第25回
Marcus Vitruvius Pollio (ウィトルウィウス)の建築十書を学ぶ
コーディネーター:和田 章
パネリスト:宇野求(東京理科大学教授)、布野修司(日本大学 特任教授)
日時:2018年10月15日(月)17:30~19:30
場所:A-Forum
参加費:2000円(懇親会、資料代)
12ヶ月の英文名の7月July はジュリアス・シーザー、8月Augustはアウグストゥスを表している。ジュリアス・シーザーの後を継いだアウグストゥスがローマ帝国の初めの皇帝である。
ジュリアス・シーザーのもとで活躍した建築技術者がウィトルウィウスであり、アウグストゥスの時代に建築の基本思想をまとめた建築十書をアウグストゥスに献納している。紀元前の話である。
ここに載せた図の左に座っているのがアウグストゥス皇帝、右に立って建築を説明しているのがウィトルウィウスである。
西洋建築史の講義でウィトルウィウスのことを聞いたと思うが、忘れていた。大学院を卒業したばかりの頃、建築学会主催の何百人も集まる大きな講演会で、坪井義勝先生が基調講演をされた。はじめに「この会場にいる君たち、ビトルビウスの強・用・美を知っているか、知っている人は手をあげなさい」と言われた。嘘はつけないので、恥ずかしながら手を上げずにいたが、それほど多くの人が手をあげたわけではなかった。
その後に調べ、ウィトルウィウスの言葉「強用美」は、建築のことや研究のことで悩んだ時の心の支えになった。色々なプロジェクトで設計や施工の議論をするときに「そんなことはできない」という担当者に「だって、建築の基本は強用美でしょう」といって説得してきた。
英語訳で、十の書物のように翻訳されたので、「建築十書」と言われているが、建築全体について書いた一冊の本であり、1章から10章までで構成されている。
東京理科大の宇野求先生は、建築十書の「強用美」より前の章に、都市や城を作るときは適地を選ぶことから始めねばならないと書いていることを教えてくれた。豊臣秀吉や徳川家康などの将軍も同じことを考えたはずである。
東日本大震災で大津波に流された村や町、最近の豪雨災害で江戸時代には遊水池を兼ねていた農地にまちを作ったところに大きな浸水があったこと、北海道の地震災害で起きた大きな崖崩れの下に家々があったことなどを見て、適地でないところに人々が暮らすようになったことに大きな問題があると思う。
我々、構造設計者は、市民の安全、安心した暮らしを守ることが基本的な仕事である。建主、建築家と仕事を始めるとき、その建築の強用美を求めることは当然として、建設地の適否、地盤の適否を見極めることも重要な仕事であるように思う。
10月15日のフォーラムでは、宇野求先生に建築十書についてお話ししていただき、今の建築、これからの建築について議論したい。(和田章)
当日配布資料は
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宇野求による主題解説
和田章による趣旨説明 布野修司による主題解説 全体討論