会、(公社)日本建築家協会 沖縄支部、( 一社)沖縄県建築士事務所協会
神田順
まちの中の建築スケッチ 「東武浅草駅ー昭和のレトロの貫禄」/住まいマガジンびお
斎藤公男
座談会「「愛される」大空間建築とは」斎藤公男、内藤廣、大西麻貴/建築雑誌2024年10月号
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