A-Forum e-mail magazine no.134 (12-06-2025)

こどもと建築まちづくり

神田順

こども基本法(2022年6月交付、2023年施行)が制定され、こども家庭庁(2023年4月)が生まれ、学会などでもこども環境が議論されることが多くなっている。仙田満の呼びかけによるこども環境学会が設立されたのは2003年であるが、今後の国や自治体の施策の展開にあたって、建築家や都市工学者の議論の積み重ねが生かされることを期待している。

こども環境学会がこどもを主体とするまちづくりを年次大会やシンポジウムで取り上げるのは当たり前としても、今年は、日本不動産学会の春季シンポジウムで、「こどもまちづくり」をテーマにして、話題提供やパネル討論が行われた。国のかけ声が、学会活動と社会実践をつなぐという意味でも大変興味深く聴いた。

現実に自治体がこどもの声を聞いて施策に展開しようとしている豊田市や焼津市の例、まちが子供を育むという試みの実践の横浜市の例など、いままでは建築まちづくりに、こどもの声が大きく影響する可能性については、議論されただけであったのが、これからは子供が主体として参画することで、建築やまちが変わるのではないかとの予感を持たせてくれた。 建築界は、人手不足と建築費の上昇に対応する難題をかかえていると言いながら、大手建設業はしっかり高収益を計上している。都市では依然として大規模再開発に、経済活性化を夢見ている人も少なくないが、そこに、こどもの声を取り入れるという視点は、ほとんどなかった。古い事例になるが、かつて大型回転ドアに挟まれて6歳の子供が死亡するという事故(2004年3月)があり、技術の展開と安全性について論じたこともあるが、おとな社会の経済合理性にこども環境の視点がなかったことは、建築計画としての基本のあり方に見落としがあったと言えるのかもしれない。

安全や防災というテーマは、おとなとこどもが一緒に語りやすいし、具体的な状況下で議論され、まちづくりに反映されるべきであろう。われわれは意外と「こども権利条約」(1994年批准)などもちゃんと理解していなかったりする。

公立小学校のプロポーザルなども、わが国では参加資格のところで実績のある建築設計事務所でないと応募もできないが、スイスでは、資格などないこどもでも参加できると聞いたことがある。住宅設計にあっても、果たしてどれだけの建築主や設計者が、こどもの生活のあり方の声を聞いているか。単に、平面図に子供部屋を入れて終わりということになっていないか。まして、自治体が施主の公園の計画ともなれば、こどもの声の反映なしに、設計されたり改修されたりしているのは、こどもの人権をないがしろにしているということではないか。住宅街における道路と家の関係性についても、同じことが言える。建築からの発信だけでは変わらないが、国のこども政策を実践するのは自治体である。建築界から自治体へのかかわりが求められる。

こども環境は、改めて建築やまちを考え直す大きなチャンスかもしれない。


第57回AFフォーラム「振動計測と耐震性」

日時:2025年06月17日(火)18:00~
コーディネータ:神田順
パネリスト:
濱本卓司(東京都市大学名誉教授):内藤多仲はこう考える
楠 浩一(東京大学教授):建築物の構造ヘルスモニタリング
五十嵐俊一(構造品質保証研究所):常時微動と耐震計算・耐震補強

お申込み(リンク先にて会場参加orZoom参加を選択してください。):https://ws.formzu.net/fgen/S72982294/

Youtube:https://youtu.be/CSlkiBiBYzc

既存構造物を長く活用するためには、その耐震性の評価が重要である。耐震診断手法については、すでに一般化している一方で、地盤の評価の課題、中小地震による被害発生、超高層建築の耐震性評価など、まだまだ課題は少なくない。いろいろな立場から、過去にAFフォーラムにおいても議論して来ている。

動的な性能評価を明らかにしようとすれば、常時微動が便利であり、もちろん、中小地震時の地震応答計測もより有効な情報を提供してくれる。どの程度まで使用性が確保されるか、どの限界を超えると人命に影響がでるかなどは、それらの計測結果からは、直接には判断できないものの、単に設計時の計算結果の情報ではわからない現実の情報が多く含まれておる。先人の知見は、今日の設計法、耐震性評価法に大きく取り込まれている。 濱本氏は、内藤多仲が中心となって建物の振動計測を行った膨大なデータを、内藤の記述とともに改めて取りまとめ「内藤多仲の構造診断書を読む」(早稲田大学出版部)として刊行した。

楠氏は、RC構造物を中心に、ヘルスモニタリングについての研究を進めており、広く成果を発表している。

五十嵐氏は、従来行われている地震動に対する時刻歴応答解析に基本的な問題点を指摘し、一方振動計測から耐震性を評価し、SRF工法を開発し、すでに実績として多くの耐震補強を実践している。

理論と現実、動的特性と耐震性、設計と診断、などそれぞれの切り口で議論を整理しておくことは、大きな意義があると考え、本フォーラムを企画する


防災学術連携体 幹事会

 市民へのメッセージ「2025年夏秋の気象災害に備えましょう」

日時:2025年6月25日(水)13時00分~14時15分
Youtube:https://youtu.be/CVd7wPh9dt0

第40回AB研「都市と建築に身体性を取り戻す」津川恵理

日時:2025年07月26日(土)14:00~
コーディネータ:布野修司+安藤正雄+斎藤公男
司会 山本至( itaru/taku/COL.)
「都市と建築に身体性を取り戻す」津川恵理(建築家/ALTEMY一級建築士事務所 代表取締役)
討論
コメンテーター:香月真大(SIA一級建築士事務所)

お申込み(リンク先にて会場参加orZoom参加を選択してください。):https://ws.formzu.net/dist/S42040957/
YouTube:https://youtu.be/EKE1clCX5-k
<主旨> 
昨年、日本建築学会の夜学校2024で山本至さんの企画司会の「国家イベントを考えるー大阪・関西万博ー」で津川恵理さんとご一緒した。津川さんはパネリストで、あんまり発言の機会はなかったのであるが、不思議な感性をしていると思えた。もう少し、その感性の拠り所を知りたく、山本至さんともども話を聞こうと思った。津川絵里さんの経歴は以下(布野修司)。

津川恵理(ALTEMY一級建築士事務所 代表取締役) 京都工芸繊維大学卒業、早稲田大学創造理工学術院修了。
文化庁新進芸術家海外研修員としてDiller Scofidio+ Renfro (NY)に勤務。 神戸市主催「さんきたアモーレ広場」デザインコンペ最優秀賞受賞をきっかけに、帰国しALTEMYを設立。
サンキタ広場(2021)、Spectra-Pass (2021)、まちの保育園 南青山(2024)、庭と織物 -The Shades of Shadows- @HOSOO GALLERY(2024)、渋谷公園通りデザインコンペ2040 最優秀賞受賞(2024),国土交通省都市景観大賞特別賞、土木学会デザイン賞優秀賞、東京藝術大学エメラルド賞、日本空間デザイン賞など受賞
神田順
まちの中の建築スケッチ 「常安寺五重塔ー天童の新しいランドマーク」/住まいマガジンびお


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