A-Forum e-mail magazine no.66(13-09-2019)

震災復興のまちの学校の将来


釜石市唐丹町小白浜地区の震災復興にかかわって8年になる。この夏は、屋号を潮見第と名付けた、まちづくりセンター事務所兼住宅に20日間滞在した。ワークショップでは東京から学生に参加してもらって、歴史や自然をたどる道としてのフットパスの案内の作成を試みたり、毎年の夏祭り「ゆめあかり唐丹の灯」のお手伝いなどで過ごした。

防潮堤は片岸地区は完成、小白浜では今も建設中であるが、まちの景観の一部として、いまだになじめないでいる。津波は、100年に一度の凄いものだった。1000年に一度という言い方をされる場合もあるが、三陸沿岸の場合は明治三陸津波(1896年)と比べて、ほぼ同程度だったというべきであろう。小白浜の津波による死者の数は、明治では460人だったのが、昭和には6人、平成の東日本大震災では1人と、確実に避難の対応が取れている。そして釜石地区全体でも、防災教育が徹底していて、小中学校生徒の死亡ゼロという、釜石の奇跡に救われた。

釜石市唐丹小学校は、片岸地区にあった。三陸鉄道の唐丹駅の近くの新しい住宅地とともに、広いグラウンドもあったが、海抜2mくらいで、何せ津波にはなすすべがなかった。子ども達は、高台の天照御祖神社に逃げて助かった。一方の中学校は、小白浜地区の海抜20mくらいの高台にあったが、耐震補強が必要ということで、移転した小学校とともに、しばらく小中学校は仮設校舎が使われた。

多くの三陸の被災した学校の再建にあたって、プロポーザルが行われた。唐丹では乾久美子建築設計事務所の案が当選し、浜と山をつなぐ、卒業生しても集まりやすい学校というねらいで建てられた。木造2階建ての校舎群を基本とし、いくつかの棟が渡り廊下で繋がれている。壁面の色はパステル調で、もともと唐丹のまちにある色を使ったとのこと。西側は、国道から少し下りたところに玄関があり、東側には、もともとの学校の入口があって、浜から幅6mの市道が国道に抜ける避難路として同時に整備された。

津波の後は、さらに人口も減り気味で、今は、1600人ほどが、小白浜を中心に、大石、荒川、川目、片岸、本郷、花露辺と唐丹湾を囲んだ集落をなし、唐丹小中学校の校区になっている。徒歩では難しい地区からの生徒たちは、市の提供するバスでの登下校である。昔は、舟で通学していたとも聞いた。

体育館やプールも整えられ、同じ敷地に児童館(保育園)も設置されている。新しい道路を登り切ったところから眺めると、学校全体が俯瞰できる。新しい校舎で子供たちは、気持ちよい時間が過ごせていると想像できる。2012年の最初の「唐丹小白浜まちづくりワークショップ」で、当時の小学生たちが、まちの未来の絵を描いてくれたことを思い出す。そんな子供たちもすでに高校生、大学生だ。

この建物も、長く使われてほしい。今1学年で3人の学年もある。生徒数が足りなくて廃校にならないか心配だ。学校の存続のためには、子供たちが居なくてはいけない。若い家族には、素敵な学校があるから、小白浜に越していらっしゃいと呼びかけたい。

建物は、税法上の償却年限などというものが、戦後の建物の寿命を短くしたように思うのだが、手入れ次第で、長く使える。鉄骨や鉄筋コンクリートだって、もともとの施工の質にもよるが、手入れをしなければ30年くらいで、ボロボロになってしまう。木造でも、50年、100年使い続けることは、十分に可能だ。

海と森に囲まれた、唐丹のまちの学校が、これからは100年に一度の地震や津波に耐え、多くの卒業生たちが、訪れたくなる、まちの施設としても長く使われてほしい。夏休み中の夕方、グラウンドで子供たちが遊んでいる。

(JK)

2018年10月撮影


第30回AF-Forum

建築構造設計に関わる基・規準の行方 ―その2
現行法基準の問題点を解決・改善するために目指すべき法基準の姿 (仕様規定型設計法から性能規定型設計法へ)―

コーディネーター:金田勝徳
パネリスト:大越俊男(元 日本設計)、五條渉(日本建築防災協会 参与)、常木康弘(日建設計 取締役兼常務執行役員)

日時:2019年11月14日(木)17:30~
場所:A-Forum
参加費:2000円(懇親会、資料代)
参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第30回AFフォーラム参加希望」と明記ください。

建築基準法は、前身となった市街地建築物法が1919年に制定されて以来、今日までの100年の間に改正が繰り返されて現在に至っている。とりわけ後半約40年間の改正は目まぐるしく、1981年の新耐震設計法の導入以来、改正の度に構造設計に係る技術基準が増え続けている。

2000年には「性能規定化」が行われたが、同時に確認・検査の民間開放が行われたため、技術基準は、関連する解説書などを含め、より具体化・詳細化される方向となった。これらは、一貫計算プログラムへの依存度の高まりなど、設計のあり方そのものにも大きな影響を与えている。続く2005年の構造計算書偽装事件をきっかけとした2007年、2008年の法改正では、偽装事件の再発防止に加えて、同時に明らかとなった不適切なモデル化の横行等への対策として、法の運用の厳格化、違反に対する罰則の強化が目指され、手続き関係の規定や基準がより一層細かくなった。同時にピアレビューの考え方を踏まえた構造計算適合性判定制度や、構造設計一級建築士制度が導入された。しかしそれらの結果として、限界を超えて詳細で複雑なものとなった法基準によって不自由と感じている設計者はいても、構造設計者が責任や能力を十分に発揮できるような環境作りが進んでいるとか、法体系があるべき姿に近づいているという声は聞いたことがない。

そこで当フォーラムでは、フォーラムの4回に一度の割合で、改めて現在の構造設計に関する法制度を問い直し、これからのあるべき姿を考え、さらにはその姿に近付けるためにはどうすれば良いかを全3回の予定で議論することとした。第一回目は、今年2月に表題テーマの「その1 現行法基準の問題点を考える」を、神田順、五條渉、土屋博訓の方々をパネリストにお招きして開催した。

当日はフォーラム参加者も交えて白熱した議論が展開され、様々な視点から今生じている、ないしは今後生じることが予想される法基準の問題点の洗い出しを行った。その結果、全体の流れとしては、現在の仕様規定型を中心とした設計法から、性能設計型への移行がこれからの法基準のあり方にではないかという方向性が見えてきた。そこで今回は「その2」として、性能設計に関する論議を中心に話題を展開したい。

当日はやや重いテーマではありますが、設計のBIM、AI化を間近にした今、多くの皆様と忌憚のない意見交換ができることを願っております。

金田勝徳


第17回 AB(アーキテクト/ビルダー「建築の設計と生産」)研究会
建築家の職能的住宅設計の普及―住宅生産と建築家の新しい関係 


コーディネーター:布野修司+安藤正雄+斎藤公男

日時:2019年9月21日(土)15:00〜18:30(予定)
場所:A-Forum
参加費:2500円(懇親会、資料代)
参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第17回AB研究会参加希望」とご明記ください。

A-Forum A/B研究会は、「デザインビルド」をめぐる第1回研究会(「デザインビルドとは?:新国立競技場問題の基層」)以降、入札契約方式の多様化、公共建築の設計者選定を巡る諸問題、発注者支援をめぐる問題を掘り下げる一方、日本の住宅生産と建築家をめぐって(第3回)、建築職人の問題、木造住宅設計の問題(第4回)、リノヴェーションの問題(第5回、第7回)、戸建住宅生産の問題(第10回)を議論してきた。今回は、第3回、第4回、第10回を踏まえ、2018年度「建築家住宅」新築供給数において No.1(*1)を獲得した仕組みに焦点を当て、住宅生産と建築家の新しい関係について考えてみたい。
*1建築家住宅(建築士の資格を持つ独立した建築家により基本設計された住宅)主要供給事業者7社における2018年度新築供給数(株)矢野経済研究所調べ/2019年8月

(a) 概要説明:長谷部勉 (H.A.S.Market 代表)
(b) 建築家住宅を普及させる:矢部智仁 (ハイアス総研 主席研究員)
(c) 建築家と地場工務店の協業のかたち:藤田摂(藤田摂建築設計事務所 主宰)
(d) これからの工務店:内藤智明(リガード 代表取締役) *調整中
コメンテーター: 布野修司(日本大学特任教授)


構造展
ー構造家のデザインと思考ー

会期: 2019年7月20日(土)~10月14日(月・祝)

会場: 建築倉庫ミュージアム 展示室A 〒140-0002 東京都品川区東品川 2-6-10)

開館時間: 火〜日 11 時〜19 時(最終入館 18 時)、 月曜休館(祝日の場合、翌火曜休館)

入場料: 一般 3,000円、 大学生/専門学校生2,000円、 高校生以下1,000円 (展示室Bの企画展示「Wandering Wonder-ここが学ぶ場-」の観覧料含む。)

企画・主催: 寺田倉庫 建築倉庫ミュージアム

特別協力: 斎藤 公男

協力: 犬飼 基史/ 津賀 洋輔/ 瀬尾 憲司/ 犬飼 としみ/ 吹野 晃平/ 川口 貴仁/ 石田 雄太郎

詳細はこちら
日本学術会議公開シンポジウム/第8回防災学術連携シンポジウム

第4回防災推進国民大会2019セッション
「あなたが知りたい防災科学の最前線 ―激化する気象災害に備える―」

日時:2019年10月19日(土)16:30~18:00
会場:名古屋市ささしまライブ24エリア・メインホールB
         (〒453-0872 愛知県名古屋市中村区平池町4丁目60−12 グローバルゲート 名古屋コンベンションセンターエリア 3F) 会場詳細
主催:日本学術会議防災減災学術連携委員会、防災学術連携体
参加費:無料
申込み:事前申し込みはこちらから    当日の直接参加も可能です。

地球温暖化の影響で気象現象は明らかに激化しており、従来の想定よりも激しい豪雨・暴風や高潮などに対して、防災・減災の準備を着実に進める必要があります。日本学術会議、防災学術連携体と57の会員学会などは、これらの災害の軽減に向けて、様々な分野の研究を続けています。防災には「自助・共助」「地域での連携」が大切であり、各地の消防団、町内会や自治体、学校や職場では、防災訓練や教育が続けられています。これらの活動と連携して、学術分野で得られている知見を正しく社会に伝え、互いに情報を共有することが、地域の防災力強化のために極めて重要です。 ここでは防災推進国民大会2019におけるセッションとして、気象災害を対象に、市民の皆様が知りたい防災科学の最前線をわかりやすく伝え、市民の皆様から防災科学に関する質問やリクエストを受け付け、各分野の研究者が答えます。


内容詳細  

神田 順 まちの中の建築スケッチ 第22回 「箱根町役場—箱根の山にある庁舎—」第23回「唐丹小中学校—震災復興のまちの学校—」/住まいマガジンびお