2005年11月、不当に改ざんされた構造計算書によって設計された集合住宅やホテルの存在が明るみにされた。1人の構造設計者が引き起こしたこの事件によって、日本の社会が建築物の安全性をめぐって大混乱に陥った。それまで建築基準法を遵守していれば建築は安全と考えていた社会は、寄って立つべき法基準そのものを誤魔化した違法建築の出現に驚き憤怒し、不安に脅えた。その結果、構造設計者はコンクリートのわずかなヘアークラックを見つけては動揺する集合住宅住民の対応に追われ、その一方で、自分達が行ってきたこれまでの仕事の見直しに、緊迫した日々を送ることとなった
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当然のことながら、この事件の前後で構造設計界の様相も一変した。当時、構造設計実務者は、性能規定化、建築確認・検査の民間開放等を主な改正点とした2000年改正基準法にも慣れはじめて、それなりに自由な構造設計を手元に引き寄せつつあることを感じていた。その矢先にこの事件が起こり、構造設計に向ける社会の目が一挙に厳しくなった。それを受けて、事件の再発防止のための法の厳格化を目指した法改正が2007年に施行され、一挙に構造設計を取り巻く環境がこれまでになく不自由になった。またこの法の施行によって建築確認制度の運用に支障をきたし、そのことがその年の建設着工床面積を激減させ、「建基法不況」と呼ばれる社会問題にまで発展した。
事件から間もなく10年が過ぎようとしている。今回のA-Forumではこの事件を改めて振り返り、その後の構造設計がどのように変わり、さらに次に目指すべきことは何かを考えてみたい。
こうしたことを趣旨とした次回のA-Forumを以下の様に開催します。パネリストに法改正、適判、設計実務に深く関わってきた下記の3人の方々をお迎えして、それぞれの立場からお話を頂き、当日ご出席の皆様と意見交換をしたいと考えています。その後はいつもの通り軽食をとりながらの懇談会を予定しています。御意見をお持ちの方がたくさんおられると思います。皆様の振るってのご参加をお待ちしております。
第八回フォーラム報告は
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