A-Forum e-mail magazine no.57(04-12-2018)

「技術立国 日本」から「観光立国 日本」へ?


この数年、たて続けに企業の幹部達が報道陣の前で深々と頭を下げる映像や写真がマスメディアを賑わしている。そのほとんどは、自社が造った製品・構築物の性能や品質を証明するはずのデータの改竄、捏造を謝罪する姿である。これまでに、こんなに同じような事件が次々と発覚し、社会を混乱に陥れることがあっただろうか。

私が小学生の頃、日本の製品は、外国製品の猿マネばかりで粗悪品と言われ、反対に外国製品は舶来品と呼ばれて、それだけで高級品と尊重されていた。この当時の風潮を裏付ける様にして、社会科の教科書に日本の圧倒的な輸入超過ぶりを示すグラフが載り、子供心にも敗戦国日本の行く末に頼りなさや心細さを感じていた。

日本が、国内の低賃金を背景とした低価格の国産品を世界の市場に送り出し、貿易収支のバランスを逆転させたのは、東京オリンピックが開催された戦後20年の頃だった。その時期の勢いが、後に続く高度成長期にも引き継がれ、カイゼン、カンバン方式、just in timeといった掛け声に乗って、国産品が低価格から高品質への転換を目指すことになった。そして、made in japanの高価値が認知され、世界の市場を席巻するかのようにも見えた。

こうした当時の日本の急激な成長ぶりを警戒した海外から、日本は高すぎる品質規格を貿易障壁として実質的に保護貿易を行っているとか、他国とのバランスに配慮することなく自国のことしか考えていないという批判も上がった。一方、国内からは、相手国が日本製品を超えるモノを造る努力をしていないという声も高まり、日米貿易摩擦を引き起こすことになった。状況は一筋縄では行かない難題山積であったが、私達は技術立国として大国と渡り合う日本の頼もしさも感じていた。

その日本の「ものづくり」とか「製造業」の世界が、このところの「お詫び」の連続で惨憺たる状況のように見えるのは一体どうしたことなのか。

身近な建設関連も、例外ではない。ユーザー側である設計者にとって、設計の適否を判断する拠り所となる性能データ、施工報告書が改竄、捏造される事態は深刻である。しかも不正が発覚して社会が混乱している最中にも、それまでと同じ行為が営々と続けられていたことには言葉を失う。高すぎると言われる日本の規格があだとなって、生産現場で少々のごまかしは当たり前と正当化されてしまったのだろうか。

この原稿を書いている現在(2018年11月末)も、試験データを改竄したとされているダンパーのメーカーとは、電話連絡も取れない状況が続いている。もう一方のメーカーからは「(○○の物件向けに納入した製品は)弊社の調査結果から検査適合品であることを確認しました」との書類がメールで転送されてきたが、そこに誰がどのように調査・確認したかについての記述は見当たらない。日本の品質管理・保証体制は、こんな程度だったのかと想うとすべてが疑わしくなる。

一連の混乱が続く中で、国は何事もなかったように、2020年には来日外国人旅行者数を4000万人超とする数値目標を掲げ、「観光先進国」を目指すと発表している。その成果なのか、日本国内の行く先々で出会う外国観光客の数は増え、まるで外国人に占領されてしまったかの様に見える地域さえある。その風景は「技術立国」のはずだった日本が、いつの間にか「観光立国」に変貌したのかのようにも見える。ところがこの「観光立国」には、祖先の努力の賜物と、たまたま恵まれた日本の自然環境に頼るある種の後ろめたさと不確かさが付きまとう。

しかし今の状況を悲観してばかりいる暇はない。これまでともすれば日本社会が、国内の高規格とそれに応じる技術力や生産能力を過信して、社会の安全への認識を他人に任せにしてはいなかったか。その認識を社会全体が自分たちの手元に引き寄せ、共有するチャンスのように考えられる。そしてなにより、我が身を振り返るチャンスとしたい。観光立国も悪くないが先人たちが営々と築いてきた技術立国を、簡単に捨て去って良いはずはないのだから・・・。

(K.K)


第26回AF-Forum

建築構造設計に関わる基・規準の行方


コーディネーター:金田勝徳
パネリスト:神田順、五條渉、常木康弘(予定)

日時:2019年2月13日(水)17:30~
場所:A-Forum
参加費:2000円(懇親会、資料代)
参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第26回AF参加希望」とご明記ください。

現在の建築基準法の前身ともいえる市街地建築物法が制定されたのが1919年でした。以来今日までの100年の間に、名称を「建築基準法」と変え、大きな変貌を遂げながら現在に至っています。その間、改正のたびに施行令、告示、技術基準等々、構造設計の際に準拠すべき規定が増え続けて、結果的にその量が異常に多くなっています。

設計者はこれらの基・規準類を設計上の参考資料としてだけでなく、設計の拠り所にしている面もあります。しかし、構造計算方法を微に入り細に渡って規定され、それに適合させることを義務付けられる設計者は、その点にばかり気を取られ、設計の自由を奪われた様な羈束感にとらわれています。また、これらの規定が、日々留まることなく進む設計の多様化や技術革新などの、めまぐるしい社会情勢の変化に対応できているかについて、しばしば疑問視されています。

一方、これ等の建築基準法や関連法規定が、個人の財産権を保障する憲法29条のもとに定められた法律であるため、生命・健康・財産の保護を図るための建築物が持つべき最低基準を定める範囲を超えることができないと解釈されています。このことから、基準法の範囲では建築物、都市の安全を守るのに不十分ではないかとの意見も根強く言われています。それを補完するかのようにして、学会をはじめとした様々な団体によって、基準、規準、仕様書、指針の類が公にされています。

今、設計の自由度を確保しながら、最低基準を超える建築の性能を発注者と設計者との間で決める設計方法として、現状の仕様設計から性能設計への移行が広がろうとしています。しかしまだ当事者間が性能設計の核となる要求性能の内容を共有し、それを満たすための設計条件を設定するための相互理解可能な共通言語が十分とは言えません。また多くの判断が設計者に任され、その結果責任を負うことに伴う負担増を恐れて、設計者自身が積極的に性能設計に踏み出すことをためらう傾向があることも否めません。

そこで今回は産・官・学の各分野からのパネリストをお招きして、話題提供を頂き、皆様と一緒に現在の構造設計に大きく影響する諸規定の問題点と、それらを解決・改善するために目指すべき方向と、その実現に向けた課題は何かを考えてみたいと思います。多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。


第13回 AB(アーキテクト/ビルダー「建築の設計と生産」)研究会  

建築設計の業務と職能はいかに変わりつつあるか-英米の動きに着目して-

 (略)発注者サイドに立つもう一人の人格であるCMをいち早く導入し、BIMを実質的に主導してきたアメリカ。国策としての建築生産活動の合理化を主体的に引き取り、様々なプロジェクト調達方式の導入やBIMに対応してPlan of Work 2013等の変革を打ち出してきた英国のRIBA。 これらが受け止めたインパクトと将来展望、具体的な対応の中味をつぶさに知ることを通じて、私たちの考慮すべきこと、立つべき位置を考える参考にしたいと考える。この先分岐してゆくであろう様々な問題を考えるための再出発点として、この研究会を位置づけたい。 詳細はこちら

コーディネーター:布野修司+安藤正雄+斎藤公男
パネリスト:小笠原正豊+小見山陽介
(a) 米国(AIA)について(仮):小笠原正豊(東京電機大学)
(b) 英国(RIBA)について(仮):小見山陽介(京都大学)
コメンテーター:平野吉信(広島大学名誉教授)

日時:2018年12月8日(土)15:00〜18:30
場所:A-Forum
参加費:2000円(懇親会、資料代)
参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第13回AB研究会参加希望」とご明記ください。


モケイで学ぼう!ケンチクのしくみー 小・中学生限定模型制作ワークショップ

会 場:T-Art Hall(東京都品川区東品川2-6-10)
主 催:一般社団法人日本建築文化保存協会
料 金:500円
持ち物:なし 定 員:各回40名(事前申し込み制・先着順)
ダウンロード用PDF
お申込み:https://archi-depot18121516.peatix.com/
*A-Forumでは申し込み受け付けを行っておりません。

2018年12月15日(土)、16日(日)
①12月15日(土) 10時~12時「イカロスの聖火台」原田真宏(MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO、芝浦工業大学教授)
②12月15日(土) 14時~16時「世界中の家を集めて40人の選手村をつくろう!」西田司(オンデザイン)
③12月16日(日) 10時~12時 ④14時~16時「わたしのドーム、みんなのドームをつくろう!」斎藤公男(A-Forum、日本大学名誉教授)with山田誠一郎(dos)、小堀哲夫(小堀哲夫建築設計事務所)


日本学術会議公開シンポジウム(案)
「免震・制振データ改ざんの背景と信頼回復への道筋」

日時:2019年1月15日(火)13:30-17:30
開催場所:日本学術会議講堂(東京都港区六本木7丁目22番地34号)
お申込み:https://ws.formzu.net/fgen/S48684885/
*A-Forumでは申し込み受け付けを行っておりません。
詳細はこちら

2018年10月に公表されたオイルダンパーの出荷検査のデータの改ざん、2015年3月の免震積層ゴムのデータの改ざんは、市民、不動産業界、建設業界に多大な混乱を招いている。いずれの製品も構造物に組み込まれているため、検査や取り替えは容易でない。
世界に先駆けて地震国日本において研究が進み、実用化が図られてきた免震構造や制振構造の信頼性が揺らいでいる。地震に負けない構造物を造るためには、免震や制振の製品の性能を担保することが重要であることは論をまたない。これまで、重要な製品の性能確認を製造会社の自社出荷検査に任せてきたことに直接的な原因があるが、品質管理方法に関して徹底した原因究明のもと、性能確認試験データ改ざんの再発防止策を講じる必要は大きい。
この問題については、出荷される免震・制振製品が十分な品質を確保していることを検証する上で、信頼できる第三者による抜き取り検査体制の確立、海外にあるような本格的な実験設備を備えた検査機関の設置の2点が解決の糸口になると考えるが、シンポジウムでは、一つの提案を行い、講演者、会場の方々と真剣な議論を行い、信頼回復のためのより良い道筋を見出したい。
● 神田順 まちの中の建築スケッチ「山梨文化会館ー甲府のランドスケープとしての丹下作品」住まいマガジンびお

★冬季休館★ 2018/12/29~2019/1/6まで冬季休館となります。