★第2回フォーラム開催決定★
テーマ:使える超高層が壊されるのは何故
日時:6月21日(土)16:00~18:00
場所:A-Forum レモンⅡビル5階
フォーラム終了後懇親会(会費2000円)
コーディネータ:和田 章(東京工業大学名誉教授)
パ ネ リ ス ト:岩井 光男(三菱地所設計元副社長)
中川 雅之(日本大学経済学部教授)
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A-Forum 第二回「使える超高層が壊されるのは何故」報告 和田 章
6月20日(土曜日)午後4時から7時に開催された表記の議論へのご参加、ありがとうございました。特に、岩井光男先生、中川雅之先生には次々に壊される超高層ビルについて感じる我々の悩みに応える素晴らしい資料とご発表を戴きありがとうございました。
岩井先生からは明治の文明開化から日本の都市の中心を担ってきた三菱地所の丸の内の事務所建築の変遷のお話を基本に、数十年の間には人々の仕事の仕方や生活、活動に変化があり、国際的にも国内的にも新しいまちや建築への要求や競争があり、ただ古い建物を温存していくわけには行かない。パリやロンドンのように、丸の内を高さ31mの事務所街として残す選択はなかった。例えば丸ビルの保存運動もあったが、耐震性の不足は徹底的な取り壊しの理由になったなどのお話があった。
中川先生からは、金融などから生む利益と比べて、建築を建てて保持していることに資金運用として優位性がなければならないという経済学の立場から、建築が建てなおされていく仕組みを分かりやすく説明していただいた。社会の要求の変化に合わせて新築される建物やまちがあるため、年々古くなっていく建築は年々生む価値を減らしていくことになる。さらに将来の利益を今に換算するなどの評価をして、取り壊しまでに生む全利益を計算することができる。この理論により、建て直しの費用を組み入れても新しい建築に建て直したほうが、生む総利益が大きくなる建て替え時期が計算できる。これはこの建築の物理的な寿命などとは関係ない。さらに、大きな地震があり既存の建築では耐震性に疑問が起きる、古い建築はエネルギー効率が悪い、都心の容積率が1000%から1300%に変化する、事務所ビル群の中に商業的要素を組み込むべき、2020年の東京オリンピック開催などの、外的イベントがあると、上記の計算は大きな影響を受け、建築の建て直しの勢いが増してくる。住宅についても事務所建築についても、一般の人々が建築の歴史的、文化的な価値を正しく知っていないことも、建築が壊されてしまう大きな原因になっている、などのお話があった。
ご講演のあと1時間半ほどの質疑討論が盛んに行われた。
以下に主な議論を列記する。
1. 国、国内、多くの都市、多くの街区などの間での競争がある。
2. 米国のニューヨークではエンパイアステートビル、クライスラービルなどが80年も現存しているが何故か。
3. 建築が生む利益が年々低下しにくい建築やまちをつくる方法はないのか。
4. 一般市民に、建築の意味、まちの意味、耐久性などの情報が正しく伝わっていないことが問題である。
5. 60年、100年の物理的な耐久性を目指して建てた建築を壊すのは無駄である
6. 新築のときに寿命を考慮した設計を行うことは可能か。
7. 人々の要求の変化があっても、多くのオーナーで建て直さないと決めることはできないか。カルテルと言われてしまう。
8. ヨーロッパのように外観や骨組を残して、内部だけを新しくして社会の変化に追随する方法もあり得る。
9. 建て直すことによる、資源の無駄使い、CO2の排出などがいずれ問題となる。
10. 壊して作る繰り返しをしているため、日本の事務所はなかなか豊かにならない。
11. 大都市の建築は賑やかに使われており問題はないが、地方の大きな建築の老朽化が放置されていることのほうが大問題である。
12. 建設により排出されるCO2と運用のために排出されるCO2は半々であり、古い設備の建築が長く使われることにも問題がある。
13. 大都市集中と大地震時の災害の甚大化の問題は考慮されるべきである。
14. アトランタや中国や東南アジアなどのスラム街、東京の木造住宅密集地などのような脆弱なまちを、高層化して安全なまちに変換していくことは必要である。
15. 権利者の多いまちの再開発には30年以上の年月が必要であり、このために必要な資金は建設費を上回ることもあり、簡単ではない。
16. 結論として、欲望と抑制の問題と言える
(和田 章)
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