A-Forum e-mail magazine no.111 (07-14-2023)

関東大震火災100年、ますます重要な学協会連携

和田章

漢字「私」の旁の「ム」にも私の意味がある。「ハ」にはその形から分かるように抑える意味がある。自らを思い直してわかるように、人は基本的に我儘なものである。多くの人が集まる社会の平穏のために、個人の我儘は適度に抑えなければならない。「公」の文字はこの意味を表している。個人の領域を超えて集団や私企業、社会にも欲望がある。これを野放していると、社会の平穏は保たれず、このような処に大きな自然の災禍が襲った場合、被害はなおさら甚大になる。平常時から手綱を引いて社会の行き過ぎを抑制する必要がある。一般的には多くの法律が抑制の役割を担っていると思うが、欲望に推された社会の要請があると、法律は緩和されてしまう。確かに抑制だけに力を入れて、何にも取り組もうとしない社会は生きている意味がない。欲望と抑制の適度な釣り合いが重要であり、この定まりにくい釣り合いの線が、日本各地の村、まち、都市、社会を形作っていく。

大正時代の児童文芸雑誌「赤い鳥」を主宰していた鈴木三重吉は震災の2ヶ月後の同誌11月号に18ページにわたる「大震火災記」を書いている。最後に「これまで多くの人々は普段の平和に甘えて、だらけた考えに陥ち、お金の上でも間違った、無駄の費いへの多い生活をしていた点がどれだけあったか分かりません。今度の大變災を機会として、全ての人が根本に態度を改め直し、勤勉質實に、本当の合理的な生活をする習慣を固めあげなければならないと思ひます」と書いている。どこにもあることだが、この気持ちは年月が過ぎると薄らいでくる。

人のDNAは基本的に100年過ぎても進化はぜず、自然の災禍として大地震は必ず起こる。100年の間に我々の社会は、強い欲望と弱い抑制の中で大きく変わってきたが、必ずしも強靱になったとは言えない。最も大きな問題は人間の活動であり、産業や人口の集中により、埋立を進め、高い防潮堤、堤防を作り、山を削り谷を埋めて、ハザードマップの危険領域を広げつつ、人間活動の領域を危険性のあるところに広げてきたことにある。一つひとつの土木構造・建築の耐震性は向上したが、大都市に過密に建てられていること、電気・電子に支えられ、生活や交通、通信などを、過度に便利にしてきたことは、失うものを大きくしているということができ、大問題である。一方で地方の過疎化が進んでいることは、日本全体として間違った方向である。次の関東大震災は、100年前と同じ様相ではないだろうが、必ず起こるに違いない。

日本工学会は明治12年、工部大学校(東京大学工学部の前身)の土木、電信、機械、造家、化学、鉱山、冶金7学科の第1期卒業生23名により始められた。独立心の強い日本建築学会は早期に離れ、公共心の高い土木学会は最後まで残ったと言われている。防災減災だけが工学系の課題ではないが、大正から盛んになった学会の独立に問題があったように思う。

平成23年3月に起きた東日本大震災を受け、分散化した多くの学会や協会の密な交流や連携が必要であるとの大反省から、防災学術連携体の活動は始まった。この冊子には62の学協会からの寄稿、31名の学識会員の寄稿が纏められる。この10年余の間に学協会の間の交流と連携は進んでいるが、さらに密な連携が必要であり、場合によっては他学会の懐に入った真剣な議論も必要である。これらの活動が、社会と時代を俯瞰した理想的な欲望と抑制の新しい釣り合いを作っていくことを期待する。


第32回AB研究会 RC工事における『施工BIM』の最先端

日時:2023年7月15日 14時~17時
趣旨説明・司会(安藤正雄)
1. 「鉄筋工事における生産情報の連携」曽根 巨充(芝浦工業大学 SIT総合研究所)
2. 「国内外の鉄筋の自動加工機利用」大越 潤(芝浦工業大学大学院 地域環境システム専攻)
3.討論

BIMをBIMたらしめているのは、オープンかつモジュラーなプラットフォーム上で可能となった設計チームの協働(Inter-operability)である。ならば『施工BIM』とは何か?
『施工BIM』は日本独特の概念であり、その成立には、これまた日本独特のサプライチェインの編成が関係している。すなわち、日本のゼネコンは、特にRC工事において、実質的に躯体の専門工事業を兼ねているという特殊な事情がある。こうした事情のなか、『施工BIM』はいかにクローズド・システムがたどるガラパゴス化の桎梏を免れることができるのか。
今回は、この課題に挑み2022年度建築学会賞(論文)を受賞された曽根巨充さんに、まず「鉄筋工事における生産情報連携」についてお話を伺う。次いで、BIMと密接に関係する鉄筋の自動加工について、大越潤さんから世界の情勢と日本の課題を聞く。
残された時間を、『施工BIM』の未来について討論することに充てたい。

お申込み→https://ws.formzu.net/fgen/S42040957/

https://youtu.be/5lJIN2GhnkE


第48回AFフォーラム+KD研Part I 「空間と構造の交差点」―話題のプロジェクトやテクノロジーをめぐって 第10回
「どうする、テンション_。」

「ケーブル」には未開のポテンシャルが存在している。今回のフォーラムではそこに視線を向けながら、大小さまざまなプロジェクトを通してケーブル構造の魅力や課題をめぐる今日的な議論を深めたいと思います。


〈プログラム〉

開催日時:2023年07月22日(土)14:00~

テーマ:ケーブル構造の魅力と可能性をさぐる
コーディネーター:斎藤公男    司会:与那嶺仁志
14:00   趣旨説明 斎藤公男
14:10~ 話題提供
1) 「私にとってのテンション構造―期待と課題」鴛海 昂(10分)
2) 「ケーブルの新しい可能性を拓く」北 茂紀(20分)
3) 設計・施工の現場から「広島スタジアムをめぐって」(30分)
      ▹計画(基本構想・デザイン):松村正人
      ▹構造設計:島村高平
      ▹施工:小山聖史
4) 「ケーブル構造の現状と対応」田川英樹 (10分)
15:30 討論(Q&A)会場およびZoom参加者を交えて― モデレータ―:斎藤公男 
                    

お申込み→https://ws.formzu.net/dist/S72982294/
Youtube(お申し込みは不要です):https://youtu.be/BcnhdFYgFeE

日本学術会議学術フォーラム/第16回防災学術連携シンポジウム

関東大震災100年と防災減災科学

2023年7月8日に開催されました。

Youtube再生リスト
ご案内PDF防災学術連携体の62学協会による「1923年関東地震100年企画」冊子
基調講演PDF第1セッション地震・地震動PDF第2セッション都市計画PDF第3セッション災害医療PDF第4セッション情報・社会PDF
神田 順 まちの中の建築スケッチ 「世田谷美術館ー緑の公園と建築」/住まいマガジンびお

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