第35回AF-Forum

「日本の木造建築と林業」

コーディネーター:金田勝徳
パネリスト:大橋好光、稲山正弘、榎本長治

日時:2021年2月18日(木)18:00
会場:オンライン(Zoom)
参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第35回AFフォーラム参加希望」と明記ください。


日本における近年の木造建築の隆盛ぶりは、まさに爆発的と言えそうです。建築関係の月刊誌には毎号多くの木造建築が掲載され、各種の建築賞受賞作品の中に、必ずと言ってよいほど木造建築が含まれています。しかしその木造建築の歴史は決して平坦な道ではなく、木材供給事情や社会情勢の波に翻弄され、波乱万丈の様相を呈しています。

近現代における木造建築は、先の大戦の戦中・戦後に渡って繰り返された都市部の大火によって甚大な被害を受けました。このことから1950年に衆議院で「都市建築物の不燃化促進に関する決議」がなされ、同じ年に制定された日本初の建築基準法では、高さ13m、軒高9mを超える木造建築が実質的に禁止されました。それに追い打ちをかけるように、1959年の伊勢湾台風による木造建築の甚大な被災体験から、日本建築学会が「建築防災に関する決議」の中で火災、風水害の危険が著しい地域での木造禁止を提起しました。こうしたことを背景にして、日本国内では戸建て住宅以外の中・大規模木造建築が激減した時代が続きました。

一方で、森林資源が第二次大戦中は軍需用に、戦後には復興住宅用に大量消費され、森林の乱伐が繰り返えされて山林の荒廃が日本中に広がりました。そして甚大な水害・土砂災害が各地で頻繁に発生し、木材の不足も顕著となりました。そうした事態を改善すべく、国は様々な名目の補助金を支給し、伐採跡地への大規模な植林政策を推進しました。その結果、1946年当時4万haだった全国の人工造林が、8年後の1954年には43万haと約10倍の広さになりました*1)

ところがその時期に植林された森林資源が、木材として市場に出回り始めた1980年代には、木造建築の激減や、円高による外材と国産材との価格逆転などで国内の林業が衰退し、日本経済の足を引っ張る存在になってしまいました*2)。その対策のため、国は木造建築に関する法整備を進めると共に、2007年から国産材の「木づかい運動」を推進しています。さらに2010年には、「低層の公共建築物は原則全て木造化」を基本方針とした、「公共建築物等における木材促進に関する法律」を制定しました。この法施行を機に、公共に限らず、民間の木造建築が一気に増えることになりました。

しかし日本の林業の衰退に歯止めがかかり、成長産業になるにはまだ数々の問題があるようです。一つには国や自治体による各種の補助金で木材の生産は拡大しているが、その利益が生産コスト分に達せず、国の地方交付税や補助金体質がますます強くなっていると聞きます。また林業技術の水準が国際的に高いとは言えず、外国産木材との競争に勝てないのでは、と危惧されていると聞きます。 この様に、現在の木造建築が爆発的とも言えるブームとなっている反面、それを支える木材資源の供給の問題がしばしば言われています。そこで今回のフォーラムでは、日本の林業の健全な発展と、現在隆盛を極めている木造建築が一時的なブームに終わらせないために、私達建築関係者に何ができるのか、また何をすべきなのかを考えることにします。

皆様のふるってのご参加をお待ちしております。

*1)「木材利用の促進に向けて」 林野庁林政部木材利用課 ㏋

*2)「絶望の林業」 田中淳夫 2019年 新泉社刊

金田勝徳による主題説明
資料
「中大規模木造の推進力」大橋好光(東京都市大学名誉教授、(一社)木を活かす建築推進協議会代表理事)
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「一般流通材による中大規模木造」稲山正弘(東京大学大学院教授、中大規模 木材プレカット技術協会代表理事、ホルツストラ主催)
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「日本の木造建築と林業」榎本長治((一社)日本林業経営者協会顧問、(株)山長商店代表取締役会長)
 資料