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HOME >イベント>第2回フォーラム

★第2回フォーラム開催決定★
テーマ:使える超高層が壊されるのは何故
日時:6月21日(土)16:00~18:00
場所:A-Forum レモンⅡビル5階
フォーラム終了後懇親会(会費2000円)

コーディネータ:和田 章(東京工業大学名誉教授)
パ ネ リ ス ト:岩井 光男(三菱地所設計元副社長)、中川 雅之(日本大学経済学部教授)


  • 重要な質疑、主張、考え方、問題点などについては寄せられた意見


    神田 順 (東京大学名誉教授、日本大学特任教授)

    私の印象は、われわれにとっては超高層だが、経済社会にとっては、1つの建物に過ぎないということだと、改めて思いました。建物の価値が、社会に伝わっていない、このことを建築の専門家としてどのように考えるかですね。構造は空間の基本構成を作っているわけで、目新しさや奇抜さ(それらも価値の一つであはあるが)ということではない、生活や仕事の場の気持ち良さや快適さを、所有者や利用者が、意識して語れることが必要で、そのような機会を、われわれが提供する必要もあると思いました。構造技術者だけが理解する構造的な魅力だけで、長く使われる理由にはならないことも、よく考えれば当たり前かもしれません。
    しかし、今は、金額に換算できる経済的価値のみで、決まってしまうことによる問題を、もう少し顕在化することも必要だと思います。岩井さんが紹介してくれたように、超高層に限っても、その価値をどう使うか、まだまだ議論の余地があるようにも思いました。

    松永 直美 (レモン画翆)

    JR御茶ノ水駅は、建築家・元日本建築学会会長の伊藤滋(1898-1971)が駅の近代化の一環として手掛けたインターナショナル・スタイルの駅舎である。伊藤の代表作品である交通博物館、万世橋駅はすでに取り壊されているが、伊藤の補佐役である土橋長俊(コルビジェに師事)が設計した御茶ノ水丸ノ内線駅舎は保存され、JR駅舎との調和を保っている。両駅舎とも建築物が主張されすぎることなく、神田川の土手の緑とよく馴染んでいる。現在、JRは地上三階建て、ガラス張りの駅舎(店舗、バリアフリー施設)建設を地域住民の合意なしに計画している。  今回、第二回フォーラムに参加し、神田駿河台地区まちづくり協議会のメンバーである私は、地域の文化を守るうえでの重要なキーワードをいただくことが出来た。1)経済の論理 マーケットが一番正しい、2)情報伝達が必要、3) 議会統制によらない、PPP(Private Public Partnership)による開発などである。  経済至上主義のなかで、文化的に貴重な資産を残して行くためには、様々な業界に属する人々、また一般の多くの人々に対して、我々が持っている情報を難易度の低いかたちで、出来るだけ多く提供していかなければならない、という重要性に気づかされた。また、議会統制によらない民間の組織が欧米のように力を付けていく必要があるだろう。但し、米国のように富裕層に特化された居住区の建設などの問題点はある。  マクロ的に見ると、建築マーケットは、政府の方針変更等により変動する。そこで保存、再生すべき建物については、文化的な価値付けを行い、東京駅の事例のように空中権の付与等の特例をつくるなどの制度の構築が必要であると考える。  最後になりますが、異分野の方のお話はとても刺激的で、自分の考え方の範囲が広がり、物事を多面的に見ることができ、問題解決の為の糸口が容易に見出される可能性を感じました。

    安部 重孝 (建築技術支援協会―サーツ) 

    これまで、壊され、建替えが行われた、都心部の超高層建物について、将来の不動産収益向上を目的とし、地域の活性化にも貢献していることは、岩井先生の丸の内地区の説明、中川先生のオフイスビルの経済活動原理の説明及びこのフオーラムの議論で理解できた。
    超高層建物が壊され、建替えの要因として、構造体が造る空間構成―階高、スパン等について、今後も要求が高まることは否定できないとの、岩井先生の説明があり、スケルトンインフイルの考え方でリニューアルが行われ、壊されない、建替えられない、との希望は達成されるとはいえないこともありうるようだ。
    しかし、集合住宅でスケルトンインフイルが提唱され、近年数多く建設されている超高層集合住宅は、その方向で壊されない、建替えられない活用を期待したい。 また、超高層ではないが、多くの問題を抱える中高層マンションは、評価手法を確立し、大規模改修・リニューアルにより価値を高め、流通市場が活性化することが期待されている。そして、北九州・岡山・長野等地方都市、東京でも中古ビルが多い日本橋・室町等、空き建物を、利用しようとする熱意と構想力で克服し、まちづくり、都市再生の実績が見られる。伝統建築についても再生、まちづくりへの貢献が伝えられている。
    超高層建物についても、霞が関ビルは、リニューアルで再生したが、壊されない、建替えられない、利用の構想力が必要で、再生評価の仕組みを作り、CO2削減への貢献を基本とし、リニューアルの成果・実績等、利用の情報・知識を不動産事業者、更に一般の人々に知らせる努力が必要であり、このフオーラムでの継続的議論と、社会への発信が望まれる。

    海外・西欧等では、旧市街・新市街の区分、市街地における建物外観規制による建物保存がなされている。日本でも観光を主目的とした旧市街地保存・再生が行われているが、これらに対応する大きな枠組みが必要であり、このフオーラムからの発信を期待したい。