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AB研究会では建築は施主と設計と元請け企業そして直接工事を担当する下請け専門職の関係性に焦点をあてた議論がなされている。現在の建築生産は部品化、工業化の進展により、工事職種の統合化や多能工化などの変革がおきていると共に、現場専門職工事を支える部品メーカーや流通などの様々なバリューチェーンも含めた専門職(サブコントラクター)の重要性が非常に高くなってきている。建築生産の諸課題は元請けや現場で直接工事を担当している下請専門職だけでなく、それを支えている多様な支援職能も含めた問題として捉えることが必要だと考える。
前回(第19回AB研究会)は、瓦工事((株)坪井利三郎商店)そして鉄加工メーカー(カツデンアーキテック(株))に焦点を当てた。職能も業態も全く異なるが、独自の専門職技術を極めることでその事業領域を広げており、単なる下請けの立場を超えて設計や流通、元請も含めた事業展開をしており、また、両社ともに「技術のコアは人材と専門職業務の継続」にあるということで、職能マイスター制度や工場品質展開など様々な取組みを展開している。生産現場の担い手不足は建築現場だけで無く製造業全体の問題であり、日本のものづくり文化のステータスアップの必要性が再確認される。
今回は、建築工事の始まりと終わりということで、基礎工事と解体工事を取り上げる。現状と課題を共有しつつ、さらなる交流や協業の可能性を探る議論をしたい。現在の建築現場を支える専門職(サブコントラクター)の役割、職能、業態は想像以上に広がりと深化をしている。元請け企業はもちろん施主や設計もこれまで以上に直接、専門職(サブコントラクラー)と交流、協業をする回路を作ることがより自由度の高い建築供給体制に繋がる予感がある。