未来へのメッセージとは
2013年5月、国立近現代建築資料館の開館記念特別展示として「建築資料にみる東京オリンピック―1964年国立競技場から2020年新国立競技場へ」が企画された。
「代々木」からちょうど50年。手書きの図面、手廻しの計算機、実験や施工の風景といった往時の記録から、「革新の建築」がテクノロジーの成熟度ではなく人間の知力や情熱から生まれることをあらためて確信したのは筆者ひとりではなかろう。驚きをもって若い人々にも感銘を与えたに違いない。かつて日本のシンボルとして世界に飛翔した名建築と同様に、新国立競技場もまた21世紀の日本の向かうべき姿をアピールして欲しい。東京オリンピック2020を夢と誇りをもって迎えたいと思う誰もがそう願っている。やればできたということでなく、どのように実現したか。その筋道を辿れる「物語」が望まれる。本書の表紙に「代々木」が掲げられた由縁でもある。
東京オリンピック2020に向かう多くのプロジェクトは、東北の復興や原子力問題、首都の再編、防災都市の構築や環境・景観問題と切り離すことはできない。いままでも、そしてこれからも、日本が世界に誇れる言葉はMOTTAINAIとOMOTENASHI。その精神―Less with More はアーキニアリング・デザインの世界にも共有されている。
何十年後か、今日我々が行っている日々の活動は「新しい、建築のみかた」の視点からどのように評価されるだろうか。それを自問しながら今を生きたい。
(「新しい建築のみかた」(最新版)”あとがき”より、2014年7月 出版予定)
(斎藤公男=MS)