第19回
空間と構造の交差点


コーディネーター:斎藤公男
パネリスト:小澤雄樹(芝浦工業大学)、小堀哲夫(建築家)、萩生田秀之(構造家)
日時:2017年10月2日(月)17:30~19:30
場所:A-Forum
参加費:2000円(懇親会、資料代)

参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「19回フォーラム参加希望」とご明記ください。


建築織物論―二つのベクトル

「人間の歴史は、ある意味ではテクノロジーの歴史でもある」と、かつてノーマン・フォスターは語ったことがある。この言葉を建築の世界に当てはめれば、「建築の歴史とは、ある面では構造技術の歴史である」となろう。特に柱のない空間(Column―Free Space)をいかに堅固につくるかは、古代より人類の夢であった。人がともに住み、祈り、祝い、楽しむ空間。あるいは人と物の流れをさばき、納める空間。こうした広がりのある横の空間(大スパン建築)の歴史は、都市の経済活動や高密度な住生活の必要から発展した縦の空間(重層建築)に比べ、はるかに古く、そして長い。 大スパン建築の歴史は、たとえていえば「織物」といえないだろうか。Toolとしての構造技術、つまり材料、工法、構法、理論を縦糸とするならば、建築形態つまり造形性や審美性は横糸となる。縦糸の特徴は連続性と普遍性。その糸の数は時とともに増大し、織物=建築の幅を広くするとともに、各々の糸は次第に強靭に鍛えられ、磨きをかけられていく。一方、その時代の感性によって揺れ動く横糸は、時代の移ろいとともにその色も太さも変化する。時代を特徴づける色彩の変化によって、織物は美しい歴史の縞模様を描き続けていくのである。

建築空間を成立させるもの、あるいは演出するのは構造であり、構造体のみによっても、もうひとつの空間が現れる。建築空間のデザインがあるなら、構造空間のデザインがあるだろうと考える。この時、本来安全性と経済性を基本とする構造技術にとって、“構造”と“デザイン”の新しい視点が生まれる。一般的にいえば、各々の意味する内容は限りなく広いわけだが、両者の接点を見いだそうとするつぎの言葉の対比は興味深い。

A 構造とデザイン

B 構造デザイン

再び“建築織物論”をもちだせば、Aにおける構造とは縦糸(Tool)、デザインとは横糸(Demand)であり、Bの視点は両者の織り方、つまり協働の有様を問題にする。「空間と構造」の主題は結局、この二つの視点のなかに求められ、いつの時代にも問われ続けていく普遍的なテーマといえよう。
(「空間 構造 物語」2003、彰国社、p15より)
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今回のフォーラムでは、上記テーマに関連深い業績をあげられた3人のパネリストをお招きした。いずれも今年度の各賞受賞者であり、そのお祝いもかねたフォーラムを企画しましたので奮ってご参加ください。

小澤雄樹:「20世紀を築いた構造家達」(2014、オーム社)で日本建築学会著作賞

小堀哲夫:「ROGIC」で日本建築学会賞(作品)、JIA大賞、aaca賞など

萩生田秀之:「豊洲ランニング・センター」で喜多村淳と共に日本構造デザイン賞