A-Forum e-mail magazine no.47(16-01-2018)

時代は変わるか

年が改まった。すでに、10年以上前になると思うが、同世代の仲間で話をしていて、納得したことがある。団塊の世代としては、何事も自分たちで切り開いて、やってきた感がある。社会もそれに対応すべく、学校も会社も受け入れ定員を増やし、応援してくれた。けっこう多く達成感も味わわせてもらった。我々世代の最大の欠陥は、上の世代からは、それなりに学んだのに、自分たちでやることに必死で、下の世代に伝える努力を怠ったのではないか、ということである。
A-Forumの存在も、世代間でのコミュニケーションを意図している。この10年で、自分としては、建築を取り巻く環境の窮屈さが日増しになっている状況をどのように打破できるのか、試行錯誤しているつもりはあるし、そのために、若い人たちと語る機会ももっている。しかし、50年前のわれわれの、危機感のような意識は、若い人たちの中には、感じられない。今の社会状況の中で、とても見えない。もっとも、今振り返るから、それが熱っぽい思いとして浮かぶのかもしれないが、単純に言葉で伝えきれないものを、もっと伝える努力が要るのだろう。
グローバル市場経済が、それを魅力と捉えて必死に頑張っている人間と、カネにとらわれることなく自然とのかかわりや手作業に価値を見出そうと頑張っている人間とが見える。うまく頑張れているときは良いが、うまく行かずに心身とも疲弊している人がいることも事実だ。それでも、なんとなく、頑張っている人たちに、時代が変わるきっかけを求めていることが見えるのだ。
かつて、宮城谷昌光の「晏子」を読んで、「戦いはむずかしい。敵将を過大評価しても過小評価してもいけない。が、どちらかといえば、過大評価しておいたほうが、こちらの傷は浅い・・・」を、目標安全性決定のための期待総費用最小化概念の応用に調和すると、拙著、耐震建築の考え方(1997)に書いたことがある。おなじ作家の近刊「呉漢」を読んで、「厳しい法は、世を匡すが、厳しすぎると、世を歪める」という言葉を見つけた。時代の変革期に、人が考えることは、2000年前も今も変わらない。
基準にとらわれ過ぎることで、多くの大企業が苦境に立っている。良いものをつくっている人たちを社会が応援し、素直に良いものとして認めて使い続けられる豊かさを、多くの人が感じ始めているのに、制度がそれにブレーキをかけるとしたら、そんな社会制度は過去のものと思わざるをえない。効能があるか疑わしいものでも、ボリュームを上げて、何度も公共の電波で叫ばれると、消費者はつい騙される。そんな時代は、いつまでも続かないと、皆、気づいているのだから、そろそろ時代は変わると確信する。

(J.K)


第21回AF-Forum ★パネリスト決まり次第お知らせいたします

シカゴ・ニューヨーク超高層視察報告会

 

コーディネーター:和田 章
パネリスト:未定
日時:2018年2月22日(木)17:30~19:30
場所:A-Forum
参加費:2000円(懇親会、資料代)

第二次世界大戦が終わって72 年になる。不思議なことだが、我々は戦勝国のアメリカの文明を憧れてここまで進んできたように思う。少年の頃から、ニューヨークのエンパイアステートビル、ロスアンゼルスの高速道路、スポーツカー、ジャズやポップスなどを追って欧米の学問を学んできた。我々の先輩も1964 年の東京オリンピック、1970 年の大阪万博などこの勢いの中で建設し、45m を超える超高層ビル、100m を超える超高層ビルを建設してきた。このころ、すでにニューヨークには世界貿易センタービル、シカゴにはシアーズタワーが竣工し、高層ビルの高さは500m に達していた。アメリカはいつも日本の一歩先を進んでいたように感じる。  

日本の超高層ビルでも高さが300m を超えると、耐震設計より耐風設計が主になる。日米の違いは、①支持地盤の強さと ② 風外力の強さ、さらにそのビルで仕事し、暮らす人々の ③ 揺れに対する如限度の違いであろう。地震動の強さはそれほど重要ではなくなる。

もしも日本に地震がなかったなら、または地震が設計上あまり関係ないなら、日本でもアメリカに負けない超高層ビルを設計し施工できなければならない。ドバイなどの中近東、中国、シンガポール、フィリピンなど東南アジアにも多くのプロジェクトが動いている。もちろん日本やアジアの超高層建築の設計上、耐震設計は重要技術である。

ここでもう一度アメリカに行き、超高層ビルの現状を肌で感じ、シカゴやニューヨークの構造技術者と構造形式、耐風設計、耐震設計に関して議論し、建設現場を見て、日本の我々を見直したい。

以上を趣旨として2017年12月上旬に動向調査に赴いた。このたびここにご報告させていただきます。

参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「21回フォーラム参加希望」とご明記ください。


A-Forum アーキテクト/ビルダー(「建築の設計と生産」)研究会

第8回 公共建築の設計者選定問題を考える01-守山中学校(滋賀)の2段階公開ヒヤリング方式と選定委員会=建設委員会方式をめぐって

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本シリーズは、建築を大きくは町場と野丁場、住宅と公共建築に分けて、その設計―生産の今日的問題を議論してきた。そうした中で、大きく浮上してきた問題として、デザインビルドにおける設計者の役割の問題、在来木造住宅のシステムと担い手の問題とともに、発注方式の問題がある。今回は、公共建築の発注方式、特にプロポーザル・コンペの問題に焦点を当てる。この設計コンペの問題については、2段階・公開ヒヤリング方式と設計者選定委員会=建設委員会方式(竣工まで解散しない)の提唱を軸に、様々な具体例をめぐってシリーズ化したい。
第6回「発注者」の責任―プロジェクト運営の多様化と設計の質において、森民夫前長岡市長(「公共発注の諸問題」)が指摘したのは、市町村自治体における企画力の問題である。そして、第5回「建築家の終焉!?―「箱」の産業から「場」の産業へ」では、第3回で再確認された建築家のあり方について、そもそも「箱」としての建築をつくってきた建築家の概念そのものが無効ではないか、場所をつくっていく、まちづくりに建築を拓いていく新しい職能が必要ではないか、という提起があった。A-Forum・AB研究会は、「コミュニティ・デザイン機構―市町村建築・まちづくり支援センター」あるいは「日本コミュニティ・デザイン・リーグ」(仮)といった任意団体の設立をも視野において、その構想を煮詰めていきたいと考える。

今回は、守山中学校(滋賀県)の設計者に選定された石原健也氏(デネフェス計画研究所・千葉工業大学)の応募から竣工に至る経緯についての報告をもとに手法などをめぐって議論したい。

 

コーディネーター:布野修司+安藤正雄+斎藤公男

(a)  主旨説明:公開ヒヤリング方式  布野修司(日本大学特任教授)
(b) 守山中学校の設計計画―応募から竣工まで(仮)  石原健也(デネフェス計画研究所、千葉工業大学教授) 、コメンテーター:森民夫(前長岡市長、筑波大学客員教授、近畿大学客員教授)
(C)懇談 「コミュニティ・デザイン機構―市町村建築・まちづくり支援センター」構想をめぐって

日時:平成30年2月3日(土)16:00〜19:00
場所:A-Forum
会費:2000円
共催:日本建築学会『建築討論』

参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
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