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2022年9月10日
シリーズ企画解説「BIMは部品・建材の流通/設計施工プロセスをどのように変えるか」
安藤正雄
プレゼンテーション:
山崎芳治(野原HD CDO)、後藤庸幸(野原HD、建設DX推進統括部)
コーディネーター:田澤周平(東洋大学)
コメンテーター:濱地和雄(芝浦工業大学)、小笠原正豊(東京電機大学)
プレゼンテーション詳細:
・野原HDにおける建築DX化の見通しと戦略
・BIMObjectとBIMObject Japanの活動
・BuildApp(BIM設計・生産・施工支援プラットフォーム)
・BIMデータを用いた乾式壁工事の精密プレカット施工とその効果
《シリーズ企画にあたって》
BIMは既往の建築生産に大きな変化をもたらす。キーワードはフロントローディングとデザインチームの協働である。これにより、設計の初期段階で、部品・建材の選択、他の部位・部材とのインターフェイスに関わる擦り合わせ、コストの詳細な検討が可能になるばかりではなく、発注者/設計者サイドの参画・インプットが一気に増大する。
「部品」はオープンに存在する専門技術を用いたプレファブ技術とみなすことができる。BIMが促すのは、DfMA(Design for Manufacture and Assembly)であり、部品はさらに複合化・大型化してゆく。一方、「建材」は建築の部位を完成させるための素材であるが、BIMは建材事業を単なる建築資材の販売ではなく、建材の割り付け・加工・下地の詳細設計を含めたメーカー/流通サイドによる総合サービスへと変貌させてゆく可能性がある。
建築のサプライチェインは、端的に言えば、仕様書の構成に反映されているパッケージ(=工種=trades)にあらわされている。BIMが促す部品化とは「工種」、「パッケージ」のプロダクト化である。ゆえに、部品には大型化、複合化が求められ、BIMはそれを可能にする。一方、建材はそれ自体で建築の機能的部分(部位)を構成するとは言えないが、設計・施工行為を伴って実体のある「工種」となり、部位となる。すなわち、建材を情報モデル(BIM)としての建築とそのサプライチェインに位置付けるには、建材(product、parts)供給のサービス化が必須である。
その結果、概略設計、基本設計、実施設計という従来のフェイズの理解は変わってゆく。設計者とメーカー/商社はダイレクトに結びついてゆく。この動きは、発注者、設計者、施工者、メーカー/サプライヤーの関係の再編を促すばかりではなく、ICTによる革新をもたらすソフトウェア・ベンダーという新しいプレイヤーの参入を促している。
もちろん、課題はある。発注者要求、設計者の意図、要求性能はどのように担保されるのか。また、発注者、設計者、メーカー/商社、施工者間の意思疎通を実現する共通言語とは何か。完成建物の品質に関わる瑕疵はどのように対処されるのか(設計責任、請負責任)。価格はどのように開示・決定されるのか等。
BIMは部品・建材の流通(調達・供給)にかかわる従来の慣行を一変させるばかりではなく、部品・建材の姿や部品・建材産業の姿を大きく変えつつある。世界を見渡すと多くの興味深い開発が続々と現れている。本シリーズは、その初弾として下記1~3を紹介することを企画した。第27回AB研究会においては、他に先行して2に焦点を当てる。
シリーズ予定
1. 建築情報モデル(BIM)における部品、建材の位置づけ
コーディネーター:志手一哉(芝浦工業大学)、開催日未定
2. 建材供給BIM化の最先端
コーディネーター:田澤周平(東洋大学)、2022年9月10日
3. BIMと部品化・ユニット化(DfMA・PPVC等)
コーディネーター:小笠原正豊(東京電機大学)、開催日未定