A-Forum e-mail magazine no.24 (01-02-2016)

日本学術会議を要に47学会が集まり防災学術連携体を設立

‘Knowing me, knowing you, it's the best we can do’


 日本は自然に恵まれた素晴らしい国である。一方で、世界の大きな地震の10%以上は日本の近くで起き、大津波に襲われ、毎年のように大きな台風や冬の豪雪に襲われるなど、自然の猛威の厳しい国でもある。この地に日本人は暮らし、自然への尊敬と畏怖の気持ちを持ち、人々は互いを思いつつ暮らす優しい心を培ってきた。明治の開国を機に、我が国は欧米の文明・科学・技術を導入し発展させ、先進国として世界を率いるまでに成長してきた。
 大きな地震はいつかどこかを襲うとほとんどの人々は考えていたが、津波のことは書物には書かれていても、その恐ろしさを真剣に指摘する専門家は一部であり、その声は人々に伝わっていなかった。東日本大震災は、多くの尊い命を奪い多くのまちや村を壊滅させた。
 人や社会は遠くで起きたこと、遠い昔に起きたことなど、体験していないことへの想いは薄く、今を生き活動することに一生懸命である。専門家や研究者が同じように、遠い過去から未来へと繰返される自然や地球の動きを忘れることは許されない。さらに、世界で起きていることにも詳しくなければならない。科学・技術への過信、驕りはあってはならず、文明の進化が災害を激化することも忘れてはならない。
 研究者や技術者は経済活動のなかで仕事をしており、合理性を求めて突きすすむが、目の前の仕事の効率向上のみに注視するのでなく、自らの社会における役割、責任を考えるべきである。自然、人間の作るもの、社会などについて、これらは互いに関係しあっていることにも想いを寄せねばならない。
 2011年3月11日に起きた東日本大震災がこれまで甚大な災害になってしまった原因は多種多様であり、これからの防災・減災への対策にも多くの取り組むべき課題がある。ひとつの重要な問題として、学問・科学の分野がますます細分化され、それぞれの分野の研究者は専門を深めるものの、他の分野の進めていることに無関心かつ無批判であり、重要な問題であるにも関わらず、誰も注意を払わないままの問題が残ってしまうことがある。ここに自然の猛威は襲ってくる。
 人々の生活を豊かに、日本を住みやすく、科学・技術を正しく発展・利用していくために、鳥瞰的かつ俯瞰的な考察と現場に即した行動が必要である。東日本大震災を受け学協会間の垣根を越えた議論の重要性を再認識し、「東日本大震災の総合対応に関する学協会連絡会」をつくり、30の学協会の関係者が情報交換・議論を行う連続シンポジウムを2011年12月から2016年11月まで、11回にわたり開催してきた。
 2016年1月9日にこの活動を発展させ、47の広い分野の学会から賛同を得て、地震津波だけでなく広く自然災害全体、災害後の活動までを含む「防災学術連携体」が設立された。ホームページ(janet-dr.com)を新設し、詳細な情報を取りまとめている。ご覧いただきたい。なお、A-Forumの麓絵理子氏にはこの大きなホームページを綺麗に纏めて、運営していただいており、心からお礼申し上げる。(和田 章)

註:「meは我々の学会、youは他の学会」、または「meは我々の作ったインフラ、建築や社会、youは地球の動きと自然の猛威」などであり、互いを知ることが我々にできる最善の行動である。

WEB版『建築討論』に登壇しました(和田章)

第8回けんちくとーろん
建築の拠って立つ基盤
基礎杭工事問題を考える

── By 佐伯英一郎 + 金箱温春 + 和田章 + 布野修司 + 宇野求 | 2016/01/22
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