熱海市伊豆山で7月3日に土石流が発生し、25人を超える死者・行方不明を出すという大災害となった。詳細な調査報告はこれからのようであるが、違法な盛り土が要因となったことは、間違いないようである。
自然現象を起因とする災害を自然災害と呼ぶが、ほとんどの場合、人為的要因が大きな影響を与えている。それを防ぐには、個人では無理で、国任せにも限界がある。自治体の適切な判断や権限の執行以外にない。もちろん、そのための専門家の協力・支援は欠かせない。
問題として指摘されている違法盛り土とは何かと思うに、土地にかかわる経済行為であり、自然な状態を危険にさらす行為である。ただ、その危険性がどの程度のものであるかを、行政がどこまで把握して、強制的に制止することができなかったのかと考えると、降雨予測や土石流発生予測の理解度に負うところが少なくない。法令は、ある程度の安全性を想定して、条件設定をしているが、とてもすべての条件をカバーできるわけではない。
自然の地形のままであっても、地滑りが発生したり、地殻変動があるので、安全な住み方に対して、行政は土地利用に対して一定の方向性を示すべきである。洪水や活断層などに対する配慮は、今までの都市計画においてとても十分であったとは言えない。しかし、今回のような土地の大規模な改変という行為が、安易になされたことに対しては、より根本に立ち返って考える必要があるように思う。
自然とどのようにかかわって暮らしていくのか。少しなら自然の形を変えてよいのか。どこまでなら許されるのか。専門家による検討と行政による判断が基本である。
建物を建てるときの地鎮祭の意味は、そこの土を移動させたり、空間を私的に占有することに対して、地の神に許しを請うということである。これから人口減少社会を迎え、ますます自然災害が頻発すると言われる中で、土地の所有者が、どこまでの改変が許されるか、少なくとも、今ある状態よりも、良い環境を形成することが、近隣はもとより、周辺の住民も交えて了解されることを前提とするような、社会通念が形成される必要がある。
もちろん、悪徳業者を取り締まるとか、法律・条令を整備することも大切であるが、そもそも自然に対して私たちがやって良いことの再確認をする必要があることを、伊豆山の土石流災害は教えてくれた。これは、津波防災や耐震政策においても言えることのように思うし、さらに言えば、都市の再開発の是非の判断をする場合にも当てはまる。
安全に暮らしていくにあたって、行政の役割は重い。と同時に、それを支える専門家の役割はさらに重い。
(JK)
日時:2021年9月4日(土)14:00~16:00
モデレーター:斎藤公男
パネリスト:松村秀一、松尾智恵、中田捷夫、萩生田秀之、森部康司
会場:オンライン(Zoom)、Youtubeライブ配信(アーカイブあり)
参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第38回AFフォーラム参加希望」とご明記ください。
もう一年半前になります。コロナ禍がこれ程深刻な状況になろうとは、その拡大が警告された当時は予想だにできませんでした。日頃いつでも当たり前になっていた「楽しく自由に人と会う」ということがとても難しい時間が流れています。しかしそれもやがてはいつか解消し、以前と同じような「日常」を回復することができるはず。そうした期待を抱き続ける毎日です。
その一方で、突然の訃報が届きます。私たちが敬愛する恩師、先輩、同志や仲間だったりー。思いもかけない急逝の知らせに言葉を失ったことが何度もありました。聞きたかったこと、話したかったこと、様々な回顧の中からわいてくる故人との思い出はつきません。
近年あるいは今年になって他界された身近な方々―内田祥哉先生、川口衞先生、播繁氏、渡辺邦夫氏、新谷眞人氏らはいずれも「松井源吾賞」あるいは「日本構造デザイン賞」を受賞された著名な構造家です。その業績が高く評価されることは言うまでもありませんが、それと共に真摯な人柄と熱き情熱、建築や構造デザインへの愛着といった志を次の世代へのメッセージとして伝えたい。それが私達の願いです。
今回のAF-フォーラムではまず初めに、ゆかりの深い各々のパネリストに故人の業績と歩みを紹介して頂いた後、皆様と共に思い出のエピソードなどを語り合いたいと思います。
日時:2021年9月11日(土)14:00〜17:00
会場:オンライン(Zoom)
趣旨説明:安藤正雄
プレゼンテーション:
1「元請・下請関係の変遷と技能労働者の実質賃金の変動について」古阪秀三
2「職人技能のロボット化は可能か?」蟹澤宏剛
参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第22回AB研究会参加希望」とご明記ください。
AB研究会では、これまでは野丁場については、デザイン・ビルドをめぐって(第01回 デザインビルドとは?:新国立競技場問題の基層など)、また、発注方式の多様化をめぐって(第02回 第02回 入札契約方式の多様化と建築設計 建築の設計と生産:その歴史と現在の課題をめぐってなど)、さらに職人問題をめぐって(第18回 職人問題の現実と建設キャリアップシステムなど)で議論を重ねてきた。 今回は、建設産業の重層下請構造と呼ばれてきた構造そのものについて、今何が起こっているのか、どのように変わってきたのか、あるいは変わらないのか、特に、技能労働者に焦点を当てながら、議論したい。可能であれば、「寄せ場」の現在にも触れたい。
皆様ご存知のように、2013年12月に設立されたA-Forumは早くも今年末で8年目を迎えます。これまで運営・コアメンバーによりさまざまな企画が行われてきましたが、多くの方々の協力と支援のお陰で大きな成果をあげることができました。「AF-フォーラム」や「研究会」もそのひとつですが、昨今のコロナ禍の広がりの中で、通常の開催はなかなか難しく、運用の工夫が求められています。
此度、A-Forumの中心的理念である『建築(家)と技術(者)の融合』をテーマにした新しい研究会を、今回の第38回AF-フォーラム「熱く闘いし、構造家たち」(2021年9月4日(土)14:00~)をキックオフ・イベントとして立ち上げることにしました。 近年あるいは今年になって他界された身近な方々―内田祥哉先生、川口衞先生、播繁氏、渡辺邦夫氏、新谷眞人氏らはいずれも「松井源吾賞」あるいは「日本構造デザイン賞」を受賞された著名な建築家・構造家です。その業績が高く評価されることは言うまでもありませんが、それと共に真摯な人柄と熱き情熱、建築や構造デザインへの愛着といった志を次の世代へのメッセージとして伝えたい。そうした思いがこの研究会の設立をした原点です。
アーキニアリング・デザイン(AND)とは建築と技術を結ぶ二つのベクトル―融合・触発・統合の有様や成果を見つめようとする言葉ですが、「空間構造デザイン研究会(KD研)」にもその評価軸は通底しています。ここでは2つのテーマ、すなわち「空間と構造のデザイン」および「空間構造のデザイン」からヒントを得て、次のような2つのPartを設定してみました。
Part I :「空間と構造の交差点」…話題のプロジェクトやテクノロジーをめぐって
Part II :「“空間構造”の軌跡」…実践的挑戦と世界の潮流
まずPart Iでは、建築家とエンジニアの協同や技術的開発・挑戦から実現された様々な成果やそのデザイン・施工プロセスについて数名のパネリストからレポートして頂き、オンライン方式での質疑・意見交換を行う。
つぎにPart IIでは、1959年に設立されたIASS(国際シェル・空間構造学会)の主要なテーマとして今日に続いている“空間構造”(Spatial Structure)に焦点を当て、長年にわたるわが国の活動を解剖しつつ世界の動向を俯瞰すると共に、若い世代を含めたフリートークを楽しみたい。皆様のご参加をお待ちしています。
Part I :「空間と構造の交差点」
★隔月1回
第1回 2021年10月30日(土)15:00~17:00
第2回 2021年12月04日(土)14:00~16:00
第3回 2022年01月29日(土)14:00~16:00
Part II :「“空間構造”の軌跡」
★毎月1回
第1回 2021年09月18日(土)14:00~16:00
第2回 2021年10月02日(土)14:00~16:00
第3回 2021年11月20日(土)14:00~16:00
第4回 2021年12月25日(土)15:00~17:00
第5回 2022年01月15日(土)14:00~16:00
第6回 2022年02月19日(土)14:00~16:00
第7回 2022年03月19日(土)14:00~16:00
地球温暖化の影響などで気象現象は近年激化しており、今後もその傾向は続くと予想されています。従来の想定よりも激しい豪雨・暴風や高潮などの気象外乱に対して、どう備えれば良いのかを考えるため、関係府省庁と関係学会との情報交換を行います。政府と学会との今後の連携のあり方も議論しました。
「激化する気象災害への備え」に関する政策について