A-Forum e-mail magazine no.28 (13-06-2016)

素直な考え

東日本大震災の大津波による大被害は、東北に住んでおられる人々だけでなく、日本のすべての人々、もちろん建築・土木に関わる我々にも大きな衝撃を与えた。 その結果、国民の総力を挙げて岩手県から福島県までの美しい海岸は、高すぎる防潮堤に囲まれようとしている。しかし、人々から海が見えなくなり、海と陸の間に住んでいることを忘れさせ、景観は悪くなり、漁師の人たちにも不便になり、自然の循環も壊していく。コンクリートは無限の耐久性を持っているわけではないから、数百年後に次の大津波が来る頃には朽ちてしまっているかもしれない。

ここで行われていることが日本にとって正解というなら、日本中の沿岸をコンクリートの壁で覆わなくてはならなくなると、海岸工学に詳しい専門家に聞くと、定期的なメインテナンス、作り替えも含めて考えると、日本の国家予算では賄いきれない。日本の沿岸をコンクリートの壁で囲むことは非現実的だと言われる。

自然の中で暮らしている人々を考え、高台移転が良いか防潮堤が良いか、避難路を確保してほどほどの高さの防潮堤を作るか、大津波を長大な人工構造物で抑えることに道理はあるかなど、最も良い方法を素直に考える必要がある。しかし、大災害の後の復興予算が、これらの正しい判断、素直な判断を狂わせているように思う。いずれ、コンクリートは朽ちて、補修工事が必要になり、その時に、被災後のような莫大な予算は使えないであろう。

簡単なことではないが、高台に街の中心を移し、海岸近くは漁業に関わる人たちが昼間だけ集まるようにして欲しい。どうしても沿岸地区に住まねばならないなら、防潮堤はほどほどの高さに抑え、補助金の一部を用いて20階建てを超える高層住宅を、人口に合わせて数棟ほど建設することを考えて欲しい。低層部は太い柱を用いた壁のない骨組構造にすれば、地震に対しても安全であり、津波も骨組みの間を通り抜けることができる。

被災された地区の人々、市民、国民、自治体の政治、国の政治、それぞれが正しいと思い、進めていることに間違いがないか、もう一度考えて欲しい。

(AW)


AF-Forum【第13回】 どうする?構造設計


まだ終わらない熊本地震は、自然災害のはかり知れない手強さを改めて思い知らされるような地震である。兵庫県南部地震の際には都市災害の大きさが「未曽有」と言われ、東北地方太平洋沖地震では地震の規模と発生のメカニズムが「想定外」と言われた。そして熊本地震では地震発生の様相が「経験則から外れている」と言われている。 日本における地震学の先駆けとされている「地震予防調査会」の発足以来120年以上経った現在も、このように私たちは、地震の度に見られる新しい事象に驚かされ続けている。更に前回当A-Forumで話し合われた「長周期・長時間地震動」も、新たな課題として投げかけられている。構造設計者はこれら現代の科学技術の範囲を超えた課題と、それでも建築を設計し竣工させなければならい責務との狭間に立ちすくむ思いでいる。
そこで今回のForumでは、当面構造設計がどこまでの自然災害を想定すべきなのか、そして設計上の対応方法をどうすべきなのかについて論じあいたい。自然災害を正しく恐れ、正しい対処方法を知るために・・・。

コーディネーター: 金田勝徳(構造計画プラス・ワン)
パネリスト:古橋剛氏(日本大学)、金箱温春氏(金箱構造設計事務所)、福田孝晴氏(鹿島建設)  


日時:2016年6月23日(木) 17:00-19:00
場所:A-Forum お茶の水レモンⅡビル 5階
参加費:2000円 (懇親会、資料代)
参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第13回フォーラム参加希望」とご明記ください。

2016 年 日中韓-高層建築フォーラム
アジアの潮流・600m を超えた超々高層

テーマ: Innovative Motion Engineering in Tall Buildings
日 時: 2016 年 7 月 8 日(金)9:00~17:30
場 所: 東京工業大学大岡山キャンパス西9号館・ディジタル多目的ホール
 
本フォーラムは、「CTBUH」(高層ビルと都市居住協議会)のアジアでの活動の一環として、中国、韓国、日本の構造エンジニア、学識経験者を中心に開催している高層建築に関する国際フォーラムです。今回のフォーラムでは、中国からは、500~600m 級の超々高層建築の事例 2 件に加え、李国強教授(同済大学)より新開発のエネルギー吸収機構を有する制振システムについて、韓国からは、来年末完成予定の「ロッテワールドタワー」(555m・ソウル)の事例と、釜山で工事が進められている 500m 級の超高層 RC 建築に関する講演が予定されています。
日本からは、基調講演として、笠井和彦教授(東京工業大学)より、“東日本大震災”、“長周期・長時間地震動による高層建築の挙動”、“パッシブ制振”などのトピックを中心に「Performance of Seismic Protective Systems for Super-Tall Buildings and Their Contents」の講演があり、それに関連して既存超高層建築の制振改修の事例紹介が2件と、銀座のランドマークを継承し建設された「GINZA KABUKIZA」に関する講演を予定しています。
中国、韓国で活況を呈している 500~600m 級の超々高層建築に関する建築計画、構造設計、施工などの説明を実際の担当者から直接聞くことができる絶好の機会であり、日本では未だ実現していないこの規模の超々高層建築に興味を持つ日本国内のエンジニア、学識経験者等の方に一人でも多く参加していただけることを期待します。

詳細はこちら、申し込み用紙はこちら ※A-Forumでは申し込み受付を行っておりませんのでご注意ください。