杭施工問題について


   事件が報じられて、すでに一か月になろうとしている。建築構造にかかわる技術的、倫理的問題が、思い返すだけでも、朱鷺メッセの歩道橋、姉歯による構造計算書偽装、東洋ゴムの実験データ偽装、そして今回は、旭化成建材のデータ偽装。建築学会が、かつて「信頼できる建築界を」というスローガンを掲げたのもむなしい。
   構造技術者の立場からすると、いずれも、それがどの程度の安全性の低下になっているかを明らかにした上で、議論してほしいと、毎回のように思うし、メディアにも訴えるのであるが、社会は、傷物の建築の資産価値を認めない。そのたびに、国は、国民が望むという立場で、規制を強化する。規制強化は、書類の増大を生み、構造技術者は、以前にも増して作業量が増えることで、創造的な設計のための時間を割かれる。
   今回の事件については、杭施工担当者も、元請けの工事管理者も、そして構造設計者も、記録を残すことを甘く見ていたということと推察できる。現場によっては、杭の施工管理は、1本ずつしっかりやるのが当たり前でなくてはいけないので、工事管理者も設計監理者も、顔を出せないということなのだろうか?旭化成建材を悪者にして、損害は、親会社が補償するからという筋書きが早々と登場し、社会的には、一層いい加減な施工を印象付け、人々の苛立ちを増長させているように思える。
   これは、技術倫理の問題であるが、コミュニケーションの問題として改善に向けうるという趣旨を書いてみたい。アメリカのチャレンジャー事故が工学倫理の教材でよく使われるが、そこでも、物理学者のファインマンは、さまざまな部署の人間に個別に質問して、低温化でのOリングの破断可能性の確率を聴いたところ、人によって大きく隔たっていたという。それならば、もっと事前に意思疎通を図ることで、事故が防ぎえたのではないかということだ。 実際に地盤に孔をあけ、杭を打設した人間は、機械を運転する経験から支持地盤に到達したかどうかはわかるはずと言われる。となると、記録を残しておくことに対する意識が弱くなる。工事管理者は、技術は下請け任せという実態となると、あまり出る幕はないと思っているかもしれない。設計者は、なるべくコスト削減の要請を受けて、地盤調査のためのボーリング箇所数を十分な数、行わなかった。それでも、杭施工の段階で、ちゃんと対応してくれるだろうと思っていたのではないか。どのようにすれば、品質の良い杭ができるかを、それぞれの部署が十分に意思を通わせることが必要。
   いずれの部署も、ある意味で、無責任体制ということになるが、企業としてそのような状況を放置しておいた責任は大きい。杭の品質を確保するために、どれだけのことをしなくてはいけないのか、構造設計者や元請けとしては、簡単なことだと思う。工事の判断能力のある人間の判断を、どこまで尊重できるかだ。1つ1つ丁寧に立会い検査すること。結果を記録として残すことにつきる。地盤によって、工法によっては、全数ではなく、一部、省略できる場合もあるかと思う。その判断を、根拠をもって示すことだ。 基礎も含めて、建築構造の性能が適切であるかの判断は、技術者にしかできない。その技術者の声が、相変わらず聞こえないのが、悲しい。 
(JK)


アーキニアリング・デザイン凱旋展2015in日本大学CST

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☆模型で楽しむ世界の建築
2015/11/16(月)-2016/1/27(水) 10:00~17:00  休館日:日・祝・12/5・12/23-1/8 入場無料
会場:日本大学理工学部お茶の水校舎1・2階ロビー(千代田区神田駿河台1-6)


☆フォーラム「芸術と技術―その融合をめざして」
日時:2015年11月25日(水)17:00~19:00 参加費:無料
会場:日本大学理工学部駿河台1号館6階CSTホール(東京都千代田区神田駿河台1-8-14)
申込み:Web申込み こちらからお申込みください。
懇親会:19:00~ 会場:1号館2階カフェテリア(会費:2,000円)※懇親会の申込みは、フォーラム申込みの際に通信欄に出欠をご記入ください。



最終回・第11回連続シンポジウム(防災学術連携体設立記念 )
「巨大災害から生命と国土を護る - 三十学会からの発信 -」
「防災学術連携体の設立と東日本大震災の総合対応の継承」


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日 時:平成28年1月9日(土曜日)13:00~17:30
会 場:日本学術会議講堂(東京都港区六本木七丁目二十二番地三十四号)→MAP
主 催:日本学術会議 東日本大震災の総合対応に関する学協会連絡会