第4回
建築とメディア


コーディネーター:安達 功(日経BP社、建設局プロデューサー)

パネリスト:
写真中央・真部 保良(まなべやすお・日経アーキテクチュア前編集長)
写真右・磯 達雄(いそたつお・建築ジャーナリスト)
写真左・西川 直子(にしかわなおこ・建築ジャーナル編集長)


日時:2014年10月21日  18:00 – 20:00
場所:A-Forum お茶の水レモンⅡビル 5階
参加費:2000円 (懇親会、資料代)

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  日本の戦後の成長時代の建築活動を建築家、構造設計者および施工技術者とともに牽引してきた建築メディアの存在は強力であった。しかし、社会と産業の変化に直面し、建築メディアの役割は明らかに変化している。この40年活躍してきた建築ジャーナリストを招き、建築とメディアのこれからについて議論する。

第4回AF-forum報告 (安達 功)


10月21日(火)午後6時から8時、建築メディアの最前線で活躍するパネリストを招いて、表記のフォーラムを開催しました。お忙しいところご参加いただいた皆様に深く御礼申し上げます。

今回のフォーラムの目的は、社会と産業の変化に直面して変革を迫られている建築メディアの実像を実務者の皆様と共有するとともに、建築とメディアのこれからについて議論することでした。

真部様には、1976年に創刊した「日経アーキテクチュア」誌の創刊来の変化や存在意義を解説いただきながら、建築に対するメディアの役割についての意見をお聞きした。今後のメディアの役割として、①事故や事件などのメカニズムや原因を複合的な視点から浮き彫りにすること、②建築・街づくりのメカニズムが変化するなかで、つくり手の挑戦に密着して報道すること、③人、企業、産業がつながる際の媒介機能を担うこと――という3点を挙げていただいた。

西川様には、ご自身の編集者としての来歴と「建築ジャーナル」の歴史を重ね合わせながら、これからの建築メディアが着目すべきテーマについて解説いただいた。「建築ジャーナル」が各年代に取り上げてきたテーマは、80年代の「市民参加」から、90年代の「戦後建築の見直し」、2000年代の「資格・制度・法規」という変遷を経て、2010年代は「主権者としての市民」が大きなテーマとして浮上しているという話をいただいた。西川編集長自身は雑誌も書籍もつくる編集者であり、ご自身が住み、運営する「谷中の家」もメディアとしてとらえているという話があった。

磯様には「写真からみるメディアと建築」という視点からお話しいただいた。建築の多様化に伴い写真表現としてその姿や特徴を伝えにくい建物が増えていること、SNSなどの普及に伴って建築メディアの役割が変化していることなどをお話しいただいた。資料として戦後の建築雑誌の創刊年表も作成、配布いただいた。

パネリストの発表後の質疑討論では、主に建築メディアに期待する役割についての議論が交わされた。参加者から出た主な意見や論点は下記の通り。

・新しい建築を紹介するメディア自体がなくなってきているのではないか
・海外に比べると社会への情報発信が不足しているのではないか
・長い間、新築主流できたため補修・改修に関するメディアが育っていない
・メディアも含めて、専門家と一般社会が分断されているのではないか
・建築メディアは建築業界の中ばかりを見ているのではないか
・メディアも含めて批判性がないといわれる根源は発注者がいる受注産業だからではないか
・一般メディアにもっと建築が紹介されるようになってほしい
・たとえば英国では町並みはソーシャルアセットであるという共通認識があるから一般の人も関心をもつが、日本はそうなっていないことが問題である