A-Forum e-mail magazine no.26 (13-04-2016)
東日本震災から5年
この年になると、過去を振り返り、元気だったころのことを書いたもので思い出したりすると、けっこう良いことを言っているなどと思ったりすることがある。東日本大震災からも、すでに5年を経過した。小学校1年生だった子が、もう中学生。中学生だった子は、大学生。一方、60過ぎの人間にとっては、あっという間でもある。
震災直後に、フェースブックを始め、震災関連のことをなるべく書止めようと思って、ノートに書いたものが180近くなり、読み返してみた。釜石市唐丹小白浜に支援に入ったこともあり、当初から、漁村に防潮堤はおかしいこと、住民の意見を汲むこと、災害危険地区指定が画一的でおかしいこと、を言って来ている。しかし今思えば、被災直後の住民の中で、そのような議論をすることが、無理であった。
仮設に5年住んだ方たちが、5割ほどは復興住宅に引っ越しただろうか。ようやく本来の生活が始まったということでもある。今こそ、住まい方、まちの構成、自然との付き合い方を、しっかり議論するときなのではと思う。しかし、すでに市議会も予算を通過していると、今さら変更はできない。防潮堤については、まだ1-2割ほどしか完成していないらしいので、予算も余っているのであろうに、他に回せないし、避難路整備や、傾斜地の擁壁などに関しては、すでに予算を使い切ったので、途中でも終わりと言うことのようである。
私ごとばかりで恐縮だが、当初の夢が5年にして近づいている。株式会社唐丹小白浜センターを昨年立ち上げ、この3月で予定の資金も集まり、事務所兼住宅も確認申請を出し、6月には着工の運びである。月に1度2度と通い、その度に地元の友達を増やし、新しい社会に住むことにもなるとの思いである。それも、建築を通してというのは、嬉しいことでもある。
新聞などでも、有名建築家が、いままでのような建築でなく、「もっと自然とどのように付き合うか」とか「経済指標だけではない豊かさを求めて」というような発言をしている。また、被害者の方々も登場して、当時のこと、そしてここまで頑張ったことを記事にしている。
建築を通しての東北日本の復興は、まさにこれからが大切な時期なのだと思う。さまざまな機会に、多くの方たちと議論して行きたい。
(J.K.)
「楽しくて誇らしいこと、辛くて忍ばねばならないこと」
企業でも、大学でも、社会でも、一人の仕事でも、スポーツでも芸術でも、プロジェクトが成功したり、優勝して、多くの人から賛美を浴びることがある。一方で、同じ人や組織、別の人や組織、別の時代、時が過ぎて、大きな事故を起こしたり、なかなか優勝できないなど、辛い日々を忍ばねばならないことがある。
これらのプロジェクトや出来事に直接的に関係していない場合、賞賛を浴びる話に実は私もそのプロジェクトには参加していたのだ、私の友人があれをやったのだなどと、日の当たる丘の上に多くの人々が集まってくる。一方で、プロジェクトが失敗したり、大きな事故を起こした場合、なかなか優勝できなくなった場合などは、私は直接何もしていなかった、よその出来事だなどと、かなり関係していたであろう人まで去っていき、日の当たらない谷に残された人達だけが辛い思いをすることになる。
東日本大震災を受けて、東北の多くのまちや都市が大きな津波に襲われ、原子力発電所は爆発を起こし、5年が過ぎても大変な状態は変わっていない。
政府や東京電力の技術者、関係する建設会社の人たちは大変な思いをして、廃炉に向けた仕事、汚染水の対策工事などを進めている。この発電所が作られた後に生まれた方々ばかりである。
我々は地震国に暮らし、東日本には津波が襲ってくることは知っていた。電気の仕組みが水に弱いことは子供でも知っている。日本の原子力発電所の耐震設計の指針はホームページに公開されていて誰でも見ることができるし、10年前でも見ることができた。女川の東北電力を救ったのは私だというなら、同じ指摘を東京電力に強く主張することがなぜできなかったのか、研究者も学者も経営者ももっとしっかりしなければならない。
我々は建築構造に関わり、耐震工学にも関わっている。起きてしまった大事故からの復興に、非力ではあるが応援したいと考えている。
4月23日に乃木坂の日本学術会議の講堂で、12時半から学術フォーラムを開催することになった。
テーマは
「原子力発電所事故後の廃炉への取組と汚染水対策」である、皆様のご参集を期待しています。(A.W.)
日本構造家倶楽部主催:岡部憲明講演会
可能性のデザインを巡って―エンジニアリングとの対話
【日時】 2016年4月28日(木) 17:00~18:30(開場16:30)
【定員】100名(当日先着順・入場無料)*お申し込み不要
【会場】 東京デザインセンター B2階「ガレリアホール」
東京都品川区東五反田2-25-19 TEL 03-3445-1121
【懇親会】 19:00~(一般3,000円 学生2,000円)
【お問い合わせ】
info@jsdclub.jp
第13回フォーラム開催決定
コーディネーター:金田勝徳
日時:2016年6月23日 17:00-19:00
場所:A-Forum お茶の水レモンⅡビル 5階
参加費:2000円 (懇親会、資料代)
★詳細決まり次第、別途お知らせいたします。