金田勝徳
長引く新型コロナ禍のなかにあって、人間社会の在り方が様々に変化し、その中のいくつかは、感染終息後もそのまま残ることが予測されている。中でもとりわけ社会に大きな影響を及ぼすのは、オンラインではないだろうか。
新型コロナ感染の拡大以降これまでの3年間を見ると、「3密」と呼ばれている密閉・密集・密接による感染防止を目的として広まったオンラインには、確かに一定の効果が見られている。感染者数のピークが過ぎて「3密」の規制が緩められると、その後直ぐに感染者が急激に増え、そのたびにピークが高くなる。いまだに繰り返されているこの様な状況からも、その効果の確かさが窺える。またオンラインは、移動に要する時間と費用を削減し、会場準備の手間や費用も少なく、地域に関係なく多くの人が集まれる等、都合の良い副産物も生み出している。
しかしその一方で、人間社会は簡単には取り戻せないものを手放しているのでは、との懸念が付きまとう。
霊長類学者の山際寿一博士*)は、人類の脳の大きさがゴリラの3倍に進化した理由を、人間が持つ自己を抑制してその場の雰囲気に合わせる能力が、他の霊長類に比べて圧倒的に高いことによるものとしている。つまり人類は言葉や文字を手にする前から、同じ場に集まり、体の動きを他者に同調させて、リズムに乗せながら全体を調和させる音楽的なコミュニケーション能力が高かったというのである。この説は現代においても、コンサートホールやスタジアムで、居合わせた見知らぬ人達が交歓している様子を目にすれば、容易に納得できる。
このことは、講演会や仕事の場でも同様であることは言うまでもない。定められた場所に行くまでに要する時間は、効率的ではないにしてもその時間が自由な思考に使えることで、様々な可能性を潜在させている。そして同じ目的で同じ場に人が集まり、そこで対話が生まれるという当たり前の日常が、社会生活にとって重要なことのように感じられる。少し大げさな言い方かもしれないが、こうしたことが、古代から人間社会が培ってきた文化であるとも言えるのではないか。
オンラインが、情報を共有するのに効率的で、これまでにない便利さを持っていることに間違いはない。しかしこれに頼り過ぎると、前述の様な移動、集会、対話の自由を手放してしまうことになりかねない。だとすると、このことによって人間社会は少なからずの影響を受け、代わりに何を手に入れるべきなのかが、次世代の課題になるように思える。
*)やまぎわ・じゅいち:ゴリラが専門の霊長類学者 京都大学前総長、日本学術会議前会長福島加津也(委員長)(東京都市大学教授/建築家)、陶器浩一(滋賀県立大学教授/構造家)、磯 達雄(建築ジャーナリスト)、堀越英嗣(芝浦工業大学名誉教授/建築家)
Archi-Neering Design AWARD 2022 (第3回AND賞)にご応募いただき有難うございました。
応募作品27点について2022年12月17日(土)に一次選考を行いました
受付NO 応募作品名
05 Stealth brace(ステルスブレース) 開放的な歴史的木造建物への耐震補強
11 ステンレスの新しい表情を持つ”HAGOROMO BENCH”
12 流山市立おおぐろの森中学校 ~サプライチェーンの構築から普遍的な技術の創造まで~
14 一松山 本興寺 本堂建替計画
15 出窓の塔居
16 Yamasen Japanese Restaurant ウガンダの地元技術と素材を用いた、ユーカリによる木造建築の実現
22 千光寺頂上展望台 PEAK ―山頂に浮かぶ水平と螺旋の構造―
23 WASTE PAVILION
24 グラウンドルーフ
26 斜と構
講師:マイケル コンスタンチノウ 先生 (ニューヨーク州立大 教授)
日時:2023年01月14日(土)9:30~
お申込み→https://forms.office.com/r/DXbB8z8SCy
★A-Forumでは受付を行っておりませんのでご注意ください。
米国ニューヨークで大地震が起きたという話は聞いたことがないと思います。しかし、世界では毎年のように大きな地震が起きています。我々に限らず、世界で活躍する構造設計者には耐震工学・耐震構造の知恵が必要です。ニューヨーク州立大学(バッファロ校)はニューヨークなどの東海岸で活躍するエンジニアのために最先端の耐震構造の教育をしています。
それも中国系、ルーマニア系、フランス系、ギリシャ系など、昔から著名な先生が多くおられます。
このたびはその中のお一人のマイケル・コンスタンチノウ先生に免震構造に関する講義をお願いしました。ギリシャの哲学者の子孫かも知れません。
こちらのファイルを見ていただき、ぜひお申し込みください。(和田 章)