A-Forum e-mail magazine no.96 (12-04-2022)

ウクライナの戦争について思うこと

神田順

ロシアがウクライナ国境付近に軍を展開しているというニュースがしばらくあって、まさかと思っていたところに、現実に侵略戦争が勃発した。そしてすでに40日を超える戦闘が繰り広げられている。毎日、火器・銃器・砲弾に蹂躙された都市の惨状が新聞の第1面に、ラジオ・テレビに登場し、悲しい現実をどのように受け止めればよいものかと思うばかりだ。

戦争は国が不安定なときに必ず起きる。日本歴史の中では鎌倉時代の歴史から、承久の乱(1221年)がどのようにして起きたかと、思いを巡らせた。鎌倉3代将軍実朝が甥の公暁に暗殺された(1219年)のがきっかけである。かねてより武家政治を快く思わなかった後鳥羽上皇が北條義時の鎌倉方を攻め滅ぼそうと兵を挙げたが、逆に関東勢幕府軍の力の前にあえなく総崩れとなった。結果として、鎌倉殿の専制体制から合議制の北條執権政治が確立したと言われる。

実朝は、京文化を好み和歌や蹴鞠や宴会を頻繁に催していたということは、後鳥羽上皇には好感を持たれていたのかも知れない。しかし、今までの国司・荘園領主が無力化し、地頭が実質経済を握るようになってくると、後鳥羽上皇としては、危機感を覚えたのであろう。表向きは文化の違いを唱えても、実質は年貢取り立ての経済問題ということのようだ。

プーチン大統領がウクライナをロシアと同じ文化の同胞と思いたいのに、経済圏としても離反していく状況を許せなかったことが構図として重なって見える。情報統制により、国内的に侵攻を是とする状況を作って、戦争が始まっても、戦いの現場では、士気が上がらないということや、中枢でどれだけの情報が把握できているのかなど、時代、規模や装備は違っても、あらゆる戦争に同じような状況がある。

わが国も、鎌倉時代から徳川幕府成立までは、ほとんどの時期に戦火が絶えることなく、悲惨な状況が繰り返されていたと想像する。徳川の260年は平和が続いたが、第2次世界大戦からはまだ80年も経っていない。第1次世界大戦の後に国際連盟ができたが、すぐに瓦解し、2次大戦後には、その反省に立って、国際連合が作られたのにとても役割が果たせているとは言えない。

歴史の真相はなかなか明らかでないことが多いが、終わってみれば、いかに戦争遂行が愚かなことであったかはわかるのに、まだまだ現実はこの先も繰り返されるのだろうか。それにしても、戦争は、侵略は、許してはならないという世界世論がこれだけ高まっても、外交による妥協点がどのようなところで見えてくるのかわからない。ロシアへの経済制裁も、本当に困るのは庶民であってプーチンではない。コロナ感染や気候変動という、地球上で国を超えて共通の課題に取り組む機運が、協調社会を生むきっかけのように見えたのに、現実の戦争を目の当たりにして、人類の愚かさから抜けられない悲しさを思う。

     参考:太宰治:右大臣実朝(新潮文庫)、石川進:日本の歴史7鎌倉幕府(現代公論社)


空間  構造  デザイン研究会 Part I :「空間と構造の交差点」…話題のプロジェクトやテクノロジーをめぐって
第4回 「歴史的建造物のリノベーション」


日時:2022年04月23日(土)14:00~
会場:オンライン(Zoom、Youtubeライブ配信(アーカイブあり)
参加申し込み:https://ws.formzu.net/fgen/S56224667/
★Youtubeでのご視聴はお申し込みの必要はありません。

「歴史的建造物の耐震改修実例-富岡倉庫ー」江尻憲泰(江尻建築構造設計事務所、日本女子大学)
「京都市京セラ美術館について」西澤徹夫(西澤徹夫建築事務所)

       

第2回AJ研
建築メディアの新たな潮流

日時:2022年6月4日(土) 14:00-16:00
会場:オンライン(Zoom)
参加申し込み:https://ws.formzu.net/dist/S49503985/
★Youtubeでのご視聴はお申し込みの必要はありません。

コーディネーター:磯達雄(建築評論家 Office Bunga)
パネリスト:加藤純(TECTURE MAG)、富井雄太郎(ミルグラフ)
コメンテーター:今村創平(千葉工業大学教授)、青井哲人(明治大学教授)(仮)


紙媒体の建築専門誌が次々と休刊となっていく一方で、WEBやSNSによる建築メディアが多数の購読者を得ている。こうした建築情報サイトは世界規模で広まっており、グローバルな建築情報の流通構造が、この10数年の間に大きく様変わりしたと言える。もう一つの注目すべき動きとして、建築書の出版形態がある。以前は建築分野を得意とする専門出版社がこれを担っていたが、出版点数と発行部数の両方を大きく減らしており、なかには出版活動自体を停止したところもある。そうしたなかで、「出版社が出せないなら自分で出してしまおう」と、自らが版元となって建築書を発行する人たちが続々と現れるようになった。今回は、次世代型空間デザインメディアの『TECTURE MAG』を発行する山根脩平さんと加藤純さん、建築系出版社を退社後に株式会社ミルグラフを立ち上げ多数の建築書を自ら企画し出版している富井雄太郎さんを招いて、現在進行形の建築メディアの変化について明らかにしていく。


第42回AF-フォーラム +
空間  構造  デザイン研究会 Part I第5回 :「空間と構造の交差点」
「軽い木の特徴を活かした“モクビルプロジェクト”」


日時:2022年06月25日(土)14:00~
会場:オンライン(Zoom、Youtubeライブ配信(アーカイブあり)
参加申し込み:https://ws.formzu.net/dist/S895819741/
★Youtubeでのご視聴はお申し込みの必要はありません。

コーディネーター:斎藤公男
パネリスト   :加藤 詞史(加藤建築設計事務所)、中西 力(スターツCAM)、小野塚 真規(オノツカ)
プログラム   :建築家・構造設計者・木架構制作者の3者による講演(各20~30分)の後、討議など。

木質系の建築技術が、大スパンから高層化へ向かう現在、江戸川区に竣工した「モクビル」を題材に「高層木造の現在」を考える機会とします。
2010年に施行された公共建築物等木材利用促進法や温室効果ガス発生抑制などの社会的ニーズにより、木質構造による中高層建築物の規制緩和を背景にした建設会社と設計事務所の「民間企業」による取り組みがその特徴です。
カーボンニュートラル、免震による都市部の質向上(強靭化)などの課題解決と新しい価値の創出をテーマとしています。

題材の南葛西モクビルは、上階4層の木質構造と下階5層の立面混構造建物に免震装置を加えた構成となっており、都市部をフィールドとして建設、不動産を中心に多角的に事業を展開するスターツCAMと木質系技術を背景に活動・設計を行なってきた加藤詞史/加藤建築設計事務所の共同開発プロジェクト(試設計)を背景に生まれた建物です。
南葛西モクビルの原型となった共同開発の想定モデル建物は、地上8~11階建て、述床面積1,000~2,000m2前後の中小規模の建物で、上層4層の木質化と免震を組み合わせたものです。

木質化の取り組み内容は以下となります。

▹上層4層木質化の特徴
・告示仕様の汎用性のある耐火構造。
・120角柱を基本とする一般住宅流通材を使用。
・「構造用合板張耐力壁」の構成。
・耐風圧性能、通気構法などによる持続性に配慮。
・遮音試験による居住環境の性能確保。
▹下層5層RC部の特徴
・上層木質化(木重量はRC重量の1/6)による構造躯体量および杭の軽減を(同じ9階建てRC造比)。
▹免震部の特徴
・混構造に最適化した免震装置の選定。
・斜め柱による容積最大化(免震離隔距離確保)。

このプロジェクトの先進性は、汎用性の高い告示を中心とした仕様と部材構成による高層木造の実現に加え、下部躯体・地盤への負荷軽減を中心にして、構造、施工的なメリットを反映、同規模の全階RC造(耐震)と同程度の建設コストによる免震建物を実現した点です。
「見せる木」とは異なる「軽い木」を活かす、材を性能面から活用する取り組みとなっており、木の材料特性を引き出しています。

施工においては、林産県の加工工場との連携による都市部と地方との人材交流と補完をはかっています。
また、住居空間と親和性が高い木質構造により、より快適な温熱空間を実現。住空間の代名詞ともいえる勾配屋根の採用で、最上階の住まいをより豊かにしています。

将来的な改修や減築、解体負荷の低減など、建設〜解体までを包括するプロジェクトとしても位置づけています。複数棟、量産メリットを視野に入れた取り組みとなっています。


建設トップランナーフォーラム「地域建設業のグリーン戦略」

2022年6月24日(金)13時から17時、イイノホールRoomAからネット中継
2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、地域建設業のグリーン戦略への取組みが加速しています。本フォーラムは、グリーンインフラを活用した自然共生地域づくりや、循環型社会をめざす環境ビジネスの参入、省エネ・再生可能エネルギーの活用による地方創生などの先進事例を発表します。脱炭素社会をめざす上で、地域建設業が果たすべき役割や方向性をパネルで議論します。
申込(参加無料): https://ws.formzu.net/fgen/S74215799/
チラシ
問い合わせ先
建設トップランナー倶楽部 事務局
〒113-0023 東京都文京区向丘 1-5-4 ワイヒルズ 2 階 米田事務所内  中川寛子、大里茂登子
TEL:03-5876-8461  FAX:03-5876-8463  Mail:info(アットマーク)kentop.org


日本学術会議公開シンポジウム・第13回防災学術連携シンポジウム

自然災害を取り巻く環境はどう変化してきたか

詳細はこちらよりご確認ください
日時:2022年5月9日(月)12:30~18:00
主催:日本学術会議防災減災学術連携委員会、共催:(一社)防災学術連携体
お申込み:https://ws.formzu.net/fgen/S79677929/
ご案内PDF
神田 順 まちの中の建築スケッチ 「根津教会—大正のころの景観—」/住まいマガジンびお

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