A-Forum e-mail magazine no.50(14-05-2018)

先に逝った企業戦士たち

 

大学の建築学科の同級生は40人であるが、今年は2人目の訃報が届いた。これからは、こういう状況を受け入れざるをえないのかと思いつつも、さみしいものである。個人的追想であるが、お許しいただきたい。われわれの学年は、全共闘の占拠した安田講堂が機動隊に封鎖解除された1969年に、3年生から4年生になることを半分が拒否して、卒業年次が2年にまたがっているので、クラス会も建築学科(昭和)43年進級組と称して集まっている。

厚労省の統計によると、70歳では毎年平均で100人に1.4人が亡くなる。それは87歳で4.56人とピークに達する。しかし、その頃は生存者がすでに38人になっている。どうやら40人いて2人亡くなる年はそうはないということらしい。ともあれその同期の仲間のうちの4人が建築の仕事を一通りやったとは言え、早く逝ってしまった。

中谷圭志君(2005年10月没58歳))は、卒業後は大林組に入社し、かなり早い1982年にStanford大学でConstruction Managementの修士を取得。帰国後は、技術畑、営業畑で活躍していた。Japan Stanford Associationの面倒もよく見てくれていて、何度か集まりにも誘ってもらった。それにしても早かった。

遠藤正芳君(2013年8月没66歳)は、新日鉄で建材としての鉄骨を扱い、香港での超高層建設にも携わっていたが、定年前に、三重県の民間校長に応募して4年間こどもたちに触れながら教育の中に自分の役割をみつけ、その後も、アジア教育友好教育協会の専務理事を務めたり、2010年にはパナマの教育省から招聘されて2年間にわたりパナマの教育改革にも尽力した。なんどか話を直接に聞いてその活躍は誇らしかった。

井上哲郎君(2018年1月没71歳)は、学生時代陸上をやるスポーツマンであったが、今年初めに急逝した。加藤・秋山研究室で、修士課程修了後助手になって、その後も、筑波大に職を得て、鋼構造、特に圧縮材の座屈の研究を一筋に多くの論文を発表している。同じ研究室ということもあり、毎年の近況報告では、論文をどのように書いてるとか、ゴルフのスコアをどうやって縮めたかとか、とにかく真面目であった。

横堀肇君(2018年4月没74歳)は、建築に来るまえに電気工学を卒業後に転学科しており、学生のときから兄貴的存在だった。日本住宅公団(今はUR都市機構)に就職し、多摩ニュータウンや北砂5丁目、赤羽駅西口などの大きな再開発のとりまとめも担当し、JICAの専門家としてインドネシアやタジキスタンなどで海外生活も経験している。2003年からは広島大学、2008年からは熊本の崇城大学で2012年の定年まで教職に携わっている。2010年に骨折してから体調を崩すことが多かったというが、その後はご子息の世話になりながら療養中であったという。

井上君は、ずっとアカデミアの世界なので、企業戦士という表現があてはまらないかもしれないが、大学の先生といえども、昔のように気儘にやりたい研究だけ考えているというわけにもいかないさまざまな規則やしがらみの中で成果を上げるということでは、企業戦士と言えなくもない。ただ、遠藤君や横堀君の一度退職してからの世界は、少し企業戦士の行き方とは違う人生に挑戦していたということかもしれない。

とりとめもない回想であり、偲ぶほどに人物を表せていないが、みんな、人当りの良い優しい奴だった。今は、ご苦労様と合掌するのみである。

(J.K.)


第23回AF-Forum 

専門家の責任とは

 

コーディネーター:神田 順
パネリスト:梅沢良三(梅沢建築構造研究所)、向野聡彦(日建設計)、篠崎洋三(大成建設)

日時:2018年6月21日(木)17:30~19:30
場所:A-Forum
参加費:2000円(懇親会、資料代)

参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「23回フォーラム参加希望」とご明記ください。

設計・監理報酬を論じた前回のフォーラムに引き続き関連テーマで「専門家の責任」を取り上げます。まず思い浮かぶのは、朱鷺メッセの歩道橋崩落事故のことです。構造設計者として渡辺邦夫氏は、工学的原因究明こそが自らの責任と10年間の裁判を闘いました。裁判には勝利しましたが、社会的に受けた損害はとても大きなものです。パークシティLaLa横浜の杭施工不良問題では、構造設計者の責任を論ずることなく全棟建て替えが決議され、その賠償責任はデベロッパーと建設会社の間で争われています。

 司法の場においては、民事裁判では真相究明よりは損害賠償能力が問われ、設計者の責任を明らかにしないままに建設会社が経済的責任を取る形で決着をつけることが多く、その結果、構造設計者が責任の取れる専門家と社会的に認識されない状況を生んでいるように思います。

 建築基準法は、第1条の目的で、最低基準と謳っていて、20条では、国の基準に適合することで安全とみなすとしているのですが、自然の脅威のもとでの建築の倒壊や損壊について、国が責任を問われることはなく、また法適合している限り設計者も責任を問われないようになっています。

 本来、建物の構造安全性については設計した人間が一番良く分かっている以上、設計者が責任取れるようでないといけないのに、今の社会制度が誰も責任を取らないようになっていることは多いに問題だと思います。もっとも、責任も、経済的責任、法的責任、道義的責任、説明責任などいろいろ分けて考える必要があります。

 パネリストには、立場の異なる3人の専門家をお呼びして、専門家の責任をどのように考えるか、自論を紹介いただき、フォーラム参加者との意見交換の上で、これからのあり方についての提案も整理してみたいと思います。奮ってご参加をお待ちします。 (神田 順)
詳細はこちら


A-Forum アーキテクト/ビルダー(「建築の設計と生産」)研究会

第10回 戸建住宅生産の現状と課題-住宅の供給構造はどうなっていくのか

以前の研究会はこちら

コーディネーター:布野修司+安藤正雄+斎藤公男

(a)主旨説明:中村良和氏(中村工房デザイン室)
(b)プレハブ住宅メーカーの現状と課題についてー中村良和氏(中村工房デザイン室)
(c)地域木造ビルダーの現状と課題についてー高田清太郎氏(高田建築事務所)

日時:平成30年5月19日(土)15:00〜18:30(会場にて懇親会を行います)
場所:A-Forum
会費:2000円

参加申し込み:こちらのフォーム よりお申し込みください。
*「お問い合わせ内容」に必ず「第10回AB研究会参加希望」とご明記ください。

 

AB研究会では第3回「日本の住宅生産と建築家 その歴史と現在の課題をめぐって」及び第4回「建築職人の現在‐木造住宅の設計は誰の責任なのか」のなかで、現在の(戸建て)住宅の生産供給の現状と木造住宅での架構設計の問題や賃金水準も含めた職方・施工者の労働環境といった問題について議論された。
特に、「第3回では現在のほとんどの(戸建)住宅供給は主にプレハブ住宅とプレカット木造住宅の二つに大別されるが、それぞれの住宅の差別性はクローズドシステム供給なのかオープンシステム供給なのかの差でしかなく、顧客から見ても提供される商品・サービスが不明瞭な状況である。住宅産業全体が新築市場の縮小化のなかで行き詰まり感と供給構造の維持が大きな課題となっている。」ことが確認された。
また、木造パワービルダーの台頭やアウトソーシング活用拡大に伴う設計・施工技術者の能力低下や性能・品質担保の問題や施工担い手不足への対策が求められている。」ことが指摘された。 そこで今回はプレハブ住宅メーカーと木造地域ビルダーの現状と今後の展望や課題について比較確認した上、今後の(戸建)住宅の展開と可能性を議論してみたい。

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