新国立競技場をめぐって
オリンピックなどの国際的イベントは新しい建築に挑戦するひとつの舞台といえるでしょう。図1は過去の話題の建物をとり上げ、先に見た三つのタイプへの分類を試みたものです。
図1
TypeAにはモントリオール(1976)、北京(2008)、東京(2020)を入れてみましたがいずれも開閉膜を企画しているのが共通しています。モントリオールと北京は開閉膜をあきらめていますがそこには大きな問題がありそうです。
Zaha Hadidが国際デザイン・コンクールで最優秀案に選ばれてから早くも2年が過ぎました。景観論、歴史観、多目的利用、再生、開閉機構、天然芝の育成、内外への音環境など多くの話題が投げかけられています。中でもコストや技術的実現性、および建築後の使用法や機能、つまりどのようなレガシーを残すかが問われ続けています。
昨年、日本建築学会で行われた「AND2013」では3つのテーマが企画されました。すなわち話題の近作、復興のデザイン、そして“新国立競技場をめぐって”です。国際デザイン・コンクールの最優秀候補作の作品11点のパネルの前には過去のオリンピック―東京・ミュンヘン・北京の大きな模型が並べられました。若い世代や一般の人々にも「東京オリンピック2020」を身近に感じてもらい、議論の場を共有したいという主旨でした。
ここでまた例のType分けを考えてみるとしましょう。(図2)
図2
TypeAにZ.Hadid、SANAAなどの案、TypeBにT.伊東やM.仙田などの案が入っています。こうして比較してみると、同じ「要綱(条件)」によっても応募者の対応のし方が実に多様であることが分かると同時に“開閉”の考え方がデザインの中心的なテーマになっていることがよくわかります。
(中略)
21世紀の建築や世界を拓くため、アーキニアリング・デザインの理念や実践が発展することを期待しています。
(2014.10.17 AND展in上海 講義より抜粋)
(MS)
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