A-Forum e-mail magazine no.145 (10-06-2026)

「光と影と闇」 ―「香川」の保存・再生と解体をめぐって

斎藤公男

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2026年4月15日、朝日新聞の一面に大きな活字と写真が掲載された。「64年の丹下建築、解体か再生か 閉鎖中の旧香川県立体育館、改修計画・活用案採用に至らず」と。要旨はこうだ。建築家・丹下健三(1913-2005)が設計した世界的に有名なこの建物が今存亡の危機にある。建築保全のモデルとなりそうな民間の再生案(公費を一切使わずに、耐震改修費・改造・運営費を担保する提案)が出ている中にあっても、解体の方針は変わらず、10日、植栽を撤去する作業が始まった。県が主張する第一の理由は「倒壊・崩壊の危険性」が迫っていること。5月には体育館の内装、9月頃には建築本体の解体に着手し、その姿は消えるという。

これまで国内外を問わず多くの声が寄せられてきた。2026年2月16日には第3回「みんなの建築大賞」の特別賞が「旧香川県立体育館再生計画」に授与された。5月16日からは恒例の東京建築祭が開催。そうした一般の人達の建築熱の高まりを感じる一方で、宮沢洋(BUNGA NET)は「『香川』では対極のような出来事が進んでいます」と発した(5/22)。「建築界の権威たちがなめられている」※1という一文には強い言葉が続く。「原告(再生委員会)が口頭弁論に先立つ1月13日に提出した証拠保全申立書を読むと、建築関係者は『これをスルーしたのか』と怒りが込み上げてくると思う。(略)『本当に読んでるの?』『読んでなんとも思わなかったの?』と問い詰めたくなる」と。

※1「証拠保全」無視で進む旧香川県立体育館の解体工事、建築界はなめられている? BUNGA NET 、2026/5/11

Episode 1 「香川」と私

思い起こせば私が旧香川県立体育館(「香川」)の保存問題にかかわり始めたのは2014年頃からであろうか。2012年の「耐震診断」の折に調査・確認されたのが吊屋根の老朽化。ケーブル等の改修について業者から相談を受けたが、その困難さは容易に想像された。耐震改修と屋根構造の対応は別の問題だ。一緒に考えたら入札不調は当然であり、報われない県の努力と悩みが思われた。改修工事の入札は3回行われたが全て不調に終わり、2014年9月に「香川」は閉館となった。

2021年9月8日、A-Forumで立ち上げた「空間構造デザイン研究会(KD研)」の特別企画として「「船の体育館」のいままでとこれから―再現計画から再生計画―」を、高松在中の建築家・河西範幸(一般社団法人 船の体育館 再生の会)らと共に行った。このフォーラムはYouTubeでライブ配信され、現在もアーカイブを視聴することができる。この時の議論の成果は、その直後のサウンディング型調査への応募案として提示できたものと考えている。ここでは現状の吊屋根(PC板含む)は全て撤去し、新しいケーブルネットに包まれた半屋外的なスポーツ・イベント空間を創出しようとしている。

2024年8月、岡本剛の自邸から発見された設計図展「沈みゆく船からの手紙―旧香川県立体育館 発見された設計図展」※2が開催された。この頃、解体費(約10億円)も公表された。そこから動き出したという建築家・長田慶太らが立ち上げた「旧香川県立体育館再生委員会」の活動を知ったのはその後だったろうか。

左:「新設されるケーブルネットが創出するイベント空間の提案」サウンディング型市場調査への応募案 ©河西範幸(2021)、右:「沈みゆく船からの手紙」展・フライヤー(2024)
私には「香川」に対する特別な感慨が2つあった。ひとつは自身初めての構造計画の体験ともいえる「下関市体育館」(1963、「下関」)が「香川」と全く同じ時期に設計・施工され、さらに「岩手県営体育館」(1967、「岩手」)のケーブルネット吊屋根の設計・施工は「香川」の実績を足掛かりとして実現された。「香川」は私にとって「空間構造の道」を拓いてくれた道標ともいえる存在である。
いまひとつは2024年に完成した「あなぶきアリーナ香川(香川県立アリーナ)」。プロポーザルコンペの審査員を務め、コンペ後の基本構想の段階では県からの依頼を受けて設計者(設計:SANAA、構造:佐々木睦朗)と構造デザインについての意見交換の場面を持つことができた。旧体育館(「香川」)が閉鎖されていた頃であったが、「新アリーナ」の完成と引き換えに「香川」が解体されては大変だ。ひたすら保存・再生への議論・検討が進むことを祈った日々を思い出す。

左:1960年代の「4つのprojects」の相関、右:岩手県営体育館(1967)
※2会期:2024年8月21日〜9月17日(8/25までに予定が延長された)/会場:「高松オルネ」4階アートギャラリー/主催:一般社団法人 船の体育館再生の会、愛知工業大学・東海大学研究室

Episode 2 保存と解体をめぐるこれまでの経緯

前述の朝日新聞では2人の識者(史家)が発した言葉も紹介されている。「建築の保存は使い続けていく方向にしないと成り立たない時代になっている。一定の改修を前提とした、今回の香川のような例をモデルケースとして、国や自治体は文化政策として応援すべきだ(後藤治)」。「戦後復興、民主主義の象徴である50年代の県庁舎東館と同様、五輪と同じ64年の体育館は非常に貴重。今回の公費を使わない提案はモデルになるもので、建築文化県・香川が打ち出せれば、かっこいい。逆に解体するなら、本当に汚点だと思う(松隈洋)」。

今日の状況に至った道すじは一体どんなものであったのか。県の対応と市民活動の経緯を略記してみよう。
香川県の動き 保存・再生への活動
1963 香川県立体育館竣工
1998 耐震性能調査(丹下事務所→青木繁研究室)
2012 耐震改修実施設計
→丹下都市建築設計に依頼
→「吊屋根」の調査(老朽化の発覚)
2014 2月 3回目の入札不調(予定価格8億1432万円)→耐震改修を断念→9月末 閉館
2015 5月 JIA・講演会(松隈洋「20世紀建築の文化的価値の重要性」)
2017 ワールド・モニュメント財団2018年版危機遺産リストに選出。緊急に保存・修復が求められる。
2021 8月~10月 サウンディング型市場調査→9件の応募 9月 KD研「「船の体育館」(旧香川県立体育館)のいままでとこれから―再現計画から再生計画―」開催
・サウンディング型市場調査への参加―作品応募
2022 5月 「絶体絶命 船の体育館展 ~もう一つの丹下建築~」再生計画/WS/JIAシンポジウム「船の体育館の存続問題 」
2024 改修計画が断念され完全閉館 8月 「沈みゆく船からの手紙―旧香川県立体育館 発見された設計図展」
12月 植田真紀議員(立憲・市民派ネット)による一般質問→有識者会議の設立提案→反応なし
2025 2月 県議会で解体が議決(解体費約10億円)

12月 県は入札により解体工事・請負業者、合田工務店と8億4700万円で請負契約
6月 旧香川県立体育館再生委員会設立→保存・再生の可能性/2つの計画案
7月 再生委員会より「買収等による保存利活用に関する意向表明書」を提出
8月 JIA本部より県知事および県議会に「保存活用についての要望書」を提出
9月5日 再生委員会より「住民監査請求書」を提出
11月5日 「住民監査請求書」が棄却(通達)
2026 4月10日 解体工事着手(外構)

Episode 3 住民監査請求について

旧香川県立体育館再生委員会は、2025年9月5日付で住民監査請求を行った。請求人からの請求要旨とそれに対する監査委員の見解はどのような内容だったのか。以下に略記してみたい。

(1)解体工事に関わる一切の公金の支出をしてはならない
イ)合理性のある代替案の検討が行われていないこと。
再生員会から公金の支出を要しない「再生案」が具体的に提出され、解体決定時とは基礎事情(議論の土俵)が大きく変化している。また「サウンディング型市場調査」の期間(2か月)は短すぎ、審査過程も不透明である。
→事業主体や事業計画が明確でなく、「再生案」は具体性に欠ける。
→「市場調査」は県が利活用するための提案として求めたものではなく、提案者の意見を聴くためのもの。面談も行っており、過程は不透明とは言えない。
ロ)安全性に関する県の診断が具体的・客観的な技術的裏付けを欠いていること。
2012年の耐震診断は簡易モデルを用いており、その診断結果を曲解し、恣意的な見解に基づき「解体」を判断している。
→「耐震改修促進法」(1995)に基づく当時の耐震診断報告書では、法令上、「耐震性能に問題ありと判断する」とされ、倒壊や崩壊の危険性があるとの結果を示している。改めて調査を行う必要はない。
ハ)文化的・歴史的価値を不当に軽視していること。
国際的にも高い評価を受けている丹下健三の代表作品は「アート県」としてのブランディングの中核を成す建築物としてその文化的重要性を文化庁からも評価されている。さらに再生案の実現は地域経済の振興にも寄与することが強く期待されている。
→耐震改修工事の入札(3回)を行いながら、民間事業者等を含む利活用の活用を十分検討した。ほかに手段がないことから解体を決定したので文化的価値を軽視してはいない。
「再生案」は具体的に提示されたものではない。
ニ)解体費用が相場から大きく乖離し、著しく高価であること。
本建物は構造的に特殊であるが、解体の方法や算出根拠が示されていない。高額な工事費用を公金から支出することは、社会通念上も著しく不当なものである。
→建築の形状が一般的建築物と異なっており、支保工の確保、支持杭(509本)とアスベストの除去、記録保存、週休2日制などを積み上げた結果である。

(2)監査の手続きが終わるまでの間、暫定措置として公金の支出を停止すること。
日本を代表する構造家・研究者等が、直近に建物の倒壊の危険はない、との見解を示している。公共の福祉を著しく阻害する恐れはない。
→「耐震診断」の結果、倒壊や崩壊の危険性があることが判明しており、解体が遅延することにより、周辺住民が倒壊に伴う危険にさらされ、人の生命への危害の発生を著しく阻害する恐れがある。

さらに、請求人のいくつかの陳述に対する次の2つの「見解」は重要と思われる。
①県はコンクリートの中性化がすごく進んでいるというが、多くても35mm位である。あと10年位は中性化が鉄筋に到達しない。
→県がコンクリートの中性化として指摘しているのは、屋根を形成するPCa板のこと。「診断報告書(2012)」によれば雨水の侵入により屋根部材(吊ケーブル、押え鋼棒、PCa板固定配筋)が一部破断しており、平常時でも落下の危険性が指摘された。「中性化」に対する主張は誤りである。
②再生員会は県に対して「民間による耐震改修工事および宿泊施設等への再生」について提案した(2025.7.18)。
→教育委員会は当提案は「具体的な主体や計画が不明確であり、現在は保存や利活用に関わる提案を公募している状況ではない」旨の文書を再生委員会に送付した(2025.8.5)。
翌日、再生員会は再度、事業への出資・参画の企業からの意向表明書や構造性能評価に関する資料を県に提出している(2025.8.6)。

監査の結果(2025.11.5)、以下の一文として通達された。
「本件請求は、理由がないものと認め、棄却する」

Episode 4 光と影、そして闇

「空を抜く 岩と氷の南壁の、輝きよりも深き北壁」―50年前の年賀状(1976)。私の好きなマッターホルンの版画に添えた一句である。ツェルマットの街から見上げる孤高の山が放つ「光と影」の見事なコントラスト。多くのクライマーの死をのみこんだ北壁の凄烈な暗さは今も忘れられない。
蘇る近代建築史の先駆者たちを描きながら、建築界がいかに縦社会の閉鎖的な体質であるかを語っった近江栄(1925-2005)の著書名も「光と影」(相模書房、1998)である。

香川県の「光」は何と言っても瀬戸内の自然と建築文化。多くのモダニズム建築が保存され、中でも「県庁舎東館」(1958、丹下健三)と「瀬戸内海歴史民俗資料館」(1973、山本忠司)が国の重要文化財になり、2024年に竣工した「あなぶきアリーナ香川(香川県立アリーナ)」はユネスコの最優秀建築賞―ベルサイユ賞の最優秀賞を受賞した。国内外から人が集まる「瀬戸内国際芸術祭」でも建築デザインへの人気は高まっている。
1950年~1974年の24年間香川県知事を務めた金子正則知事の建築愛が香川を建築文化県へと変貌させたと、その功績は今も高く評価されている。
一方、「影」となろうとしているのが「旧香川県立体育館」の解体であろうか。現在進められている実態調査や、記録保存活動は貴重な「レガシーとしての影」を少しでも後世に遺そうとする活動として期待されよう。

左:”光と影”を際立たせ聳え立つマッターホルン(1976の年賀状)、中:耐震改修され、新装となった「香川県庁舎東館」、右:「あなぶきアリーナ香川(香川県立アリーナ)」の基本構想模型(2019)

「影」に目を凝らせば様々な諸相が見えてくるが、その先には解けない「闇」もありそうである。私にとっても充分理解できず説明不能ないくつかの事柄が気にかかっている。たとえば1つ目は、前述した宮沢洋も嘆いていた建築界の対応。海外を含め多くの関係者(個人、協会等)が保存・再生への希求を寄せ、丹下憲孝自身も個人的な感謝と希望を述べている。しかしDOCOMOMOは動かない。なぜなのか。私の個人的経験であるが、「岩手県営体体育館」(1978)はDOCOMOMO登録のお陰で、県と市民の理解が高まり、耐震改修を経て今も現役として使われている。感謝のほかない。公共的他者からの建築的(文化・技術)評価がもたらす影響力の大きさは計り知れない。
2つ目は「香川」の崩壊神話である。「耐震診断書」が示す“数値”の議論 ―耐震性能を示すIs値(構造耐震指標)の僅かな不足とその判断をめぐる意見の相違は明らかであるが、県は当初から別の「懸念」を表明している。すなわち「この体育館は地震で一挙に崩壊し、前面道路をふさぐことにより災害時の輸送経路確保は困難になる」と。このイメージは「崩壊神話」ともいうべき誤解に深く関わっていると思われる。「香川」の構造形式の第一の特徴は巨大な側梁によるキャンチレバー。「それを可能とし、安全性を担保しているのが吊屋根であり、吊ケーブルが切れたら、建物全体が崩壊する」。その説明は何となく分かり易く、実際にヒアリングしても、設計担当者、施工者をはじめ県の関係者もそのストーリーに納得している趣がある。加えてそこに2012年の調査により「屋根の老朽化による危険性」が認識された。耐震診断とは全く異なる判断が強まっていったのだ。
3つ目は「耐震診断」に対する認識の違い。誤解というより恣意的な利用という見方もある。本来、耐震補強の指針として役立つはずの「診断書」が「解体の論理」 ―“壊すための”制度に置き変わっていくことへの危機感は拭えない。阪神淡路大震災を契機に生まれ、本来建築を残すためにつくられた耐震改修促進法は一体何のための法律なのかが改めて問われている。
「現地調査を踏まえての意見(案)」(20026.3.27)の中で構造の権威・神田順も「建物自重から計算される必要保有推定耐力と比較すると2倍以上の数値となり、建築基準法で規定している安全と同等以上の耐震性を有すると考えてよいと判断できる」と述べている。
4つめは「新しき土俵」がついに作れなかったこと。当時の県議会が苦渋の決断として「解体」を決議した訳であるが、その状況は想像に難くない。しかし公費を使用しない再生案が提案された時点で何故しばし立ち止まり議論の場をつくれなかったのか。たしかに再生案に示された「2つの計画案」は問題も多く不充分であったが「新しき土俵」の意味するものは大きかった。今一度立ち戻り、議論の時間を経た後の結果がふたたび「解体」に至ったとしても、そうした「物語」を紡ぐことが「遺産」へのリスペクトとして大切と考える。
しばし閉館を続け、市民の安全を守る。崩壊によって建物が前面道路を塞ぐことはない。それを確認した上であらためて「再生への道」について議論の場をつくる。それがなぜできなかったのか。 その先の闇は見えない。

Episode 5 「香川」からのメッセージ

コンピューターが構造設計のツールとして登場する以前の1960年代、丹下健三はほとんど同時期に3つの大スパン建築に挑んだ。A「国立代々木競技場」(1964、「代々木」)、B「東京カテドラル聖マリア大聖堂」(1964、「東京カテドラル」)、C「香川県立体育館」(1964、「香川」)である。構造設計はA・Bを坪井善勝(1907-1990)、Cを岡本剛(1915-1994)が担当した。
3つの建物を比較すると、3者とも極めて高い象徴性を有しているものの、A・Bの論理性に対してCは造形性が際立っている。丹下自身あるいは史家や建築家が触れるCの評論はほとんど見当たらず、保全・改修の実施も同じである。A・Bが「光」とすればCは「影」なのだろうか。国際的な視点からみると「香川」にはどんな評価は寄せられているのか。その具体的言説を知りたいものである。

ふり返れば「代々木」の基本構想時にスタディされていたさまざまな小模型の中に、この“和船”のプロトタイプとおぼしきものがあったと記憶する。論理的かつ知的なシャープさではなく、骨太で力強い地域のシンボル性・開かれた公共性や伝統的造形は丹下が追い求めたものだ。それを実現するために全身全霊で応えようとしたのが構造家・岡本剛であり、建設に携わった多くのエンジニアや職人達である。「実現性(安全性)は100%とはいえない。やってみなければ分からない。」と発した岡本の心境はいかばかりだったか。ゼネコンの記録とは異なり、岡本が前代未聞の立体PC梁への挑戦を設計段階から決断したはずである。見方を変えると「代々木」より「香川」の方が技術的難易度が高いのではないか。緻密な数字が隙間なく並んだ計算書は1000頁に達していた。岡本から詳細な説明を受けた木村俊彦(1926-2009)は驚嘆する。「これは世界に類例をみない弾性構造設計の極致だ。この建物のもつ価値は計算書でも備え付けなければ理解されない」と(新建築、1965.6)。

こうした技術的評価がある一方で「香川」の建築デザインを「構造表現主義の一派」と位置づけようとする評論や発言も散見される。その発生源を辿ることは難しい。建築(意匠)と技術(構造)とが融合・昇華した「構造体」、例えばR.マイヤールの「サルギナトベル橋」(1930)をS.ギーデオンは「構造芸術(Structural Art)」と呼んでいる。たしかに「代々木」に代表されるこの時代の「空間構造」への憧れと情熱は極めて高まっていた。しかしそこから生まれる「構造表現」の魅力や活用は“主義”ではなく、本質的かつ普遍的な価値だ。そのことはまた別の機会で論考したいと考えている。

コンピューターが有効なtoolとして建築界に出現する直前の1960年代。それから約60年を経た今日、成熟したIT時代からいまやAIの時代(社会)へ突入している。人間力が限りない「光」を放っていた「香川」からのメッセージとは何か。あらためて再考したいと思う。

左:朝靄に浮かぶサルギナトベル橋(1972年撮影)、右:「香川」のパネルとミニ模型(A-Forum)

第4回AND研フォーラム「ふたたびの構造デザイン、ITと建築デザイン〈ZoneⅢ:1990~2005〉」

日時:2026年6月13日(土)15:00~
コーディネータ:斎藤公男
「多様な大空間建築・構造」喜多村淳(技術者・太陽工業)
「建築家と構造家の協働」多田脩二(構造家・多田脩二構造設計事務所)
「コンピュテーショナルデザインの展開」山梨知彦(建築家・日建設計)

お申込み(リンク先にて会場参加orZoom参加を選択してください。):https://ws.formzu.net/dist/S876617155/
YouTube:https://youtu.be/qn__zucFumo


1960年頃から花開いた構造デザイン、あるいは建築家と構造家の協働の高まりは、大阪万博1970を境に急速に弱まり、「ポストモダン」の潮流にのみこまれていった。一方、コンピューター解析の発展は超高層建築の実現を促し、鉄骨システムトラスの普及は多くの大スパン構造に応用された。

1985年頃から構造技術の新しい動きや関心が生まれてくる。たとえばハイブリッド構造のひとつとして提案された張弦梁、パンタドーム構法、ケーブル補強式空気膜構造が出現する。そして藤沢市秋葉台文化体育館(1984)、幕張メッセ(1989)、竜神村民体育館(1987)などには大空間建築に対する建築家の関心の芽生えがみられよう。

「建築文化」(1990.11)の特集「建築の構造デザイン」は“ふたたびの構造デザイン”を予感させた。建築家・構造家・研究者たちの論考や対話は興味深く、素材・構法・工法、空間構造・超高層建築・ハイブリッド構造などへの期待がこめられている。IT技術も成熟しつつあり、コンピュテーショナルデザインも注目されていく。そこを起点にした1900~2005年頃の状況をとらえ解像してみる。(斎藤公男)


第62回AFフォーラム「SOM サンフランシスコのエンジニアに聞く最近の超高層建築」

日時:2026年7月8日(水)10:00~
コーディネータ:和田章
Peter LeeMark SarkisianEric LongSOM

ご案内PDF
お申込み(リンク先にて会場参加orZoom参加を選択してください。定員:Zoom250名、A-Forum30名): https://ws.formzu.net/dist/S72982294/

第二次世界大戦で日本が負けたアメリカなのですが、戦後すぐの生まれの小生は、エンパイアステートビルのあるニューヨーク、ヒッチコックの映画や西部劇、ベニー・グッドマンのスイングジャズ、エルビス・プレスリーのロックンロール、セロニアス・モンクやオスカー・ピーターソンのモダンジャズなど、アメリカの文化・文明に憧れて育ちました。

忘れてならないことは、日本には世界に自慢のできる素晴らしい文化と文明の歴史があり、東大寺の近くに聳り立つ興福寺の五重塔、高山の町並など、日本人が誇りに感じる素晴らしい建築や街作りの文化があります。しかし、これらは観光地になっており、効率重視の今の時代には合いません。

鉛筆のように細長いものを立てたとき、揺れるとすぐに倒れてしまうことから、かつては地震国に高層ビルを建てるのは向かないと思われていました。戦前に京大の棚橋諒は、地震動による転倒は小さな物体には起こるが、同じプロポーションでも大きな建築物では起きないと主張し、将来の日本に摩天楼を作ることは可能だと言われていました。今は、これが実現できたように思います。

戦後の81年、日本の建築家や構造設計者は高層建築の設計・施工に頑張ってきましたが、アメリカの高層建築はこの間にも先に進んでいるように感じます。日本も美しい高層建築の設計施工に頑張らねばなりません。
サンフランシスコのSOMは、SOMが設計し1967年に竣工したAlcoa Building にあります。シカゴの事務所にはWilliam Bakerがいて、ドバイのBurj Khalifa を設計しました。図式解放などがお得意な構造力学の基本に強いエンジニアです。かつては、Fazlur Khanがおられ、John Hankock Centerを設計した世界一の設計事務所です。

このたびはサンフランシスコ事務所のDr. Peter Lee、Dr. Mark Sarkisian、Dr. Eric Longの3名にZOOM 講演をお願いして、快諾を受けました。

具体的内容は当日の楽しみにして下さい。日本とサンフランシスコの時差を計算して、日本の午前10時からにしました。サンフランシスコでは前日の夕方6時です。 (和田章)


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