A-Forum e-mail magazine no.70(15-01-2020)

仲間の議論の喜び


2020年、令和二年、庚子の年、それぞれに抱負をもって迎えた新年は、青空の多い、じつに穏やかな気持ちの良い日々であった。A-Forumのフレンド諸氏は、どのような新年を迎えられたろうか。

だいたい、自分もそうだが、70を超えると、この年になってまだ仕事ができること自体に有難いことと思える、と言う人が多い。筆者も大学を定年で退き、三陸漁村の復興まちづくりにかかわっている。建築基本法については、出来そうになったり、元に戻ったりということを繰り返しているが、多くの人と議論しながら、実現に向けての活動を続けている。

いろいろなところに、年の功ということもあり、大勢の仲間がいるわけである。建築基本法の仲間もいる、釜石の仲間もいる。趣味のテニスやチェロの仲間もいる。当然、小学校から大学まで、同じ学び舎で時を過ごした同窓の仲間がいる。悲しいけれど、当然、先に逝ってしまった仲間もそれぞれに思い浮かぶ。

やりたいことが多くても、昔のように、一気に何でもという訳にはいかないので、優先順位を考えたり、もう少し後回しでもよいかと考えたりする。そんなときも、それなりに楽しく思う。仲間の存在が有難い。

ただ、その仲間の範囲が問題である。昨今のSNSでは、意見の合う者だけで群れをなして安心しているようなところが問題と指摘されている。中根千枝著「タテ社会の人間関係」は刊行50年を経てロングセラーを続けているというが、分野的にも、世代的にも枠を広げた議論の仲間を育てる視点が欠かせない。

以前にも書いたように思うが、我々いわゆる団塊の世代は、新しい物や制度を作りながら、とにかく突き進んできた。日本が技術大国、経済大国と言われるまでになったことに対して、大いに貢献はしたのだと思う。その反面、後輩に、次世代に、伝えるということに疎かであったように反省している。これからは、次世代に、建築を通して、エンジニアリングを通して、政治を通して、世代としても学んだ知恵を伝えることをすべきなのだと、改めて思う。求められる社会そのものが変わってきていることを認識しながら、震災復興も、建築と法律の関係も、まさにそのような意識で取り組んでいきたい。

なによりも、A-Forumが、そのための議論の場になっていることを喜びに思う次第である。

(JK)


第31回 AF-Forum
現代社会における設計行為と法規制 ―イタリアン・セオリーから考える―


コーディネーター:神田順
パネリスト:大倉富美雄(大倉富美雄デザイン事務所代表)、松井健太(東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻 学術支援職員)

日時:2020年2月17日(月)18:00~★開始時間が通常と異なります
場所:A-Forum
参加費:2000円(懇親会、資料代)、学生1000円
参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第31回AF-Forum」とご明記ください。

イタリアン・セオリーとは、岡田温司の同名著書によっているが、現代社会の生き方を考察するイタリア哲学の思考を指している。建築基準法が膨大な規制の集合となって建築設計における知的生産の足かせになっている面が指摘できることは誰も異論のないところと考えるが、なかでも構造設計が創造的行為となり難い現状を、広い視点で論じ、専門家活動としての活性化の道を模索する。

類似の試みは、過去に2回実施されている。最初は、2015年11月9日に、日本デザイン協会とインダストリアルデザイナー協会の共催で、「Turning Pointに差しかかったデザイン・建築・環境について語り合おう」ということで、議論がされた。神田から建築基本法制定を議論する中で、イタリアン・セオリーが現代社会の根本的な問題を解き明かしており、専門家が専門家たりうるための鍵となる旨の発言をした。その後、2019年2月26日に、日本デザイン協会と日本建築家協会関東甲信越支部デザイン部会との共催で、「日本型規制社会と知的生産―イタリアン・セオリーから学ぶもの―」と題して、建築家を中心にトークイベントをもった。

建築基本法制定の議論が建築の構造技術者を中心として始まったこともあり、過去2回の議論を構造技術者も含めたものにしたいということが、今回のフォーラムの趣旨である。パネリストとしては、前2回のコーディネータである大倉富美雄氏と、イタリア現代建築歴史を専門とする松井健太氏をお呼びして、イタリア、建築と政治、法規制の役割などをキーワードとして活発な議論を展開したい。


第19回 AB(アーキテクト/ビルダー「建築の設計と生産」)研究会
建築生産を支える専門職(サブコントラクター)の世界

コーディネーター:布野修司+安藤正雄+斎藤公男
概要・趣旨説明:中村良和
プレゼンテーション:
1.「瓦職人(屋根仕上業者)の世界」:坪井 進悟((株)坪井利三郎商店 代表取締役社長)
2.「鉄加工建材メーカーの世界」:代表取締役社長 坂田 清茂(カツデンアーキテック(株))

日時:2020年3月28日(土)15:00〜
場所:A-Forum
参加費:2500円(懇親会、資料代)
参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第19回AB研」とご明記ください。

戦後、日本の建築・住宅の供給構造は部品化を中心とした工法革新が進展し、住宅生産の性能向上と生産効率向上を両立させてきた。

現在その供給構造は既存の量産部品化がベースとなっており、一般の建築設計や生産現場に対して、構造、デザイン、デティール等の自由度喪失や技術能力低下といった影響が顕在化している。また、前回(第18回)のAB研究会では蟹沢先生から改めて職人不足を中心とした問題の現状と深刻さが報告された。

このままだと、行き止まりの袋小路に行き詰った状態のまま、建築・住宅の供給構造は停滞して行き、顧客も含めた全てのプレイヤーに未来が無いように思われる。

設計・部品生産・建築現場・品質保証といった一貫・連続していながら、それぞれがもっと顧客・地場に近く、自由度が高く且つ経済合理性が高いサスティナブルな供給構造に変革させて行く可能性はあるのだろうか。

そこで今回は、建築設計者があまり直接接触していない協力事業者(専門工事店や建材メーカー)に注目したい。

専門職(サブコントラクター)はBtoBということもあり、建築規模的にもエリア的にも小から大まで比較的に広範囲な事業展開をされています。その中でも専門職人・技術者の育成等も含めて事業継続性を克服されている事業者トップに現状と課題や取組み等をお聞きして、専門職(サブコントラクター)の世界を垣間見ながら、代替わりの秘訣や新しい職能ネットワークの可能性等について議論を展開したい。



A-Forum 2018-2019 冊子

AF-Forum第21~30回とエッセイをまとめた冊子を作成いたしました。
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