A-Forum e-mail magazine no.88 (18-08-2021)

災害と土地利用

熱海市伊豆山で7月3日に土石流が発生し、25人を超える死者・行方不明を出すという大災害となった。詳細な調査報告はこれからのようであるが、違法な盛り土が要因となったことは、間違いないようである。

自然現象を起因とする災害を自然災害と呼ぶが、ほとんどの場合、人為的要因が大きな影響を与えている。それを防ぐには、個人では無理で、国任せにも限界がある。自治体の適切な判断や権限の執行以外にない。もちろん、そのための専門家の協力・支援は欠かせない。

問題として指摘されている違法盛り土とは何かと思うに、土地にかかわる経済行為であり、自然な状態を危険にさらす行為である。ただ、その危険性がどの程度のものであるかを、行政がどこまで把握して、強制的に制止することができなかったのかと考えると、降雨予測や土石流発生予測の理解度に負うところが少なくない。法令は、ある程度の安全性を想定して、条件設定をしているが、とてもすべての条件をカバーできるわけではない。

自然の地形のままであっても、地滑りが発生したり、地殻変動があるので、安全な住み方に対して、行政は土地利用に対して一定の方向性を示すべきである。洪水や活断層などに対する配慮は、今までの都市計画においてとても十分であったとは言えない。しかし、今回のような土地の大規模な改変という行為が、安易になされたことに対しては、より根本に立ち返って考える必要があるように思う。

自然とどのようにかかわって暮らしていくのか。少しなら自然の形を変えてよいのか。どこまでなら許されるのか。専門家による検討と行政による判断が基本である。

建物を建てるときの地鎮祭の意味は、そこの土を移動させたり、空間を私的に占有することに対して、地の神に許しを請うということである。これから人口減少社会を迎え、ますます自然災害が頻発すると言われる中で、土地の所有者が、どこまでの改変が許されるか、少なくとも、今ある状態よりも、良い環境を形成することが、近隣はもとより、周辺の住民も交えて了解されることを前提とするような、社会通念が形成される必要がある。

もちろん、悪徳業者を取り締まるとか、法律・条令を整備することも大切であるが、そもそも自然に対して私たちがやって良いことの再確認をする必要があることを、伊豆山の土石流災害は教えてくれた。これは、津波防災や耐震政策においても言えることのように思うし、さらに言えば、都市の再開発の是非の判断をする場合にも当てはまる。

安全に暮らしていくにあたって、行政の役割は重い。と同時に、それを支える専門家の役割はさらに重い。

(JK)


日本本建築学会 「建築と模型」若手奨励特別研究委員会 主催

「展示からから考える模型のこれから」


日時:2021/8/21(土)13:00~16:30
3DCAD や VR、コンピュータシミュレーションが⼀般化した現代における模型の再評価を行うため、長にわたる先生方の経験を踏まえ、建築模型が博物館や展覧会においてこれまで果たしてきた役割や、これからの可能性、昨今(あるいは近い将来)模型の利用に関する新たな展開が生まれてきつつあるのかどうか……といった点について、話題提供していただきます。 (日本本建築学会「建築と模型」若手奨励特別研究委員会)
~プログラム~
・趣旨説明
・レクチャー
「展覧会と模型」三宅理一(東京理科⼤学客員教授)
「空間と構造―模型が拓く建築デザイン」斎藤公男(日本大学名誉教授)
「模型の博物学―建築的思考の保存・再⽣・創出」松本⽂夫(東京⼤学総合研究博物館特任教授)
・討論&まとめ
★チャットにて討論にご参加いただけます。
お問い合わせ:「建築と模型」若手奨励特別研究委員会
architecturalmodel.aij アットマーク gmail.com
日本構造家倶楽部

第16回日本構造デザイン賞 授賞式・記念講演会

2021年8月27日(金)15:30〜、Youtubeライブ配信

本年度の「日本構造デザイン賞」は、当倶楽部選考委員による厳正な選考の結果、
坂田 涼太郎(坂田涼太郎構造設計事務所)/土佐市複合文化施設
島村 高平(大成建設)/大成建設技術センター風のラボ
の2氏が受賞者として選考されました。

「日本構造デザイン賞 松井源吾特別賞」は、建築デザインにおけるエンジニアリング的思考の展開が高く評価された岡部 憲明氏(建築家、岡部憲明アーキテクチャーネットワーク代表)が受賞者として選考されました。
http://www.jsdclub.jp/

第38回AF-Forum (第0回 空間 構造 デザイン研究会)
「熱く闘いし、構造家たち」

日時:2021年9月4日(土)14:00~16:00
モデレーター:斎藤公男
パネリスト:松村秀一、松尾智恵、中田捷夫、萩生田秀之、森部康司
会場:オンライン(Zoom)、Youtubeライブ配信(アーカイブあり)

参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第38回AFフォーラム参加希望」とご明記ください。

もう一年半前になります。コロナ禍がこれ程深刻な状況になろうとは、その拡大が警告された当時は予想だにできませんでした。日頃いつでも当たり前になっていた「楽しく自由に人と会う」ということがとても難しい時間が流れています。しかしそれもやがてはいつか解消し、以前と同じような「日常」を回復することができるはず。そうした期待を抱き続ける毎日です。
その一方で、突然の訃報が届きます。私たちが敬愛する恩師、先輩、同志や仲間だったりー。思いもかけない急逝の知らせに言葉を失ったことが何度もありました。聞きたかったこと、話したかったこと、様々な回顧の中からわいてくる故人との思い出はつきません。

近年あるいは今年になって他界された身近な方々―内田祥哉先生、川口衞先生、播繁氏、渡辺邦夫氏、新谷眞人氏らはいずれも「松井源吾賞」あるいは「日本構造デザイン賞」を受賞された著名な構造家です。その業績が高く評価されることは言うまでもありませんが、それと共に真摯な人柄と熱き情熱、建築や構造デザインへの愛着といった志を次の世代へのメッセージとして伝えたい。それが私達の願いです。

今回のAF-フォーラムではまず初めに、ゆかりの深い各々のパネリストに故人の業績と歩みを紹介して頂いた後、皆様と共に思い出のエピソードなどを語り合いたいと思います。


第22回 AB(アーキテクト/ビルダー「建築の設計と生産」)研究会
建築生産組織シリーズ(職人、建設労働、発注者、デザイン・ビルド、BIM)

コーディネーター:布野修司+安藤正雄+斎藤公男

日時:2021年9月11日(土)14:00〜17:00
会場:オンライン(Zoom)

趣旨説明:安藤正雄
プレゼンテーション:
1「元請・下請関係の変遷と技能労働者の実質賃金の変動について」古阪秀三 
2「職人技能のロボット化は可能か?」蟹澤宏剛

参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第22回AB研究会参加希望」とご明記ください。

AB研究会では、これまでは野丁場については、デザイン・ビルドをめぐって(第01回 デザインビルドとは?:新国立競技場問題の基層など)、また、発注方式の多様化をめぐって(第02回 第02回 入札契約方式の多様化と建築設計 建築の設計と生産:その歴史と現在の課題をめぐってなど)、さらに職人問題をめぐって(第18回 職人問題の現実と建設キャリアップシステムなど)で議論を重ねてきた。 今回は、建設産業の重層下請構造と呼ばれてきた構造そのものについて、今何が起こっているのか、どのように変わってきたのか、あるいは変わらないのか、特に、技能労働者に焦点を当てながら、議論したい。可能であれば、「寄せ場」の現在にも触れたい。


空間  構造  デザイン研究会

発足にあたって

皆様ご存知のように、2013年12月に設立されたA-Forumは早くも今年末で8年目を迎えます。これまで運営・コアメンバーによりさまざまな企画が行われてきましたが、多くの方々の協力と支援のお陰で大きな成果をあげることができました。「AF-フォーラム」や「研究会」もそのひとつですが、昨今のコロナ禍の広がりの中で、通常の開催はなかなか難しく、運用の工夫が求められています。

此度、A-Forumの中心的理念である『建築(家)と技術(者)の融合』をテーマにした新しい研究会を、今回の第38回AF-フォーラム「熱く闘いし、構造家たち」(2021年9月4日(土)14:00~)をキックオフ・イベントとして立ち上げることにしました。 近年あるいは今年になって他界された身近な方々―内田祥哉先生、川口衞先生、播繁氏、渡辺邦夫氏、新谷眞人氏らはいずれも「松井源吾賞」あるいは「日本構造デザイン賞」を受賞された著名な建築家・構造家です。その業績が高く評価されることは言うまでもありませんが、それと共に真摯な人柄と熱き情熱、建築や構造デザインへの愛着といった志を次の世代へのメッセージとして伝えたい。そうした思いがこの研究会の設立をした原点です。

アーキニアリング・デザイン(AND)とは建築と技術を結ぶ二つのベクトル―融合・触発・統合の有様や成果を見つめようとする言葉ですが、「空間構造デザイン研究会(KD研)」にもその評価軸は通底しています。ここでは2つのテーマ、すなわち「空間と構造のデザイン」および「空間構造のデザイン」からヒントを得て、次のような2つのPartを設定してみました。

Part I :「空間と構造の交差点」…話題のプロジェクトやテクノロジーをめぐって

Part II :「“空間構造”の軌跡」…実践的挑戦と世界の潮流

まずPart Iでは、建築家とエンジニアの協同や技術的開発・挑戦から実現された様々な成果やそのデザイン・施工プロセスについて数名のパネリストからレポートして頂き、オンライン方式での質疑・意見交換を行う。

つぎにPart IIでは、1959年に設立されたIASS(国際シェル・空間構造学会)の主要なテーマとして今日に続いている“空間構造”(Spatial Structure)に焦点を当て、長年にわたるわが国の活動を解剖しつつ世界の動向を俯瞰すると共に、若い世代を含めたフリートークを楽しみたい。皆様のご参加をお待ちしています。

(2021年8月 斎藤公男)
開催日程(予定)

Part I :「空間と構造の交差点」
隔月1回
第1回 2021年10月30日(土)15:00~17:00
第2回 2021年12月04日(土)14:00~16:00
第3回 2022年01月29日(土)14:00~16:00

Part II :「“空間構造”の軌跡」
毎月1回
第1回 2021年09月18日(土)14:00~16:00
第2回 2021年10月02日(土)14:00~16:00
第3回 2021年11月20日(土)14:00~16:00
第4回 2021年12月25日(土)15:00~17:00
第5回 2022年01月15日(土)14:00~16:00
第6回 2022年02月19日(土)14:00~16:00
第7回 2022年03月19日(土)14:00~16:00

方式
Youtubeライブ(とりあえず生配信のみ)

日本学術会議 防災減災学術連携委員会

第3回「防災に関する日本学術会議・学協会・府省庁の連絡会」ー激化する気象災害への備えーを開催しました

日時:2021年8月3日(火)13:00~16:30
https://janet-dr.com/060_event/20210803.html

地球温暖化の影響などで気象現象は近年激化しており、今後もその傾向は続くと予想されています。従来の想定よりも激しい豪雨・暴風や高潮などの気象外乱に対して、どう備えれば良いのかを考えるため、関係府省庁と関係学会との情報交換を行います。政府と学会との今後の連携のあり方も議論しました。

「激化する気象災害への備え」に関する政策について
流域治水関連法について(総論):国土交通省 水管理・国土保全局河川計画課 課長 佐藤寿延
流域治水関連法について(まちづくりの観点から):国土交通省 都市局 都市計画課 課長 堤洋介
災害対策基本法改正について(避難情報の見直し、広域避難):内閣府 政策統括官(防災担当)付参事官(調査・企画担当)付企画官 髙畑栄治
災害対策基本法改正について(要支援者の避難について):内閣府 政策統括官(防災担当)付参事官(避難生活担当)重永将志
「激化する気象災害への備え」に関する学会の活動について
日本気象学会:日本気象学会の気象防災への取り組み:気象災害委員会活動と航空機観測を例として 坪木和久(名古屋大学)
土木学会: SIP 国家レジリエンス(防災・減災)の強化 -市町村災害対応統合システムについて- 塚原健一(九州大学)
日本都市計画学会:都市計画学会としての取組みと都市計画分野の論点 加藤孝明(東京大学)
日本災害医学会:医療機関における水害時の対策に向けて~『医療継続』も視野に入れた事前避難を~ 高橋礼子(愛知医科大学)

防災減災学術連携体

令和3年7月3日熱海市の土砂災害に関する緊急連絡会を開催しました

日時:2021年8月6日(金)
日本火災学会『静岡県熱海市の土砂災害と消防機関等の対応状況』鶴田 俊(秋田県立大学)
日本応用地質学会『崩壊盛土と災害地質リスク』稲垣 秀輝(株式会社環境地質)
日本古生物学会『静岡県熱海市伊豆山地区で発生した土石流堆積物に関する調査報告』北村 晃寿(静岡大学)
日本リモートセンシング学会『地球観測衛星が捉えた熱海市で発生した土砂災害の現状』桑原 祐史(茨城大学)
日本地図学会『静岡点群サポートチームとしての迅速な三次元地図共有とオープン化』古橋 大地(青山学院大学)
<資料配布のみ>日本地盤工学会『捨てる、とは』東畑 郁生(東京大学名誉教授)

第一回建築とジャーナリズム研究会 動画公開しました

基調報告「建築ジャーナリズムの来し方行く末」(神子久忠)と意見交換 日時:2021年7月3日 14:00-16:00
コーディネーター:布野修司、コメンテーター:斎藤公男、和田章、磯達雄、今村創平

  資料詳細はこちら
神田 順 まちの中の建築スケッチ 「 蘆花の梅花書屋—明治の武蔵野の面影—」/住まいマガジンびお

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