この5月に元号が令和となる。昭和と平成の変わり目の日本は、経済バブルの真只中にあり、平成元年の年末に株価が最高値を記録した。その直後のバブル崩壊(平成2年)による大不況と、それに続く経済停滞は当初「失われた10年」と言われ、それが「20年」と延長されて、最近では「失われた30年」との言われ方もする。もしそうであるなら、平成はまるごと「失われ」た時代なのかと暗然とした気分にもなる。
その頃の世界を見ると、昭和と平成との変わり目とはなんの関係もない偶然とはいえ、ベルリンの壁崩壊(平成元年)、東西冷戦の終結(平成2年)、ソ連をはじめとした社会主義国家の破綻(平成3年)などの大きな節目と一致する。「歴史には人知を超えた何かが存在するのではないか」とは評論家保坂正康の言葉ではあるが、うなずけるような気もする。
平成を振り返れば、こんなに数々の不正が行われた時代は過去にあっただろうかとの想いが拭えない。身近なところを見渡せば、構造計算書の偽造、様々な製品の検査データや施工データの偽装が次々と発覚している。それに加えて、約7千棟の違法賃貸アパートが建設され続け、他にも日本を代表するハウスメーカーによって約2千棟の違法住宅・賃貸アパートが建設されていたことが発覚している。
他の分野に目を移せば、食品、工業製品にも同様なことが発覚し続け、平成が嘘とごまかしの時代だったのかとさえ思われる。これらの事実から見れば「失われた30年」も、あながち見当はずれではないのかも知れないが、それではあまりにも空しい。
一方、凄まじいスピードで技術革新が進むコンピュータ関連技術を利用したAI、IOT、ロボットなどと人間との関わりが、今後どのように展開していくかを社会は今、かたずをのむ想いで見守っている。そして平成は、各国間でそれらの技術の先進性を競い、どの国がそのイニシアティブを握るのかを競う大競争時代でもある。これらの巡る混沌とした状況は、EUや米・中の関係など諸々の国際情勢に大きく影響している。しかし残念ながら、その競争の中、かつての「技術立国日本」の存在感が薄らいでいることに間違いはない。
昭和の日本は大きな失敗をしながらも、成長と拡大の先ある「幸福」を信じ、同じ方向に向かって邁進してきた。1964年(昭和39年)東京オリンピック開催に合わせて、カラーテレビが飛躍的に売れ、つつましい我が家がやっと買うことのできたカラーテレビで、私もその中継を熱心に視ていた。その中で、青空にはためく日の丸の映像と共に聴いた「日本の空にへんぽんとひるがえる日の丸の旗、誰ぞ知る、昇る朝日か沈む夕日か(北出清五郎アナウンサー)」とのアナウンスを今でも鮮明に記憶している。当時、そこにはっきりと「昇る朝日」を見ていた。平成を挟んだ令和との変わり目に開催される、2020年東京リンピック会場にひるがえる日の丸はどのように見えるのだろうか。
(KK)
コーディネーター:布野修司+安藤正雄+斎藤公男
プレゼンター:南雲要輔 (ホプキンス・アーキテクツ)
コメンテーター:小野田泰明(東北大学)、大野秀敏(東京大学名誉教授)、平野吉信(広島大学名誉教授)、相坂研介(相坂研介設計アトリエ)
日時:平成31年4月20日(土)15:00〜18:30
場所:A-Forum
参加費:2500円(懇親会、資料代)
参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第15回AB研究会参加希望」とご明記ください。
A-Forum A/B研究会は、公共コンペを巡る諸問題とこれらに対する挑戦を取り上げ、さらには発注者支援の必要性を唱えて議論を重ねてきた。前回第14回においては、法(MOP法)によりコンペ参加費用の補償や若手建築家に門戸を開くことを義務付けるフランスの公共コンペを取り上げ、建築家の選任と発注者の責任に関する基本的原則の確認を図った。しかし、そこであきらかとなったのは、官民パートナーシップ(PPP)の隆盛によりMOP法の適用が限定されつつあるという現状であった。ここにも、対立的(adversarial)関係から協調的(cooperative)関係にという受発注者間関係のグローバルな変化が、設計者の立場をあいまいにし、また弱体化しているという一般的問題が顕在化している。第15回は、英国の有力事務所をベースに民間事業を含む数多くのコンペに参加した実績を持つ建築家、南雲要輔氏をお迎えし、英国におけるコンペ事情を巡る議論を進めたい
1.英国の建築士登録制度(業務独占権の無い建築士)
2.英国政府の目標:チームワークとBIM
3.サスティナビリティと既存建築・都市
4.コンペへの参加から設計契約までのプロセス
5.事例1:聖トーマス病院イーストウィング、チームワークによるコンペから竣工まで
6.事例2:ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、国際コンペ事例
この10年よく言われるようになった言葉に、sustainable と resilience そして SDGs などがあります。
18世紀から20世紀に進めてきた贅沢な生活を反省し、自然エネルギーを活用するなど、重要な取り組みだと思いますが、我慢の生活に戻りなさいと言われているように感じることもあります。
日本で工事中のリニアー新幹線は時速500kmで走りますが、「一気圧」の中を走り抜ける空気抵抗だけでなく、トンネルの中の「留まった空気」を打ち破らねばならないなどがあり、エネルギーロスの大きなシステムだと思います。
一方で、カリフォルニアに本拠地があり電気自動車「テスラ」を開発したグループが始めた新しい交通システム「Hyperloop」があります。
長いチューブ構造を都市間に施工し、太陽エネルギーで真空ポンプを稼働させて内部の気圧を十分に低くし、空気抵抗をなくした条件で、28人乗りのカプセルを時速1000km(ジャンボジェットの巡航速度)で、次々に行き来させるシステムです。
将来はジャンボを飛ばす燃料がなくなることもありえます。
「新しい時代の問題は新しい技術で解決する」ことが必要だと思います。
このたび、Hyperloop の開発に参加して頑張っているイタリアの若手エンジニア(Dr. Andrea Santangelo)が日本に来るのを機会に、講演会を企画しました。
行き詰まった社会を感じる方々も多いと思いますが、これらの新しい解決の糸口になるように思います。
是非、多くの皆様のご参加を期待いたします。(和田 章)
コーディネーター:和田 章
パネリスト:Andrea Santangelo(アンドレア・サンタネグロ)
日時:2019年5月15日(水)18:00〜19:30
場所:日本大学理工学部駿河台校舎1号館2階121会議室
参加費:無料
案内状:PDF
参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「HL参加希望」とご明記ください。
«From High Speed Ground Transportation to the Hyperloop»
We live in an age of unbelievable technological progress. To a visitor from the distant past, this would surely seem like a utopian age. Yet in many areas of life, things don’t seem to have changed that much, and transportation is a woeful example of this. The roads are still lined with cars, the skies streaked with airliners. 20th century science fiction foresaw flying cars and teleporters; the 21st century settled for “Segways”. Dreams never die, however, and the fantasy of futuristic transportation is very much alive right now as exemplified by a concept called Hyperloop. While is not as mind-shattering as a teleporter or as fun as a personal jetpack. The Hyperloop could revolutionize mass transit, shortening travel times on land and reducing environmental damage in the process.
An educated guess from one of the first civil engineer involved in the design of a real-world Hyperloop infrastructure tries to give some direction between hype and pragmatic design.
日時:2019年7月5日(金)9:30~18:30
開催場所:東大寺総合文化センター (小ホール)(奈良市水門町 100 番地)
詳細:PDF
お申込み:http://www.jssc.or.jp/より、参加登録書をダウンロードの上、メール添付にて事前に お申し込みください。
問合せ先:日本鋼構造協会「日中韓-高層建築フォーラム」係
*A-Forumでは申し込み受け付けを行っておりません。
本フォーラムは、「CTBUH(Council on Tall Buildings and Urban Habitat):高層ビル・都市居住協議会」のアジアにおける活動の一環として、中国、韓国、日本の学識経験者、構造エンジニアが中心に参加している高層建築に関する国際会議です。2014 年に上海で開始されて以来、2015 年(ソウル)、2016 年(東京)、2017 年(重慶)、 2018 年(釜山)と、3カ国の持ち回りで毎年開催されており、今年で6回目を数えます。
今回のフォーラムでは、中国からはコンクリート充填鋼管構造、連結超高層、北京に昨年完成した「China Zun Tower」(528m)の先端施工技術等について、韓国からは制振デバイスを用いたレトロフィット、超高層メガブレース架構、合成コアウォールシステム等について、興味深い講演が予定されています。また、日本からはそれぞれに特徴のある制振技術を有する3件の超高層建築の設計・施工事例について発表が行われます。
各講演はいずれも超高層建築の最新技術に関するものであり、特に中国、韓国のエンジニア、研究者から直接説明を聞ける貴重な機会となりますので、多くの方にご参加いただけることを期待しています。