この秋、久しぶりに、バルセロナで開催(10/7~10)のIASS(国際シェル・空間構造学会)60周年記念大会への参加をかねて、研修旅行を企画した。団員数は何と52人となったが、平均年齢は約45歳。実に実りの多い10日間のツアーであった。訪問先のドイツ、スペイン、ポルトガルの3カ国で見聞した「空間構造」の、時代を超えた、その輝きは色あせていなかった。例えば、マイア・ピア橋(1877、G.エッフェル)、サグラダファミリア協会(1883~、A.ガウディ)、ミュンヘンオリンピック・スタジアム(1972、F.オットー・J.シュライヒ)、サンジョルジュパレス(1990、川口衞)では構造的蓄積と発想が革新の建築を生んでおり、ブラガ(2004)やカンプノ―スタジアム計画では建築家と協働する優れたエンジニアの存在が鮮やかに見て取れた。19世紀、20世紀、そして21世紀へと続くいずれの時代にも、情熱と知力に溢れたエンジニアの姿は正にその時代の先端を切り抜く、「進撃する構造家」といえよう。
そもそも「空間構造」(Spatial structure)とは何か。三次元的、形態抵抗、軽量性、無柱大スパンなどといった狭義のキーワードが浮かぶ一方で、「広い空間の実現・秩序化に積極的かつ意識的に関わろうとする、美しく合理的な構造」といった理念が必要だ。それが高い重層構造との違いではないか。
ところで先般、建築倉庫で開催された「構造展」では、そうした多くの「空間構造」が学生たちをひきつけ、それを創った構造家たちの思考や挑戦的姿勢は、多くの人々を魅了した。その流れ、とでもいえようか。恒例となった今年のアーキニアリング・デザイン(AND)展が今年も建築学会とJSCAが共催する形で開催される(11/6~13)。会館ギャラリーでは、「構造技術が作る建築と空間」をテーマとして、“平成の歩み”と共に“構造デザインの世界”を展開したい。そこには「空間構造」を牽引してきた過去の人々の軌跡と今の時代を多様かつ意欲的に突き進んでいるアトリエ派ともいうべき構造家たちの活躍する姿が見られよう。時代を超えたキーワードは「進撃する構造家たち」。そこに未来に向かう建築の可能性があるはずだ。
日時:2019年11月6日(水)~ 13日(水)9:30~19:00(6 日(水)13:00 から/9 日(土)20:00 まで/13 日(水)16:00 まで)
会場: 建築会館・建築博物館ギャラリー(東京都港区芝 5-26-20)
展示内容:
・構造技術の歩み「空間構造」と「対震構造」
・力学から東京オリンピックへ「学生と考える五輪スタジアム」
・構造デザインの世界「若手構造家のプロジェクト」と「川口衞メモリアル」
・40 Years After BSS の軌跡(IASS とともに)
主催:日本建築学会・JSCA
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日時:2019 年 11 月9 日(土)15:00 ~ 18:00
会場:建築会館 3F 会議室(東京都港区芝 5-26-20)
主催:日本建築学会関東支部構造専門研究委員会
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日時:2019 年 11 月6 日(水)~ 11 月8 日(金) 9:00 ~ 20:15( 6 日(水) 14:00 から)
会場:建築会館ホール(東京都港区芝 5-26-20)
期間中に講演会開催、詳細は Web サイトを参照ください。
主催:JSCA・日本建築学会
詳細はこちら
鉄構技術 2019.11より
(MS)
コーディネーター:金田勝徳
パネリスト:大越俊男(元 日本設計)、五條渉(日本建築防災協会 参与)、常木康弘(日建設計 取締役兼常務執行役員)
日時:2019年11月14日(木)17:30~
場所:A-Forum
参加費:2000円(懇親会、資料代)
参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第30回AFフォーラム参加希望」と明記ください。
建築基準法は、前身となった市街地建築物法が1919年に制定されて以来、今日までの100年の間に改正が繰り返されて現在に至っている。とりわけ後半約40年間の改正は目まぐるしく、1981年の新耐震設計法の導入以来、改正の度に構造設計に係る技術基準が増え続けている。
2000年には「性能規定化」が行われたが、同時に確認・検査の民間開放が行われたため、技術基準は、関連する解説書などを含め、より具体化・詳細化される方向となった。これらは、一貫計算プログラムへの依存度の高まりなど、設計のあり方そのものにも大きな影響を与えている。続く2005年の構造計算書偽装事件をきっかけとした2007年、2008年の法改正では、偽装事件の再発防止に加えて、同時に明らかとなった不適切なモデル化の横行等への対策として、法の運用の厳格化、違反に対する罰則の強化が目指され、手続き関係の規定や基準がより一層細かくなった。同時にピアレビューの考え方を踏まえた構造計算適合性判定制度や、構造設計一級建築士制度が導入された。しかしそれらの結果として、限界を超えて詳細で複雑なものとなった法基準によって不自由と感じている設計者はいても、構造設計者が責任や能力を十分に発揮できるような環境作りが進んでいるとか、法体系があるべき姿に近づいているという声は聞いたことがない。
そこで当フォーラムでは、フォーラムの4回に一度の割合で、改めて現在の構造設計に関する法制度を問い直し、これからのあるべき姿を考え、さらにはその姿に近付けるためにはどうすれば良いかを全3回の予定で議論することとした。第一回目は、今年2月に表題テーマの「その1 現行法基準の問題点を考える」を、神田順、五條渉、土屋博訓の方々をパネリストにお招きして開催した。
当日はフォーラム参加者も交えて白熱した議論が展開され、様々な視点から今生じている、ないしは今後生じることが予想される法基準の問題点の洗い出しを行った。その結果、全体の流れとしては、現在の仕様規定型を中心とした設計法から、性能設計型への移行がこれからの法基準のあり方にではないかという方向性が見えてきた。そこで今回は「その2」として、性能設計に関する論議を中心に話題を展開したい。
当日はやや重いテーマではありますが、設計のBIM、AI化を間近にした今、多くの皆様と忌憚のない意見交換ができることを願っております。
金田勝徳
A-Forum A/B研究会は、保守的な慣性力に支配されながら様々な外力を受けて変化し続ける建築生産社会のなかで多様化・曖昧化する建築設計職能のあり方を巡り、これまでデザインビルドや設計者選定、発注者支援、木造住宅の構造性能、建築家住宅などのテーマを取り上げ、議論を重ねてきた。今回は、設計・生産の基層に位置する職人=建築技能者に焦点を当てる。
職人不足は、もはや危機的といって良い状況にある。特に大工や左官などの熟練が必要な職種は深刻である。大工は、バブルの頃に90万人いたのが今では40万人を切っている。しかも、1/3は60歳以上、50歳以上が過半数を超えている。このまま減り続けると、2030年代には、さらに今の半分にまで減る。職人不足は、少なくとも四半世紀以上前から問題視されていた。職人の地位向上などの提言もなされていた。なのに、何故、減り続けたのか。端的にいえば、根本的な問題を直視しなかった、あるいは、知らなかったからといっても良かろう。誰も当事者意識がなかったと言い換えても良い。職人問題は1度では収まらない大きな問題である。まずは、現実を知り、意識を共有するところから始めたい。そのうえで、近年大きな進展のあったキャリアアップシステム、多能工化、外国人労働者といった問題に議論を展開していきたい。
コーディネーター:布野修司+安藤正雄+斎藤公男
概要説明:安藤正雄 (千葉大学名誉教授)
(プレゼ1) 職人問題とは何であったか:今井義雄(鈴木工務店)
(プレゼ2) 職人問題の諸相とキャリアアップシステム:蟹澤宏剛 (芝浦工業大学)
コメンテーター: 布野修司(日本大学特任教授)
日時:2019年12月14日(土)15:00〜18:30
場所:A-Forum
参加費:2500円(懇親会、資料代)
参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第18回AB研究会参加希望」とご明記ください。