アーキニアリング・デザイン(Archi‐Neering Design:AND)なる言葉とその理念が日本建築学会(AIJ)から初めて発せられたのは2007年。「建築学とデザイン力の融合」から提起された“AND”とは、ArchitectureとEngineering Designとの融合・触発・統合の有り様(プロセス)とその成果を意味している。ここから企画された「AND展」(2008年~)は全国9支部と海外(台湾、中国)、計20回の巡回展を実施した。古今東西の名作・傑作・話題作を集めた建築・構造模型(パネル)は200点をこえており、市民のみならず建築界においても、あらためて「建築」のもつ魅力と役割を強く共感・共有せしめたとの声が寄せられた。さらにANDの流れはA-Forumにおけるさまざまな活動やAND賞の設立へとつながっている。
21世紀もすでに四分の一を過ぎようとしている今日、20世紀の建築に比べ、最も影響を与えているものの一つは言うまでもなくコンピューターの進化と発展であろう。もはや、情報化時代ではなく情報化社会であり、デジタル技術やアルゴリズムの浸透スピードと多様性はとどまる処を知らない感がある。一方、時には方向性を疑う事や、過剰なエネルギーの浪費を促す危惧もあろう。BIMやAIはあくまで人間の思考や技術的判断、効率化のための手段(ツール)の一つ。それ以上の存在ではない、といった声も聞こえてくる。ITの可能性と課題についての議論は様々な分野で広がっている。
アーキニアリング・デザインの基本的テーマは建築(芸術)と構造(技術)の融合という、相対的ベクトルの有様や成果である。その主役はながらく人間力―建築家とエンジニア(構造家)とされてきたが、そこにツールを超えたコンピューターのパワーが介入し、三つ巴の様相が展開されているのが今日の状況といえよう。見方を変えれば情報化社会がANDの新しい展開を促しているようにも感じられる。
日本建築学会における2025年度の特別研究委員会「アーキニアリング・デザイン研究会」を立ち上げた背景の概要は以上述べた通りである。研究テーマを「情報化社会におけるアーキニアリング・デザインのゆくえ」とした。
今回のフォーラムは「研究会」の第一回キックオフ・ミーティングと共催する形で下記のように企画をした。併せてKD研(空間構造デザイン研究会)Part I 第15回の活動とも連携したい。(斎藤公男)
プログラム
プレゼンテーション(各30分)
① 「60年代の建築再評価 ―ブルータリズムの未来とは(仮)」 磯達雄
② 「それからの山本学治 ―70年代からの論考をめぐって(仮)」堀越英嗣
③ 「それからの建築・構造デザイン ―建築文化・特集(1990、1992)をふり返りながら(仮)」宇野求
プレゼンテーションの後、Q&Aと意見交換を行う