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第42回AB研「新町場考―町場的家づくりの再構築に向けた多主体連携―」

日時:2025年11月08日(土)14:00~
コーディネータ:布野修司+安藤正雄+斎藤公男

(a) 概要説明:長谷部勉 (H.A.S.Market 代表)
(b) 町場を媒介する産業(R+houseネットワーク)について:塩味隆行、高地可奈子(くふう住まいコンサルティング)
(c) 町場的価値の再構築と工務店の役割:岩見基史(岩見建設 代表取締役社長)

お申込み(リンク先にて会場参加orZoom参加を選択してください。):https://ws.formzu.net/dist/S42040957/
YouTube:https://youtu.be/7CuN5Ft_fFI


<主旨>
かつての町場では、地域との密接な関係性と職人の裁量が息づく「顔の見える家づくり」が実践されていた。施主と職人が対話を重ねながら進める工事は、気候風土や敷地特性に応じた柔軟な対応を可能にし、住宅は単なる商品ではなく地域文化の一部として位置づけられていた。また現場は開かれた空間であり、住まい手が家づくりのプロセスに関与することで、住まいに対する深い愛着が育まれていた。
しかし現在では、分業化・効率化・工期短縮の進展によって、住宅の質や地域との接続が見えにくくなっている。こうした状況に対し、建築家がプロセス全体に介入し、設計から現場、住まい手までを一体的に結ぶ媒介者として機能することによって、かつての町場的価値を再構築することができるだろう。とはいえ、この取り組みは個々の建築家の努力だけでは限界がある。
そこで重要となるのが、住宅産業の積極的な関与である。工務店、プレカット業者、建材流通、住宅メーカーなどが、この価値転換の担い手として参画することで、より大きなインパクトと持続的な供給体制を生み出すことができる。たとえば、施工現場での柔軟な対応力を高めるための職人教育の再編、地域密着型の設計施工連携モデルの構築、建材供給の見直しや地域特性に応じたカスタマイズ可能な仕様の開発などが考えられる。
そして何より、こうした実践を各地域の建築家が個別に行うのではなく、全国的に共有・展開する仕組みを構築することが、現代において極めて重要である。建築家が地域に根ざしながらもネットワークとして連携し、知見やノウハウを循環させることで、町場的価値を新しい時代のスケールで再生することが可能になるのである。
これらの取り組みを通じて、住宅産業が持つ資源やノウハウが再編集され、現代的な町場の再興が現実味を帯びる。建築家と住宅産業が協働しながら、地域文化に根ざした家づくりを再び社会の主流へと引き戻すことで、次代の住宅文化を育むための新しい道筋が見えてくるのではないだろうか。
今回の研究会は上述した様な多層的な連携による町場的価値の再興を考えるための議論の起点としたい。