第42回AF-フォーラム +
空間  構造  デザイン研究会 Part I第5回 :「空間と構造の交差点」
「軽い木の特徴を活かした“モクビルプロジェクト”」


日時:2022年06月25日(土)14:00~
会場:オンライン(Zoom、Youtubeライブ配信(アーカイブあり)
参加申し込み:https://ws.formzu.net/dist/S895819741/
★Youtubeでのご視聴はお申し込みの必要はありません。

コーディネーター:斎藤公男
パネリスト   :加藤 詞史(加藤建築設計事務所)、中西 力(スターツCAM)、小野塚 真規(オノツカ)
プログラム   :建築家・構造設計者・木架構制作者の3者による講演(各20~30分)の後、討議など。

木質系の建築技術が、大スパンから高層化へ向かう現在、江戸川区に竣工した「モクビル」を題材に「高層木造の現在」を考える機会とします。
2010年に施行された公共建築物等木材利用促進法や温室効果ガス発生抑制などの社会的ニーズにより、木質構造による中高層建築物の規制緩和を背景にした建設会社と設計事務所の「民間企業」による取り組みがその特徴です。
カーボンニュートラル、免震による都市部の質向上(強靭化)などの課題解決と新しい価値の創出をテーマとしています。

題材の南葛西モクビルは、上階4層の木質構造と下階5層の立面混構造建物に免震装置を加えた構成となっており、都市部をフィールドとして建設、不動産を中心に多角的に事業を展開するスターツCAMと木質系技術を背景に活動・設計を行なってきた加藤詞史/加藤建築設計事務所の共同開発プロジェクト(試設計)を背景に生まれた建物です。
南葛西モクビルの原型となった共同開発の想定モデル建物は、地上8~11階建て、述床面積1,000~2,000m2前後の中小規模の建物で、上層4層の木質化と免震を組み合わせたものです。

木質化の取り組み内容は以下となります。

▹上層4層木質化の特徴
・告示仕様の汎用性のある耐火構造。
・120角柱を基本とする一般住宅流通材を使用。
・「構造用合板張耐力壁」の構成。
・耐風圧性能、通気構法などによる持続性に配慮。
・遮音試験による居住環境の性能確保。
▹下層5層RC部の特徴
・上層木質化(木重量はRC重量の1/6)による構造躯体量および杭の軽減を(同じ9階建てRC造比)。
▹免震部の特徴
・混構造に最適化した免震装置の選定。
・斜め柱による容積最大化(免震離隔距離確保)。

このプロジェクトの先進性は、汎用性の高い告示を中心とした仕様と部材構成による高層木造の実現に加え、下部躯体・地盤への負荷軽減を中心にして、構造、施工的なメリットを反映、同規模の全階RC造(耐震)と同程度の建設コストによる免震建物を実現した点です。
「見せる木」とは異なる「軽い木」を活かす、材を性能面から活用する取り組みとなっており、木の材料特性を引き出しています。

施工においては、林産県の加工工場との連携による都市部と地方との人材交流と補完をはかっています。
また、住居空間と親和性が高い木質構造により、より快適な温熱空間を実現。住空間の代名詞ともいえる勾配屋根の採用で、最上階の住まいをより豊かにしています。

将来的な改修や減築、解体負荷の低減など、建設〜解体までを包括するプロジェクトとしても位置づけています。複数棟、量産メリットを視野に入れた取り組みとなっています。