A-Forum

アーキテクト/ビルダー(「建築の設計と生産」)研究会

コーディネーター:布野修司+安藤正雄+斉藤公男  コンペ・プロポ関連資料

第14回 建築家の選任と発注者の責任(1)
-フランスの公共コンペから-

2019年2月14日
プレゼンテーション:成瀬弘 (Team Zoo Atelier Kaba)
コメンテーター:小野田泰明(東北大学)、大野秀敏(東京大学名誉教授)、相坂研介(相坂研介設計アトリエ)

A-Forum A/B研究会は、発注者・設計者・施工者を含む広い社会的基盤の中で建築ものづくりの諸問題を考える場を提供してきた。とりわけ大きな関心を払ってきたのは、及び腰の(公共)発注者と好むと好まざるとにかかわらず「業者化」しつつある建築家(設計者)の間に宙吊りにされた「よい建築」、「望ましい建築」をいかにして取り戻すことができるかという問題である。これに対して、A/B研究会は、新国立競技場建設にともなって前景化した問題を検討することから出発し、公共コンペを巡る諸問題とこれらに対する挑戦を取り上げ、さらには発注者支援の必要性を唱えて議論を重ねてきた。前回第13回においては、視野をいったん広げ、受発注者間あるいはデザイン・チーム内のリスク分担のあり方やBIMなどの影響を受けてグローバルに変貌しつつある建築設計の業務と職能を概観する目的で、英米における今日の設計業務の位置づけを検討した。今後2回の研究会では、公共コンペに再び焦点を当て、仏英の建築家(設計者)選定・委任プロセスを題材に討論を進める。建築家選定における発注者の役割と責任の確認がキーポイントの一つである。
第14回のプレゼンターにお迎えするのは、長らくフランスで活躍し、数多くのコンペにも参加してきた建築家、成瀬弘氏である。フランスにおいては、公共コンペに際して若手建築家に門戸を開くことが義務付けられているという。また、フランスの建築生産システムには建築家の伝統的職能と重なる独特の業務遂行主体〈maître d’oeuvre〉の定義がある。公共コンペのあり方に関する社会的合意の形成に、こうした社会システムの成立がどのように関与しているのか。この問題に深い関心を抱く3人のコメンテーターをまじえ、議論が深化することを期待したい。