文明社会は多くの工業製品とこれらの組合せで成立っている。建築も構造も同様に非常に多くの工業製品が組立てられ、人々、社会と建主の要求する性能を発揮させる。建築の性能には色々あるが、「雨が漏れない」、「冷暖房が効く」などは日常的なことなので、建築を使い始めた時にすぐに確認ができる。
地震は数百年に一度のように極めて稀にしか起こらず、「大地震に耐える建築」と言っている設計者や施工者が生きている間に、実際の性能を知ることが出来ないことの方が多い。
大地震時に骨組の損傷を防ぎ、建築を続けて使うことのできる免震構造・制振構造は着実な進歩発展を続けている。ただし、日本には大地震時を想定して、実大の免震部材、制振部材の動力学的性能を試験し把握できる第三者の公的試験施設がなかった。多くの関係者の願いが叶い、本年3月に兵庫県三木市のE-Defenseの隣にE-Isolation(実大免震試験機)が公設民営方式で完成する。
2021年に内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP-2)「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」分野において、研究開発課題名「高精度荷重計測機構を有する動的試験機を活用した解析法の開発」が公募された。京都大学、東京工業大学、一般財団法人免震研究推進機構はこれに応募し、厳しい審査を受けて採択され、「大型動的試験機技術の設計・開発と施工を進めると同時に、竣工後には、検証用試験機を共同利用施設として活発な利用を推進する」ことになった。
A-Forumの皆様には、「この試験機の活用」、「免震構造・制振構造の更なる発展」、「次の大地震を乗り越えることのできる社会の構築」など、更なるご活躍に期待しております。
趣旨説明:和田 章
高精度実大動的試験機の概要と仕組:竹内徹
試験機構成要素の性能確認と試験機の性能:吉敷祥一